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塗料選びで見るべきなのは「1㎡あたりの単価」ではなく、「足場代まで含めた1年あたりのコスト」です。塗料そのものの価格差は工事全体の一部にすぎず、塗り替えのたびに足場代がまるごとかかるためです。さらに、各社が並べている「耐用年数」という言葉は、実は一つの意味に定まっていません。この記事では6つのグレードを一覧で比べたうえで、その年数がどこから来た数字なのかを、メーカー公式ページと国の資料で確認しながら整理します。
結論:6グレードの一覧と、単価より先に見るべきもの
まず全体像です。外壁塗装で使われる塗料は、塗膜をつくる樹脂の種類でグレード分けされます。大日本塗料は「樹脂は、塗膜を生成する原料としてもっとも重要な成分であり、塗膜の性能や特徴を大きく左右する」と説明しています(大日本塗料「塗料の種類」)。グレードの違いは、この樹脂の違いです。
| グレード | ㎡単価の目安 | 耐用年数の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| アクリル | 1,000〜1,800円 | 5〜8年 | 数年内に売却・住み替え予定の方。外壁全面より、付属部への部分使用が中心 |
| ウレタン | 1,600〜2,500円 | 7〜10年 | 予算を最優先する方。伸びがあり、木部・鉄部など動きのある部位にも使いやすい |
| シリコン | 2,000〜3,500円 | 10〜15年 | 迷ったらここ。製品数が最も多く、比較検討しやすい |
| ラジカル | 2,800〜3,500円 | 13〜15年 | シリコンより長く、フッ素より安く抑えたい方 |
| フッ素 | 3,000〜5,500円 | 15〜20年 | 塗り替え回数を減らしたい方。足場が高くつく3階建て・変形敷地の家 |
| 無機 | 3,800〜6,000円 | 15〜25年(※信頼度は低い) | 汚れにくさを重視する方。年数は割り引いて考えるべき |
この表だけを見ると「安いものから順に並んでいる」ように見えますが、判断材料としては不十分です。理由は次の3つです。
- 塗料代は工事費の一部でしかない。足場・洗浄・養生・シーリングなど、どの塗料を選んでも同じだけかかる費用が別にある
- 「耐用年数」という言葉が、出どころによって別の意味で使われている
- 同じ「シリコン」でも、水性か溶剤か、1液か2液かで価格も期待耐用年数も変わる。グレード表にはこの軸が載っていない
以下、この3点を順に掘り下げます。工事全体の費用構成を先に押さえたい方は、外壁塗装の費用内訳もあわせてご覧ください。
サイトによって数字がバラつくのは、条件が書かれていないから
結論から言うと、塗料の単価や耐用年数の数字は、参照するサイトによって明確に食い違います。実際に3つの情報源を並べてみます。
| 塗料 | リショップナビ(耐用年数/単価) | 外壁塗装駆け込み寺(耐用年数/単価) | 本記事の採用幅 |
|---|---|---|---|
| アクリル | 3〜8年/1,000〜1,800円 | 5〜8年/1,500〜1,800円 | 5〜8年/1,000〜1,800円 |
| ウレタン | 5〜10年/1,700〜2,500円 | 7〜10年/1,900〜2,500円 | 7〜10年/1,600〜2,500円 |
| シリコン | 7〜15年/2,300〜3,500円 | 10〜15年/2,800〜3,000円 | 10〜15年/2,000〜3,500円 |
| ラジカル | 8〜16年/2,200〜4,000円 | 13〜15年/3,100〜3,800円 | 13〜15年/2,800〜3,500円 |
| フッ素 | 12〜20年/3,500〜4,800円 | 15〜20年/4,000〜5,000円 | 15〜20年/3,000〜5,500円 |
| 無機 | 10〜25年/3,500〜5,500円 | 耐用年数は「?」/4,800〜6,000円 | 15〜25年(信頼度低)/3,800〜6,000円 |
シリコンの下限が7年か10年かで、塗り替え計画は3年ずれます。この差は、どちらかが間違っているというより、前提が違うために生じています。
- 同じ「シリコン」でも、樹脂の含有率や製品グレードが幅広い。安価な水性1液から高価な弱溶剤2液まで同じ名前で呼ばれている
- 下塗り材の選定と塗布量(何㎡を1缶で塗ったか)で塗膜の厚さが変わる。同じ塗料でも持ちが変わる
- 立地条件が反映されていない。海沿い、南面、日射の強い面と、北面や庇の下では劣化速度が違う
- 「材料費だけ」の単価か、「材工共(材料+施工手間)」の単価かが明示されていないことが多い
したがって、どの数字も「幅のある目安」として受け取るのが正解です。単一の数値で断定しているサイトほど、条件の記載を確認してください。
「耐用年数」という言葉には、少なくとも4つの意味がある
ここが、この記事で最もお伝えしたい点です。塗装業界で使われる「耐用年数」は、出どころごとに定義が異なる、複数の別々の数字です。これを混ぜて理解していると、見積書の比較で必ず迷います。
| 呼び方 | 誰が決めた数字か | 意味 | 数値の例 |
|---|---|---|---|
| 期待耐用年数(メーカー) | 塗料メーカー | 促進耐候性試験などをもとに、メーカーが示す次の塗り替え時期の目安 | クリーンマイルドシリコン 12〜15年(エスケー化研) |
| 期待耐用年数(不動産評価) | 国土交通省の検討会資料 | 「建物が通常想定される自然条件で標準的な維持管理がなされた場合に通常必要となる使用価値を維持し得る期間」 | 外壁材(A仕様)15〜27年(中央値22年) |
| 修繕周期 | 国土交通省ガイドライン | 長期修繕計画を立てるうえで想定する、実際に工事を行う間隔 | 外壁塗装(雨掛かり部分)塗替 12年 |
| 法定耐用年数 | 国税庁 | 税務上の減価償却期間。建物の物理的な寿命でも塗膜の寿命でもない | 木造・合成樹脂造の住宅用 22年/鉄筋コンクリート造の住宅用 47年 |
メーカーの「期待耐用年数」には必ず条件がついている
エスケー化研は製品ページで期待耐用年数を明示していますが、同時に「次の塗り替え時期の目安であり、地域・立地条件・方角により異なる」旨を注記しています。つまり、12〜15年という数字は保証ではなく、条件が揃った場合の目安です。
この数字の根拠になるのが促進耐候性試験です。キセノンランプなどで紫外線を人工的に当て続け、光沢がどれだけ残るかを測ります。ただし、メーカー各社が公開しているのは横軸が「照射時間」のグラフであり、そのまま「屋外で何年」に置き換わるものではありません。実際、関西ペイントの無機塗料の製品ページに掲載されているのも、キセノン照射時間に対する光沢保持率のグラフです(関西ペイント「アレスダイナミックmuki」)。
実務上の塗り替え時期は「12年」が一つの基準
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)は、外壁塗装(雨掛かり部分)の塗替えを12年周期、非雨掛かり部分を15年周期、シーリングの打替えを12年周期として例示しています。同ガイドラインの様式には「時期(周期)は、おおよその目安であり、立地条件等により異なることがある」と注記されています。
これはマンションの計画修繕を前提とした資料ですが、雨掛かり部分は12年、当たらない面は15年という差の付け方は、戸建てで面ごとに劣化速度が違う理由をよく説明しています。塗り替え時期の判断そのものについては、外壁塗装のタイミングで詳しく扱っています。
無機塗料の「15〜25年」は、まだ実績で裏づけられていない
結論として、無機塗料の耐用年数だけは、他のグレードと同じ精度で受け取らないほうが安全です。理由は2つあります。
1つ目は、情報サイト側が信頼度不足を明言していることです。外壁塗装駆け込み寺は塗料別の耐用年数表で、無機塗料(セラミック塗料)、ピュアアクリル、光触媒、ナノテク塗料の耐用年数を「?」と表記し、「信憑性がない塗料に関しては耐用年数を『?』にしています」と書いています。理由として「作っているメーカーが少なく、耐用年数はその少数のメーカーが設定しているだけなので、当てにならないことも多いです」とも述べています(外壁塗装駆け込み寺「塗料の耐用年数」)。
2つ目は、メーカー自身の表記のしかたです。エスケー化研の製品ページを見比べると、次のような違いがあります。
| 製品 | 形態 | 期待耐用年数の表記 | 設計価格 |
|---|---|---|---|
| エスケープレミアムシリコン | 水性・一液 | 14〜16年 | 2,920円/㎡ |
| クリーンマイルドシリコン | 弱溶剤形・二液 | 12〜15年 | 3,180円/㎡(複層塗材の上塗りに用いる場合) |
| クリーンマイルドシリコンCR | 弱溶剤形・二液 | 12〜15年 | 3,500円/㎡(新築仕様・平滑仕上げ) |
| クリーンマイルドフッソ | 弱溶剤形・二液 | 15〜20年 | 4,100円/㎡(複層塗材の上塗りに用いる場合) |
| エスケープレミアム無機 | 水性・一液 | 年数の記載なし(「塗り替えサイクルの目安」のグラフのみ) | 製品ページに記載なし |
注目していただきたいのは最下段です。シリコンにもフッ素にも期待耐用年数を年数で明記しているメーカーが、無機塗料については年数を書いていません。書かれているのは「塗り替えサイクルの目安」というグラフと、「塗り替え年数は目安です。建物の立地条件、環境等によって異なります」という注記、そしてキセノンランプ法による促進耐候性試験の比較グラフです(エスケー化研「エスケープレミアム無機シリーズ」)。
これは慎重な姿勢だと受け取れます。無機塗料が本格的に戸建て向けに普及したのはここ10年ほどで、「20年後に本当にもったか」を実際の建物で確認できたサンプルがまだ十分にありません。促進試験の結果が良好であることと、20年後の実物件で確認済みであることは別の話です。
ですから、無機塗料を検討する場合は、次のように考えるのが現実的です。
- 「25年もつ」ではなく「フッ素と同等以上の耐候性が期待できる」程度に読み替える
- 年数より、無機成分による汚れにくさ(低汚染性)を評価軸にする
- 無機塗料は硬い塗膜になりやすいため、ひび割れが出やすい下地では下塗り材の選定が重要になる。業者にどの下塗りを使うか確認する
- 「無機だから25年保証」といった説明をする業者には、保証書の対象範囲と免責事項を書面で確認する
メーカーの「設計価格表」を、そのまま戸建ての相場にしてはいけない
塗料の㎡単価を調べていると、メーカー公式の「設計価格」にたどり着くことがあります。しかしこの数字は戸建ての塗り替え相場としては使えません。前提条件がまったく違うからです。
エスケー化研の設計価格表(2026年度版)には、次の条件が明記されています。
- 「設計価格は新築下地で同一淡彩色300m2以上を(特に指定がない場合)基準とする材工共の価格です」
- 「設計価格には法定福利費、消費税は含まれておりません」
出典はエスケー化研「設計価格表」です。この条件と、一般的な戸建ての塗り替えを並べると、次のようにずれます。
| 項目 | 設計価格の前提 | 戸建ての塗り替え(延床30坪の例) | 価格への影響 |
|---|---|---|---|
| 下地 | 新築下地 | 既存下地(旧塗膜あり、劣化あり) | ケレン・下地補修・下塗り材の追加が必要。上振れ要因 |
| 色 | 同一淡彩色 | 濃色や複数色を選ぶことも多い | 濃色は隠ぺい力が落ちて塗り回数が増えることがある。上振れ要因 |
| 面積 | 300㎡以上 | 塗装面積 約119㎡ | スケールメリットが効かない。上振れ要因 |
| 含まれる費用 | 材工共(材料+施工手間) | 足場・洗浄・養生・シーリング・諸経費が別途 | 工事総額はこの単価だけでは出ない |
| 税・法定福利費 | 含まない | 見積書には通常含まれる | 上振れ要因 |
たとえばクリーンマイルドシリコンの設計価格3,180円/㎡に119㎡を掛けると約38万円になりますが、これはあくまで「上塗り工程の材工共」に相当する参考値です。ここに足場・高圧洗浄・養生・ケレン・シーリング・諸経費・消費税が加わります。設計価格を見て「見積もりが高すぎる」と判断するのは早計です。
逆に言えば、設計価格は「同じメーカー内でグレード間の価格差がどれくらいか」を知るには有用です。上の表でいえば、シリコン2,920〜3,500円に対しフッ素4,100円ですから、グレードを1段上げたときの材料+手間の増分は、およそ600〜1,200円/㎡という感覚がつかめます。
グレード表に出てこないもう1本の軸:水性/溶剤と1液/2液
ここが、多くの比較記事が触れていない部分です。塗料は「樹脂のグレード」だけでなく、「何で薄めるか(水性か溶剤か)」「硬化剤を混ぜるか(1液か2液か)」という2本の軸でも分類されます。同じシリコンでも、この組み合わせが違えば別物です。
水性と溶剤(弱溶剤)の違い
塗料は「塗膜として残る樹脂・顔料・添加剤と、揮発して塗膜には残らない溶剤から成る」ものです。この揮発成分に水を使うのが水性塗料、有機溶剤(シンナー)を使うのが溶剤形塗料です。大日本塗料は「有機溶剤の代わりに水を使用する水性塗料(水系塗料)や、溶剤を含まない無溶剤形塗料、粉体塗料等のいわゆる環境対応塗料の需要が近年急速に伸びている」と説明しています(大日本塗料「塗料の種類」)。
- 水性:においが少なく、近隣への影響が小さい。近年は性能が向上している。気温が低い時期や湿度が高い時期は乾燥に時間がかかる
- 弱溶剤:においがある。旧塗膜への密着や、鉄部・付帯部での使いやすさで選ばれることが多い
1液と2液の違い
1液型は「塗料缶は1つで、そこに水やシンナーを入れて薄めて壁に塗る」もの。2液型は「塗料缶は2つあり、主材と硬化剤に分かれている。塗装をする直前に主材と硬化剤を混ぜ合わせて初めて塗料となる」ものです(外壁塗装駆け込み寺「塗料における1液型と2液型の違い」)。
2液型には「可使時間」があります。混ぜてから使い切らなければならない時間で、エスケー化研のクリーンマイルドシリコンで5時間(23℃)といった水準です。気温が高いほど短くなります。つまり2液型は、混合比の管理と時間管理という職人側の手間が増える塗料です。
「2液・溶剤のほうが必ず長持ち」とは限らない
一般には2液型のほうが耐久性で有利とされます。ただし、これを鵜呑みにすると判断を誤ります。前掲のエスケー化研の製品データを見返してください。
- エスケープレミアムシリコン(水性・一液):期待耐用年数14〜16年
- クリーンマイルドシリコン(弱溶剤形・二液):期待耐用年数12〜15年
同じメーカーの同じシリコン系でも、水性1液のほうが長い年数を掲げています。世代の新しい製品ほど性能が上がるためで、「2液だから上位」という単純な序列は成り立ちません。形態だけで優劣は決まらず、製品ごとに見るしかない、というのが実際のところです。
だからこそ、見積書のチェックポイントが変わります。「シリコン塗料」としか書かれていない見積書では、どの製品かも、1液か2液かも判別できません。住宅リフォーム紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)も見積書のセルフチェックで、数量・単価・仕様の確認と記載漏れのチェックを挙げています(住まいるダイヤル「見積書のセルフチェック」)。次の3点をそのまま業者に聞いてください。
- メーカー名と製品名(商品名まで。「シリコン」だけは不可)
- 水性か弱溶剤か、1液か2液か
- 使用予定の缶数と塗布量。メーカーが公表する標準使用量と照らせば、規定量が塗られる計画かどうか確認できる
この3点が書面で出てくるかどうかは、業者の姿勢を測る材料にもなります。あわせて外壁塗装の業者の選び方もご覧ください。
30年で見ると順位が変わる:足場代を含めた生涯コスト試算
結論から言うと、1回の工事費が安い塗料が、30年単位でも安いとは限りません。塗り替えのたびに、塗料と関係のない固定費が丸ごと発生するためです。実際に計算してみます。
試算の前提
- 延床30坪の2階建て、外壁塗装面積 約119㎡(延床坪数 × 3.3 × 係数1.2)
- 足場面積 約190㎡。外壁塗装110番の早見表では30坪で185〜199㎡とされています(外壁塗装110番「足場の面積を計算する方法」)
- 足場単価は600〜1,500円/㎡と幅がありますが、ここでは中位の800円/㎡で計算
- 塗料の㎡単価は本記事の採用幅の中央値を使用
- 諸経費と消費税は含みません(含めると全体が同じ比率で上がるため、比較の結論は変わりません)
まず、どの塗料を選んでも共通してかかる費用を出します。足場190㎡ × 800円 = 約15.2万円、高圧洗浄119㎡ × 250円 = 約3.0万円、養生119㎡ × 250円 = 約3.0万円、ケレン119㎡ × 350円 = 約4.2万円、シーリング打ち替え175m × 1,200円 = 約21.0万円。合計で約46万円です。この46万円は、塗料のグレードに関係なく毎回かかります。
試算結果
| グレード | 塗料代(119㎡) | 1回あたり工事費(塗料代+共通46万円) | 想定する塗り替え間隔 | 1年あたりコスト | 30年間の累計(回数) |
|---|---|---|---|---|---|
| ウレタン | 約24万円 | 約70万円 | 10年 | 約7.0万円 | 約210万円(3回) |
| シリコン | 約33万円 | 約79万円 | 12年 | 約6.6万円 | 約237万円(3回) |
| ラジカル | 約38万円 | 約84万円 | 14年 | 約6.0万円 | 約252万円(3回) |
| フッ素 | 約51万円 | 約97万円 | 17年 | 約5.7万円 | 約194万円(2回) |
| 無機 | 約58万円 | 約104万円 | 20年 | 約5.2万円 | 約208万円(2回) |
読み取れることは3つあります。
第一に、1年あたりコストで見ると、グレードが上がるほど安くなる傾向がはっきり出ます。ウレタンの約7.0万円に対し、無機は約5.2万円です。1回の工事費は無機がウレタンの1.5倍近いのに、年あたりでは逆転します。塗料代より足場代を含む共通費のほうが大きいためです。
第二に、30年という区切り方には注意が必要です。ウレタン(10年間隔)は0年・10年・20年でちょうど3回に収まり、累計210万円と一見健闘します。しかしこれは30年で割り切れることによる見かけ上の有利さで、区切りを35年にすればウレタンは4回必要になり、順位は入れ替わります。「30年で比べると必ず高級塗料が得」という単純な結論にはなりません。より安定した指標は1年あたりコストのほうです。
第三に、足場が高くつく家ほど、高グレードの有利さが大きくなります。3階建て、隣家との隙間が狭い、変形敷地、傾斜地などで足場単価が1,200〜1,500円/㎡になる場合、共通費は46万円ではなく60万円前後まで上がります。そうなると塗り替え1回を減らす価値も上がります。足場費用の考え方は外壁塗装の足場代の相場で詳しく扱っています。
それでも高グレードを勧めきれない理由
この試算には「その塗料が想定どおりもつ」という前提が入っています。前述のとおり、無機の20年は実物件で十分に検証されたとは言い切れません。想定より早く塗り替えが必要になれば、年あたりコストは一気に悪化します。
また、住まい手側の事情も無視できません。60代で塗り替える場合、次の塗り替えは70〜80代です。その時期に住み続けているか、家をどうするかによって、20年もつ塗料に投資する意味は変わります。生涯コストの試算は判断材料の一つであって、答えそのものではありません。
遮熱・断熱・光触媒などの機能性塗料をどう位置づけるか
結論として、機能性は耐候性グレードとは別の軸です。「遮熱シリコン」は、シリコングレードに遮熱機能が付いたもので、フッ素より長持ちするという意味ではありません。ここを混同すると比較を誤ります。
遮熱塗料には製品JISがある
機能性塗料のなかで、公的な物差しがはっきりしているのが遮熱塗料です。JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」が平成23年7月20日に公示されています(日本塗料工業会「高日射反射率塗料」)。
この規格では、揮発成分によって1種(水を主要な揮発成分とするもの)と2種(有機溶剤を揮発成分とするもの)に分けられ、近赤外波長域日射反射率(ρIR)の基準が明度L*に応じて定められています。明度L*が80.0以上の高明度領域ではρIR≧80.0といった形です(日本建築総合試験所ほか公開資料「JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料」)。
実務的に押さえるべきは、遮熱性能は「色の明るさ」と強く結びついているという点です。濃い色を選べば反射率は下がります。「遮熱塗料だから涼しくなる」ではなく、「明るい色を選んだ場合により効果が期待できる」という関係です。なお日本ペイントは2026年4月に「パーフェクトトップSi 遮熱オプション」を発売しており、ラジカル制御形シリコン系にも遮熱の選択肢が広がっています(日本ペイント ニュースリリース)。
断熱塗料と光触媒塗料は、判断材料が少ない
一方で、いわゆる断熱塗料について、遮熱塗料のJIS K 5675に相当する製品JISは見つかりませんでした。性能の比較基準が共通化されていないため、メーカーごとの試験条件を個別に読むしかありません。
光触媒塗料も同様です。前述の外壁塗装駆け込み寺の耐用年数表では、光触媒塗料も無機・ピュアアクリル・ナノテクと同じく「?」と表記されています。セルフクリーニング効果そのものを否定するものではありませんが、年数の裏づけという点では他のグレードと同列に扱えません。
| 機能性塗料 | 期待される機能 | 公的な物差し | 検討時の注意点 |
|---|---|---|---|
| 遮熱(高日射反射率) | 日射の反射による表面温度上昇の抑制 | JIS K 5675(屋根用) | 効果は色の明度に左右される。濃色では反射率が下がる |
| 断熱 | 熱の伝わりにくさ | 相当する製品JISは確認できませんでした | メーカー個別の試験条件を確認する必要がある |
| 光触媒 | 紫外線による汚れの分解、セルフクリーニング | 耐用年数の共通基準はない | 日射の当たらない面では効果が期待しにくい。情報サイトも耐用年数を「?」としている |
| 低汚染 | 雨で汚れが流れ落ちやすい | 共通基準はない | 無機・フッ素の上位グレードに標準搭載されていることが多い |
機能性塗料は単価が上がります。前掲のリショップナビでは光触媒3,500〜5,500円/㎡、断熱・遮熱系のセラミック塗料2,300〜4,500円/㎡といった水準が示されています。追加費用に見合うかは、屋根か外壁か、方角、地域の日射条件によって変わります。まず耐候性グレードを決め、そのうえで機能を足すかどうかを考える順番がおすすめです。
よくある質問
結局どのグレードを選べばよいですか
「あと何年その家に住むか」から逆算するのが最も納得しやすい決め方です。あと10〜15年ならシリコンかラジカル、20年以上住み続ける見込みで足場が高くつく家ならフッ素、というのが一つの目安になります。数年内に売却や住み替えの予定があるなら、ウレタンや部分補修という選択肢も現実的です。グレードを一段上げる差額は、上のエスケー化研の設計価格で見ると600〜1,200円/㎡程度、119㎡なら7〜14万円程度が目安になります。
耐用年数が過ぎたらすぐ塗り替えないといけませんか
年数だけで機械的に判断する必要はありません。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインも、周期は「おおよその目安であり、立地条件等により異なることがある」と注記しています。実際には、チョーキング(触ると白い粉が付く)、ひび割れ、シーリングの切れ、塗膜の膨れといった症状の有無を見て判断します。特に雨の当たる南面・西面と、当たらない北面では劣化の進み方が違うため、面ごとの確認が有効です。
見積書に「シリコン塗料一式」としか書かれていません
メーカー名・製品名・数量・単価を記載してもらってください。同じシリコンでも水性1液から弱溶剤2液まで幅があり、期待耐用年数も価格も違います。住まいるダイヤルの見積書セルフチェックでも、数量・単価・仕様の確認と記載漏れのチェックが挙げられています。書き直しを渋る業者であれば、他社にも見積もりを取って比べたほうがよいでしょう。書き直された見積書が届いたら、金額だけでなく数量と製品名を横に並べて比べてください。
「無機塗料なので25年もちます」と言われました
その数字の根拠を確認してください。本記事で見たとおり、エスケー化研はシリコンやフッ素には期待耐用年数を年数で明記している一方、プレミアム無機については年数を記載せず、促進耐候性試験のグラフと「塗り替え年数は目安です」という注記にとどめています。メーカーが年数を明記していないものを、業者が断定的に25年と説明するのであれば、何を根拠にしているのかを聞く価値があります。保証を伴う説明なら、保証書の年数・対象範囲・免責事項を書面で確認してください。
シリコンとフッ素で迷っています。差額に見合いますか
足場代の重さで決まります。本記事の試算では、1年あたりコストはシリコン約6.6万円、フッ素約5.7万円でフッ素がやや有利でした。ただしこれは足場800円/㎡での計算です。足場が安く済む家では差は縮まり、3階建てなど足場が高い家では差が広がります。両者の性能面の違いはシリコン塗料とフッ素塗料の違いで詳しく比較しています。
まとめ
塗料の種類と耐用年数について、押さえておきたい点を整理します。
- グレードはアクリル・ウレタン・シリコン・ラジカル・フッ素・無機の6段階。単価は1,000〜6,000円/㎡、耐用年数の目安は5〜25年と幅がある
- 「耐用年数」はメーカーの期待耐用年数、不動産評価上の期待耐用年数、修繕周期、税務上の法定耐用年数と、少なくとも4つの意味がある。どれの話をしているかを確かめる
- 無機塗料の15〜25年は実績データが十分でない。メーカー自身が年数を明記していない例もある
- メーカーの設計価格は新築下地・淡彩色・300㎡以上・材工共・税抜という前提。戸建ての塗り替え相場としては使えない
- 水性/溶剤、1液/2液という軸もある。同じシリコンでも製品によって期待耐用年数が違う
- 足場代を含めた1年あたりコストで見ると、高グレードほど有利になりやすい。ただし想定どおりもった場合の話である
- 遮熱・断熱・光触媒などの機能は、耐候性グレードとは別の軸として考える
塗料選びに唯一の正解はありません。あと何年その家に住むか、足場がいくらかかる家か、この2つを先に決めてから、グレードと機能を選んでいくのが、後悔の少ない順番だと考えています。具体的な総額イメージをつかみたい方は、外壁塗装30坪の費用もあわせてご覧ください。
見積もりを取るときに使えるサービス
ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

