シリコン塗料とフッ素塗料の違い|足場代込み30年生涯コスト比較

シリコン塗料とフッ素塗料の違いと生涯コスト比較を解説する記事のアイキャッチ画像

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「シリコン塗料とフッ素塗料、どちらが良いのか」という問いに、性能の優劣だけで答えることはできません。判断を分けるのは、その家にあと何年住むかです。フッ素はシリコンより長持ちしますが、塗り替えのたびに足場代がまるごとかかるため、「塗り替え回数が1回減るかどうか」で損得がひっくり返ります。この記事では延床30坪の家を例に、足場代を含めた30年の生涯コストを実際に計算し、どこが分岐点になるのかを数字で示します。あわせてメーカー公式の期待耐用年数と設計価格も確認します。

目次

結論:優劣ではなく「あと何年その家に住むか」で決まる

結論から書きます。シリコンとフッ素の選択は、次の1問でおおよそ決まります。「この家に、あと何年住みますか」です。

  • あと10年前後で住み替え・売却・相続を考えている → シリコン(またはラジカル)で十分
  • あと15年以上、その家に住み続ける予定 → フッ素を検討する価値が出てくる
  • 3階建て・狭小地・傾斜地など足場が高くつく家 → 居住年数が短めでもフッ素が有利に傾く
  • 沿岸部・積雪地・西日や海風を強く受ける面が多い → 年数を割り引いて考える必要があるため、余力のある側を選ぶ

理由はシンプルです。塗り替え工事の費用のうち、塗料代は一部でしかありません。足場・高圧洗浄・養生・ケレン・シーリングといった費用は、どの塗料を選んでも毎回まるごとかかります。だから「1㎡あたりいくらの塗料か」よりも「塗り替えが何回必要になるか」のほうが、生涯の総額に効いてきます。工事全体の費用構成は外壁塗装の費用内訳で工程別に整理しています。

まず、2つの塗料の基本的な違いを一覧にします。

項目シリコン塗料フッ素塗料
㎡単価の目安(材工共)2,000〜3,500円3,000〜5,500円
耐用年数の目安10〜15年15〜20年
主な樹脂アクリルシリコン樹脂などふっ素樹脂
製品の選択肢非常に多い。各社の主力グレード限られる。上位グレードのため製品数が少ない
塗膜の性質比較的しなやか。弾性タイプの製品も多い硬く緻密。弾性タイプは少なく、あっても割高
つや消しの選択肢あるほとんどない
向いている人あと10年前後で住み替えも視野/予算を優先したいあと15年以上住む/足場が高くつく家
出典:単価と耐用年数は本サイトが複数の価格情報を突き合わせて整理した幅。つや消しの有無は外壁塗装駆け込み寺「フッ素塗料の価格相場やメリット、デメリット」を参照。個別の根拠は本文中に記載

この表だけを見ると「フッ素のほうが上位グレード」という結論になりますが、それは値段の話であって、あなたにとっての正解の話ではありません。以下、その理由を数字で確認していきます。塗料グレード全体の位置づけは塗料の種類と耐用年数一覧にまとめています。

何が違うのか:樹脂の結合の強さと、価格・年数の差

結論として、両者の差は「塗膜の骨格そのものが紫外線で切れにくいかどうか」に由来します。特別なコーティングを足しているわけではありません。

樹脂の違いを一言でいうと「切れにくい結合」

外壁の塗膜が劣化する最大の要因は紫外線です。紫外線のエネルギーが、塗膜をつくっている樹脂の結合を少しずつ切っていきます。フッ素樹脂が有利なのは、炭素とフッ素の結合が強いためです。フッ素樹脂メーカーのダイキン工業は「炭素とフッ素の結合エネルギーは一般的な材料の骨格である炭素と水素の結合エネルギーよりも大きくて安定」と説明しています(出典:ダイキン工業「ダイキン フッ素塾」)。

この「結合が強い」という性質は、そのまま長所と短所の両方になります。紫外線に強く、汚れも付きにくい一方で、塗膜は硬く緻密になり、ひび割れへの追従性は落ちます。フッ素のデメリットは弱点ではなく、長所と同じ場所から出ているという理解が正確です。

メーカー公式で確認できる期待耐用年数と設計価格

塗料の年数は情報サイトによって数字がばらつきます。そこで、メーカーが自社サイトで公表している数字だけを抜き出してみます。エスケー化研は同じ「クリーンマイルド」シリーズの中にシリコンとフッ素の両方を持っているため、同条件での比較がしやすい例です。

製品名樹脂・形態期待耐用年数設計価格
エスケープレミアムシリコン水性・ハイブリッドシリコン樹脂(ラジカル制御)14〜16年2,920円/㎡
クリーンマイルドシリコン弱溶剤形二液・アクリルシリコン樹脂12〜15年3,180円/㎡
クリーンマイルドフッソ弱溶剤形二液・ふっ素樹脂15〜20年4,100円/㎡
クリーンマイルドフッソCRふっ素樹脂(平滑仕上げ向け)15〜20年4,330円/㎡
弾性クリーンマイルドフッソふっ素樹脂・弾性(ひび割れ追従性あり)15〜20年4,380円/㎡
出典:エスケー化研 各製品ページ(エスケープレミアムシリコン/クリーンマイルドシリコン/クリーンマイルドフッソ/クリーンマイルドフッソCR/弾性クリーンマイルドフッソ)。設計価格の条件は同社「設計価格表」(2026年度版)による

関西ペイントも同じ「セラM」シリーズ内でシリコンとフッ素を出しています。

製品名カタログ上の表記設計価格
セラMシリコンⅢ(中塗/上塗)低汚染型セラミック変性アクリルシリコン樹脂塗料3,140円/㎡
セラMフッソ(中塗/上塗)低汚染型セラミック変性ふっ素樹脂塗料3,970円/㎡
出典:関西ペイント「設計価格表」(2023年7月現在)。「材工共設計価格です。施工面積300㎡以上、屋根は100㎡以上を基準とします。下地調整代・養生費・足場代・諸経費・法定福利費は含まれておりません」と注記あり

ここで読み取れるのは、同じメーカー・同じシリーズの中でシリコンからフッ素へ1段上げたときの差は、おおむね830〜920円/㎡だということです。エスケー化研は3,180円→4,100円で920円、関西ペイントは3,140円→3,970円で830円です。塗装面積119㎡なら約10万〜11万円の増分に相当します。

ただし、この設計価格をそのまま戸建ての見積額と考えることはできません。エスケー化研の設計価格表には「設計価格は新築下地で同一淡彩色300m2以上を(特に指定がない場合)基準とする材工共の価格です」「設計価格には法定福利費、消費税は含まれておりません」という条件が明記されています。戸建ての塗り替えは既存下地で面積も100㎡台ですから、条件が異なります。

塗料単価は約1.5倍でも、工事総額の差は約1.2倍

実勢の㎡単価の幅(シリコン2,000〜3,500円、フッ素3,000〜5,500円)で中央値をとると、シリコン2,750円、フッ素4,250円です。単価だけ見ればフッ素はシリコンの約1.5倍になります。

ところが、工事1回の総額で見ると印象が変わります。次章の試算で示すとおり、延床30坪のモデルケースでシリコン約82万円、フッ素約100万円です。単価の差は1.5倍でも、工事総額の差は約1.2倍、金額にして18万円前後にとどまります。塗料以外の共通費が大きいためです。「フッ素は1.5倍高い」という言い方は、見積書のレベルでは正確ではありません。

足場代を含めた30年の生涯コストを試算する

結論から言うと、シリコンとフッ素の生涯コスト差は「塗料代の差」ではなく「足場代を何回払うか」でほぼ決まります。ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。実際に計算します。

試算の前提

  • 延床30坪の2階建て。外壁塗装面積 約119㎡(延床坪数 × 3.3 × 係数1.2)
  • 足場の架面積 200㎡、単価900円/㎡ → 足場代 18万円。延床30坪の2階建ての架面積はおおむね200〜260㎡、単価は600〜1,500円が目安です(外壁塗装の足場代の相場参照)
  • 高圧洗浄 119㎡ × 250円=約3.0万円、養生 119㎡ × 250円=約3.0万円、ケレン 119㎡ × 350円=約4.2万円
  • シーリング打ち替え 175m × 1,200円=約21.0万円
  • 塗料代はシリコン2,750円/㎡、フッ素4,250円/㎡、ラジカル3,150円/㎡(いずれも幅の中央値)
  • 諸経費と消費税は含みません。含めても全体が同じ比率で上がるため、比較の結論は変わりません

塗料に関係なく毎回かかる共通費は、18.0+3.0+3.0+4.2+21.0=約49万円です。塗り替えのたびに、この49万円が何もしなくても発生します。延床40坪の家ではこの共通費がさらに大きくなるため、面積の出し方は40坪の外壁塗装の相場で確認してください。

標準的な2階建てで30年を比べる

耐用年数は幅の中央値をとり、シリコン12年、ラジカル14年、フッ素17年で塗り替えると仮定します。0年目に1回目を実施し、30年間で何回必要になるかを数えます。

塗料塗料代(119㎡)1回あたり工事費塗り替え間隔30年の回数(実施年)30年累計1年あたり
シリコン約33万円約82万円12年3回(0・12・24年)約246万円約6.8万円
ラジカル約37万円約87万円14年3回(0・14・28年)約261万円約6.2万円
フッ素約51万円約100万円17年2回(0・17年)約200万円約5.9万円
出典:本サイト試算。塗装面積119㎡・足場200㎡×900円/㎡・共通工事費約49万円を前提とした概算で、実際の見積額を保証するものではありません

読み取れることは3つあります。

第一に、30年累計でフッ素はシリコンより約46万円安いという結果になります。1回の工事費はフッ素のほうが18万円高いのに、逆転します。塗り替えが1回減るからです。減った1回のうち、49万円は塗料と無関係の共通費でした。

第二に、ラジカルは30年という区切りでは不利に出ます。14年間隔だと28年目に3回目が来てしまい、残り2年しかないタイミングで塗ることになるためです。1年あたりコストで見れば約6.2万円とシリコンより優秀なのに、累計では最も高くなります。「30年で比べる」という切り方自体が、間隔と区切りの相性で結論を動かしてしまうという点は押さえておいてください。

第三に、これはあくまで「想定どおりもった場合」の計算です。フッ素が15年で塗り替えになれば、30年で3回必要になり、累計は約300万円に膨らんでシリコンより高くなります。年数の前提が崩れたときにダメージが大きいのは、単価の高いフッ素のほうです。

足場が高くつく家では差が広がる

3階建て、隣家との隙間が狭い、傾斜地、変形敷地といった条件では、足場の架面積も単価も上がります。ここでは足場を260㎡ × 1,300円=33.8万円と置き、他の条件は同じにして計算します(比較を単純にするため塗装面積は119㎡のまま固定しています)。共通費は約65万円になります。

条件共通費(塗料代以外)シリコン1回フッ素1回シリコン1年あたりフッ素1年あたり年あたりの差
標準的な2階建て(足場18万円)約49万円約82万円約100万円約6.8万円約5.9万円約0.9万円
足場が高くつく家(足場33.8万円)約65万円約98万円約116万円約8.2万円約6.8万円約1.4万円
出典:本サイト試算。シリコン12年・フッ素17年周期を前提とした概算。実際の見積額を保証するものではありません

年あたりの差が0.9万円から1.4万円へ、約1.5倍に広がりました。30年に換算すると27万円と42万円の差です。足場が高い家ほど、塗り替え回数を1回減らす価値が大きくなる——これが「3階建てならフッ素」と言われる理由の中身です。逆に言えば、平屋で足場が安く済む家ほど、フッ素を選ぶ経済的メリットは小さくなります。

「あと何年住むか」で答えが変わる:逆転が起きる分岐点

ここまでは30年という固定の物差しで比べました。しかし実際の判断で意味を持つのは、30年ではなく「あなたがその家にあと何年住むか」です。この軸に置き換えると、結論は単調ではなくなります。

今すぐ1回目を塗るとして、居住予定年数ごとに必要な塗り替え回数と累計額を出します(標準的な2階建てのケース。シリコン12年・フッ素17年周期)。

あと住む年数シリコンの回数/累計フッ素の回数/累計安いほう差額
10年1回/約82万円1回/約100万円シリコン約18万円
15年2回/約164万円1回/約100万円フッ素約64万円
20年2回/約164万円2回/約200万円シリコン約36万円
25年3回/約246万円2回/約200万円フッ素約46万円
30年3回/約246万円2回/約200万円フッ素約46万円
出典:本サイト試算。塗り替えは0年目に1回目を実施し、以後シリコンは12年ごと、フッ素は17年ごとに実施する前提。実際の見積額を保証するものではありません

注目していただきたいのは20年の行です。15年ではフッ素が64万円有利なのに、20年ではシリコンが36万円有利に逆転します。フッ素は17年目に2回目が必要になる一方、シリコンは12年目に塗った塗膜が20年時点でまだ持ちこたえているためです。

これは計算上のいたずらのように見えますが、現実の判断とも合っています。「あと3年で塗り替え時期が来るけれど、その頃には家をどうしているか分からない」という局面で、高い塗料を先に入れておく意味は薄いからです。

したがって、次のような読み方が実用的です。

  • 判断すべきは「フッ素は得か」ではなく、「自分の居住予定年数が、塗り替え回数の切れ目のどちら側にあるか」
  • 切れ目のすぐ手前(例:あと10年、あと20年)なら、安いほうを選んだほうが合理的
  • 切れ目のすぐ向こう側(例:あと13〜17年、あと25年以上)なら、フッ素の投資が回収されやすい
  • 年数の前提(シリコン12年/フッ素17年)が1〜2年動くだけで切れ目の位置も動くため、この表は「傾向」として使う

前提を変えたときの感度も確認しておきます。シリコンが15年、フッ素が15年しかもたなかった場合、両者の耐用年数は並び、単価の高いフッ素が一方的に不利になります。逆にシリコン10年・フッ素20年なら、あと20年住む家ではシリコン2回(164万円)に対しフッ素1回(100万円)で、フッ素が64万円有利です。結論を左右しているのは価格ではなく、年数の前提です。だからこそ、次章以降の「年数が伸びる条件・縮む条件」が重要になります。塗り替え時期の見極め方そのものは外壁塗装のタイミングで扱っています。

フッ素が向くケース/シリコンで十分なケース

結論として、条件で切り分けるのが最も確実です。以下の条件に多く当てはまるほうを選んでください。

フッ素が向くケース

  • あと15年以上、確実にその家に住み続ける。子世帯への継承が決まっている場合も含む
  • 3階建て、狭小地、傾斜地、変形敷地など足場が高額になる家。前章のとおり、年あたりの差が1.5倍に広がります
  • 沿岸部・積雪地・工業地帯など環境が厳しい立地。どの塗料でも年数は縮む前提になるため、余力のある側を選ぶ意味が出ます
  • 足場の設置そのものが大がかりになる家。道路使用許可が必要、隣家の敷地を借りる必要があるなど、金額以外の手間が大きい場合
  • 屋根と外壁を同時に施工する予定がある。足場1回で両方を長寿命化できるため、投資効率が上がります(外壁と屋根の同時施工)
  • 汚れの付きにくさを重視する。フッ素は低汚染性を訴求した製品が多く、幹線道路沿いなどで効きます

シリコンで十分なケース

  • あと10年前後で住み替え・売却・相続を想定している。塗り替え回数が1回で終わるなら、18万円の差は回収されません
  • 築年数が進み、外壁材やシーリングの寿命が先に来る可能性がある。築30年を超えた家でサイディングの反りや浮きが出ている場合、20年もつ塗膜を載せても下地が先に限界を迎えます
  • ひび割れが出やすい下地。モルタル外壁でヘアクラックが多い家などは、硬い塗膜より追従性のある塗膜のほうが向く場合があります
  • 平屋など足場が安く済む家。共通費が小さいほど、塗料代の差がそのまま効いてしまいます
  • 予算の上限が決まっていて、下地補修やシーリングを削りたくない。塗料グレードを上げるために下地工程を削るのは本末転倒です
  • 色を頻繁に変えたい、つや消しで仕上げたい。製品の選択肢はシリコンのほうが圧倒的に多くなります

特に2つ目は見落とされがちです。塗料の寿命は、それを載せる外壁材とシーリングの寿命を超えられません。築年数が進んだ家では、塗料グレードを1段上げる予算を下地補修に回したほうが、結果として長持ちすることがあります。

フッ素塗料のデメリットを正直に整理する

結論として、フッ素には5つの弱点があります。ただし、そのうち1つは半ば誤解が含まれているため、区別して説明します。

1. 価格が高い

最も分かりやすい弱点です。㎡単価で1,500円前後、工事総額で18万円前後の上乗せになります。この差を回収できるかどうかが、前章までの試算の論点でした。

2. 塗膜が硬く、ひび割れへの追従性が低い

フッ素樹脂の緻密で強い結合は、そのまま塗膜の硬さになります。リショップナビ外壁塗装はフッ素塗料のデメリットとして「塗膜が硬く、弾力性がない」ため「ヒビが入ることもある」と指摘しています(出典:リショップナビ外壁塗装「外壁塗装に使われる『フッ素塗料』とは?」)。

対策として弾性タイプのフッ素塗料もあります。エスケー化研の弾性クリーンマイルドフッソがそれにあたりますが、設計価格は4,380円/㎡で、通常のクリーンマイルドフッソ(4,100円/㎡)よりさらに高くなります。「ひび割れが出やすい下地にフッ素を使う」という選択は、可能ではあるが割高になると理解しておくのが正確です。

3. つやが残りやすく、つや消しの選択肢が少ない

フッ素は光沢保持率が高いことが性能上の売りです。裏を返せば、施工直後の光沢が長く残ります。落ち着いたマットな外観を好む方には、これが好みに合わないことがあります。外壁塗装駆け込み寺はフッ素について「つや消し塗料がない」と説明しています(出典:外壁塗装駆け込み寺「フッ素塗料の価格相場やメリット、デメリットを確認しよう」)。和風住宅や落ち着いた色で仕上げたい場合は、実物のつや見本を確認してから決めてください。色そのものの選び方は外壁塗装の人気色で整理しています。

4. 施工店が扱い慣れていないことがある

フッ素は流通量がシリコンより少なく、地域の塗装店では施工実績が少ないことがあります。外壁塗装駆け込み寺は、フッ素塗料について「しっかりとした下地処理を行い、塗料の使用方法をきちんと守らないと」期待した耐用年数は望めないとしています。高い塗料ほど、下塗り材の選定・希釈率・塗布量の管理が結果を左右します。

フッ素を検討するなら、次の3点を書面で確認してください。住宅リフォーム紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)も見積書のセルフチェックとして、数量・単価・仕様の確認と記載漏れのチェックを挙げています(出典:住まいるダイヤル「見積書のセルフチェック」)。

  • メーカー名と商品名(「フッ素」だけでなく製品名まで)
  • そのフッ素塗料に指定されている下塗り材の製品名。上塗りだけ高級品にしても、下塗りが合っていなければ性能は出ません
  • 使用予定の缶数と塗布量。メーカーが公表する標準使用量と照らせば、規定量が塗られる計画かどうかを確認できます

この3点にすぐ答えられない業者にフッ素を任せるのは、避けたほうが無難です。業者側の見極め方は外壁塗装の業者の選び方にまとめています。

5. 次回の塗り替え時に密着しにくい——ただし半分は誤解

「フッ素で塗ると次に塗り替えられない」という説明を見かけることがあります。ここは正確に区別する必要があります。

まず、フッ素塗膜は劣化しにくく表面が緻密なため、新しい塗料が付きにくい傾向があるのは事実です。リショップナビ外壁塗装も「塗膜の耐久性が低下していない場合は塗料の密着性が悪い」と述べています。次の塗り替えの際、通常より入念なケレンや下塗り材の選定が必要になり、その分の手間が加わる可能性があります。

一方で、「塗り重ねができない」という言い切りは行き過ぎです。塗装業者の解説では、フッ素の上に塗料が密着しづらいという説明について「完全な誤解」だとし、「フッ素塗料は適切な方法であれば、間違いなく重ね塗りが可能」としています。必要なのは、旧塗膜が剥がれやすい部分や劣化した部分を取り除く下地処理に「十分な時間と手間をかける」ことだと説明されています(出典:センショー「フッ素塗料は重ね塗りできないって本当?」)。

つまり「塗り替え不能」ではなく「次回の下地処理コストが上がりうる」という理解が実際に近いところです。ただし、その手間は次回の見積額に乗ってきます。生涯コストを厳密に見るなら、フッ素の2回目以降のケレン費は多少上振れすると見込んでおくのが安全です。

迷ったときの中間解:ラジカル塗料と、耐用年数の読み方

結論として、シリコンとフッ素の二択で迷ったら、まずラジカル制御型の塗料を候補に入れてください。価格はシリコン帯、年数はフッ素寄り、という位置づけの製品群です。

ラジカル塗料は「シリコンの値段でフッ素に近づける」選択肢

ラジカル制御型とは、紫外線によって顔料(酸化チタン)から発生する劣化因子=ラジカルの発生と拡散を抑える技術を使った塗料です。樹脂グレードとしてはシリコン系でありながら、耐候性を引き上げています。

ここで前掲のエスケー化研の表を見返してください。ラジカル制御を採用したエスケープレミアムシリコンは、期待耐用年数14〜16年・設計価格2,920円/㎡です。同社のクリーンマイルドシリコン(12〜15年・3,180円/㎡)より安く、しかも年数は長いという関係になっています。フッ素のクリーンマイルドフッソ(15〜20年)とも下限では並びます。

関西ペイントも、ラジカル制御技術を採用したアレスダイナミックシリーズの製品カタログで「最上位品フッソに迫る高耐候性」と表現し、キセノン照射試験で従来のフッ素樹脂塗料・シリコン樹脂塗料と比較したグラフを掲載しています(出典:関西ペイント「アレスダイナミックルーフ」製品カタログ)。

前章の30年試算でラジカルが不利に出たのは「28年目に3回目が来る」という区切りの問題であって、1年あたりコストではシリコンより優秀でした。居住予定年数が14年前後・28年前後の切れ目をまたぐかどうかで判断してください。各グレードの詳細は塗料の種類と耐用年数一覧で比較しています。

メーカーの「期待耐用年数」はどこから来た数字か

ここまで年数を前提に計算してきましたが、その年数がどういう性質の数字なのかは押さえておく必要があります。

メーカーが示す期待耐用年数の根拠になっているのは、促進耐候性試験です。キセノンアークランプなどで紫外線と水の作用を人工的に加え、光沢がどれだけ残るかを測ります。この試験方法はJIS K 5600-7-7(塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第7節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法))として規格化されています。

重要なのは、この規格自身が限界を明記していることです。規格の「原理」の項には「塗膜に及ぼす自然のさまざまな作用を,正確にシミュレートすることは不可能である。」と書かれており、だからこそ自然暴露とは区別して「促進耐候性試験」という用語を用いる、と説明されています(出典:JIS K 5600-7-7:2008)。試験機関である一般財団法人日本塗料検査協会も、キセノンランプ法を「自然暴露を促進させるために強い強度の人工光源を用いて行われます」と説明していますが、照射何時間が屋外何年に相当するかという換算は示していません(出典:日本塗料検査協会「促進耐候性試験(キセノンランプ法)」)。

メーカー自身も同じ趣旨の注記をしています。エスケー化研はクリーンマイルドフッソの製品ページで「期待耐用年数は、次の塗り替え時期の目安です。地域、立地条件、方角等により異なりますので、参考値としてお考えください」と明記しています。

実務上の塗り替え周期はどうかというと、国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)は、外壁塗装(雨掛かり部分)の塗替えを12年周期、雨の当たらない部分を15年周期として例示しています(出典:国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン」)。同じ建物でも面によって3年の差を見込む、という前提です。

ここから導かれる実用的な結論は次のとおりです。

  • 期待耐用年数は保証ではなく、条件が揃った場合の目安。契約書上の保証年数とは別物です
  • 沿岸部・積雪地・西日の強い面では、年数の下限側で考えるのが安全です
  • 同じ家でも南面と北面で劣化速度は違います。全面が同時に寿命を迎えるわけではありません
  • 「フッ素20年」を前提に生涯コストを組むと、想定が外れたときの損失が大きくなります。試算は下限側(フッ素15年・シリコン10年)でも一度回してみてください

よくある質問

フッ素塗料は本当に20年もちますか?

「もつことが期待できる上限値」と受け取るのが正確です。エスケー化研のクリーンマイルドフッソは期待耐用年数15〜20年と公表していますが、同時に「地域、立地条件、方角等により異なりますので、参考値としてお考えください」と注記しています。根拠となる促進耐候性試験についても、JIS K 5600-7-7自体が「塗膜に及ぼす自然のさまざまな作用を,正確にシミュレートすることは不可能である。」と述べています。計画を立てるときは15年側で見ておき、20年もてば得をした、と考えるのが安全です。

見積書でシリコンとフッ素をどう見分ければいいですか?

「シリコン塗料」「フッ素塗料」としか書かれていない見積書では判別できません。同じ「シリコン」でも水性か弱溶剤か、1液か2液か、ラジカル制御があるかで価格も年数も変わるためです。メーカー名と商品名まで書かれているかを確認し、書かれていなければ書面で出してもらってください。商品名が分かればメーカー公式サイトで期待耐用年数と設計価格を自分で確認できます。あわせて下塗り材の製品名と、塗料の使用予定缶数も聞いておくと比較の精度が上がります。

屋根はフッ素、外壁はシリコンのように分けてもいいですか?

分けること自体は可能ですし、合理性もあります。屋根は外壁より紫外線と熱を強く受けるため、同じ塗料でも寿命は短くなります。外壁塗装駆け込み寺は塗料別の耐用年数で、フッ素を外壁15〜20年に対し屋根8〜15年、シリコンを外壁10〜15年に対し屋根6〜8年としています。屋根だけグレードを上げれば、次回の塗り替えで外壁と屋根の時期を揃えやすくなり、足場を1回に集約できます。この考え方は外壁と屋根の同時施工で詳しく扱っています。

今の外壁がフッ素で塗られている場合、次もフッ素にしないといけませんか?

そのような決まりはありません。ただし、既存のフッ素塗膜がまだ健全な場合、新しい塗料が密着しにくくなる可能性が指摘されています。必要なのは入念な下地処理と、旧塗膜に適合する下塗り材の選定です。業者に対しては「既存塗膜の種類を確認したうえで、どの下塗り材を使うか」を必ず聞いてください。逆に言えば、この質問に具体的な製品名で答えられない業者には任せないほうがよい、という判断材料にもなります。

築何年ならフッ素を選ぶべきですか?

築年数そのものより、外壁材とシーリングがあと何年もつかで判断してください。塗膜の寿命は、それを載せる下地の寿命を超えられません。サイディングの反りや浮き、シーリングの断裂が広範囲に出ている家に20年もつ塗膜を載せても、下地側が先に限界を迎えます。その場合は、塗料グレードを上げる予算をシーリングの打ち替えや部分張り替えに回したほうが、結果的に建物は長持ちします。判断に迷う場合は複数社に現地調査を依頼し、下地の所見を書面でもらって比較してください。

まとめ

シリコン塗料とフッ素塗料の違いは、樹脂の結合の強さに由来します。フッ素は紫外線に強く長持ちしますが、その選択が正しいかどうかは性能表では決まりません。決めるのは「その家にあと何年住むか」です。

  • ㎡単価はシリコン2,000〜3,500円、フッ素3,000〜5,500円で約1.5倍。ただし工事総額の差は約1.2倍・18万円前後にとどまる
  • 耐用年数の目安はシリコン10〜15年、フッ素15〜20年
  • 延床30坪のモデルケースでは、塗料代以外の共通費が毎回約49万円かかる。生涯コストは「足場代を何回払うか」でほぼ決まる
  • 30年ではフッ素が約46万円有利。ただし居住予定年数が20年なら、逆にシリコンが約36万円有利に逆転する
  • 足場が高くつく家では年あたりの差が0.9万円から1.4万円へ拡大し、フッ素の有利さが増す
  • フッ素のデメリットは、価格・塗膜の硬さ・つやの残りやすさ・施工店の慣れ・次回塗り替え時の下地処理コスト。ただし「塗り重ねができない」は言い過ぎ
  • 迷ったらラジカル制御型が中間解になる。エスケープレミアムシリコンは期待耐用年数14〜16年・設計価格2,920円/㎡で、同社の従来型シリコンより安く長い
  • メーカーの期待耐用年数は促進試験に基づく目安であり、保証ではない。立地と方角で変わる

最後にもう一度、順序を確認します。塗料を選ぶ前に、あと何年住むかを決める。次に、その年数の中で塗り替えが何回必要になるかを数える。そのうえで、回数が減る側の塗料を選ぶ。この順番で考えれば、「高い塗料のほうが得らしい」という漠然とした話に流されずに済みます。足場代の相場と費用内訳を先に把握しておくと、業者の提案を自分の数字で検証できるようになります。

見積もりを取るときに使えるサービス

ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

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「リフォーム」編集部です。運営は株式会社スゴヨク(福岡市中央区/Webサイト制作・Webマーケティング)。外壁塗装・屋根工事・外構リフォームの費用や業者選びを、国土交通省・国民生活センター・住宅リフォーム推進協議会などの一次情報にあたって解説しています。金額や制度には必ず出典を明記し、確認できなかったことは「未確認」と書く方針です。当サイトは施工を行っておらず、特定の業者への送客を目的としない立場で編集しています。

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