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外壁塗装の打ち合わせで「水性と油性、どちらにしますか」と聞かれて迷う方は少なくありません。結論から書きます。水性か油性(溶剤)かは、施主が好みで選ぶ項目ではなく、塗る下地と部位によって半ば自動的に決まる項目です。同じメーカーの同じグレードでも、水性版は金属部に使えず、弱溶剤版は鉄部まで塗れる、という違いが製品仕様の段階で決まっているからです。この記事では、耐久性・価格・施工条件という三つの実務的な軸から、両者の違いを一次情報にあたって整理します。
なお当サイトは施工を行わない情報メディアです。特定の塗料や工法を勧める立場にはありません。以下の数値はすべて、メーカー公式サイト・公的機関の資料・実売価格を確認したうえで、幅をもって示しています。
結論:水性か油性かは「下地と部位」で決まる
水性と油性(溶剤)のどちらを使うかは、外壁本体・屋根・鉄部・付帯部という部位ごとの下地の材質で決まります。施主の好みで一括して指定する性質のものではありません。理由は単純で、メーカーが製品ごとに「適用下地」を定めているからです。
具体例を挙げます。エスケー化研の水性セラミシリコンの適用下地は「コンクリート、セメントモルタル、ALCパネル、スレート板、各種サイディングボード、各種旧塗膜(活膜)など」と記載されており、金属や鉄部は含まれていません。一方、同社の弱溶剤系であるクリーンマイルドシリコンは、同じ下地に加えて「鉄部、亜鉛メッキ鋼、アルミニウム、ステンレス」まで適用範囲に入っています。どちらもシリコン樹脂系という同じグレードの製品です。
日本ペイントでも構図は同じです。パーフェクトシリーズの製品ラインアップでは、水性タイプ(パーフェクトトップ Si など)と弱溶剤タイプ(ファイン パーフェクトトップ Si など)が別々に用意され、弱溶剤タイプには「鉄部など幅広い素材に適用可能」という説明が添えられています。つまり、水性か溶剤かという分岐は、メーカーが製品設計の段階ですでに用意しているのです。
この構造を理解すると、実際の現場で起きていることが見えてきます。多くの戸建て住宅の塗り替えでは、次のような組み合わせになります。
| 部位 | 代表的な下地 | 実務で選ばれやすいタイプ | 理由 |
|---|---|---|---|
| 外壁本体 | 窯業系サイディング、モルタル、ALC | 水性・弱溶剤のどちらも可 | 両タイプとも適用下地に含まれる |
| 屋根(スレート) | スレート板 | 弱溶剤が多い | 屋根用は弱溶剤の製品数が多い |
| 屋根(金属) | トタン、ガルバリウム鋼板 | 弱溶剤 | 水性上塗材の適用下地に金属が入らない製品が多い |
| 雨樋・破風・雨戸などの付帯部 | 塩ビ、鋼板、木部 | 弱溶剤が多い | 素材が混在し、金属を含むため |
| 鉄部(門扉、手すり、階段) | 鉄、亜鉛メッキ鋼 | 弱溶剤 | 錆止めと上塗りの適合が取りやすい |
ここから導かれる実務的な結論は次の通りです。外壁本体だけを見て「水性でお願いします」と伝えても、付帯部や鉄部では溶剤系が使われる可能性が高い、ということです。「全部を水性にできますか」という問いは、部位ごとに答えが変わります。
臭いとVOCは判断の主役にはなりにくい
水性と油性の比較というと、まず臭いの話題が出ます。確かに溶剤系のほうが臭いは強く、水性は少ないという傾向があります。ただし、外壁塗装は屋外作業であるため、居室内で使う建材とは規制の枠組みが異なります。
厚生労働省が塗装業者向けに公開している労働安全衛生法に基づく規則改正のリーフレットでは、有機溶剤中毒予防規則などの規制対象が「屋内作業場」「船舶内部」「車両内」「タンク等内部」に限定されており、屋外での塗装作業は原則として対象外である旨が示されています。溶剤系塗料に含まれるエチルベンゼンなどが規制対象物質に挙げられているのも、あくまで屋内作業を念頭に置いた枠組みです。
また、国土交通省の建築基準法に基づくシックハウス対策で規制対象となっているのはクロルピリホスとホルムアルデヒドの2物質で、面積制限がかかるのは「居室の内装の仕上げ」です。F☆☆☆☆に区分される材料は規制対象外として使用できます。外装の塗り替えがこの内装規制の直接の対象になるわけではありません。
とはいえ、工事中に窓を開けられない、洗濯物を干せないといった生活上の負担は現実に発生します。臭いがどれくらい続くのか、いつから換気を再開できるのかについては外壁塗装の臭いはいつまで続くのかの記事で詳しく扱っています。この記事では以降、耐久性・価格・施工条件という別の軸に集中します。
水性塗料と油性(溶剤)塗料の違いを整理する
両者の違いは、突き詰めると「塗料を薄める希釈材が水か、有機溶剤か」という一点に集約されます。樹脂の種類(アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、無機)は別軸であり、水性のシリコンも溶剤のシリコンも存在します。
そのうえで、油性(溶剤系)はさらに「弱溶剤」と「強溶剤」に分かれます。この3分類が実務の基本形です。
| 比較項目 | 水性 | 弱溶剤(油性) | 強溶剤(油性) |
|---|---|---|---|
| 希釈材 | 水(清水・水道水) | 塗料用シンナー(ミネラルスピリット等) | ラッカーシンナー、ウレタンシンナー等 |
| 主な溶剤成分 | なし | ミネラルターペン、ソルベントナフサ | トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル等 |
| 旧塗膜への影響 | ほぼなし | 溶解力が弱く侵しにくい | 溶解力が強く、旧塗膜を縮ませることがある |
| 臭い | 少ない | ある(強溶剤より弱い) | 強い |
| 戸建て塗り替えでの使用頻度 | 外壁本体で多い | 屋根・鉄部・付帯部で多い | 戸建ての外装では限定的 |
強溶剤の溶解力の強さは、塗り替え工事では不利に働くことがあります。既存の塗膜の上に強い溶剤を含む塗料を重ねると、下の塗膜が溶けて縮む現象が起きるためです。戸建ての塗り替えで弱溶剤系が主流になっているのは、この点が大きく影響しています。
「油性」という呼び方が混乱のもとになっている
見積書や業者の説明で使われる「油性」という言葉は、実際にはほとんどの場合「弱溶剤系」を指しています。一方で「強溶剤」を油性と呼ぶ場面もあり、同じ単語が二つの異なる対象を指しています。
メーカーの製品情報では「油性」という表記はあまり使われません。エスケー化研では「弱溶剤形塗料」、日本ペイントでは「弱溶剤タイプ」といった書き方です。したがって、打ち合わせで「油性ですか」と尋ねるより、「弱溶剤ですか、強溶剤ですか」と尋ねたほうが正確な答えが返ってきます。
もう一つ整理しておきたいのが、水性と溶剤の塗り重ねの順序です。エスケー化研のよくあるご質問(塗料の性能について)では、溶剤形塗料の上に水性塗料を塗る場合は問題ないとされる一方、水性塗料の上に溶剤形塗料を塗る場合は「試し塗りにより確認の上、本施工に入る」必要があるとされています。前回の塗り替えが水性だった家では、次回に溶剤系を選ぶ際に確認工程が入る可能性がある、ということです。
耐久性に差はあるのか
結論として、同じ樹脂グレード同士を比べたときに「水性のほうが持たない」「溶剤のほうが長持ちする」と断定できる公的な比較データは見つかりませんでした。耐久性を左右する主因は、水か溶剤かではなく樹脂の種類です。
その根拠として分かりやすいのがJIS規格の構造です。建築用の耐候性上塗り塗料を規定したJIS K 5658:2010 建築用耐候性上塗り塗料では、ふっ素樹脂・シリコーン樹脂・ポリウレタン樹脂の二液硬化形塗料を対象とし、耐候性の等級を1級・2級・3級に区分しています。等級の違いは促進耐候性試験の照射時間と光沢保持率の基準で定義されており、水系か溶剤系かによる区分は設けられていません。規格の設計思想として、耐候性は水性か溶剤かで分けるものではない、ということが読み取れます。
メーカー側の見解も同様です。エスケー化研の前掲FAQでは、水性塗料と溶剤形塗料について「性能的に大きな差がない」旨が述べられています。また「水性塗料は乾燥過程で樹脂が融着することにより塗膜を成形しているので、造膜すれば問題ない」として、乾いた後の耐水性についても否定的な見方は取られていません。
耐用年数の目安を樹脂グレード別に整理すると、次のようになります。数値はサイトやメーカーによって幅があるため、必ず幅で捉えてください。
| 樹脂グレード | 塗料の㎡単価の目安 | 耐用年数の目安 | 水性・弱溶剤の両方があるか |
|---|---|---|---|
| アクリル | 1,000〜1,800円 | 5〜8年 | 水性が中心 |
| ウレタン | 1,600〜2,500円 | 7〜10年 | 両方あり |
| シリコン | 2,000〜3,500円 | 10〜15年 | 両方あり |
| ラジカル制御形 | 2,800〜3,500円 | 13〜15年 | 両方あり |
| フッ素 | 3,000〜5,500円 | 15〜20年 | 両方あり |
| 無機 | 3,800〜6,000円 | 15〜25年 | 両方あり(実績データは少ない) |
この表からも分かるように、耐用年数の差はグレード間のほうが圧倒的に大きくなっています。シリコンとフッ素の差は5年前後ありますが、同じシリコンの中で水性と弱溶剤を比べた場合の差を示す公的データは確認できませんでした。グレードごとの違いは塗料の種類と耐用年数の一覧、シリコンとフッ素の具体的な差はシリコン塗料とフッ素塗料の違いで個別に整理しています。
耐久性で本当に効いてくるのは、次の要素です。
- 樹脂グレード(アクリルかシリコンかフッ素か)
- 下地処理の質(高圧洗浄、ケレン、シーリングの打ち替え)
- 規定の塗布量を守っているか(希釈しすぎていないか)
- 下塗り材と上塗り材の組み合わせが適合しているか
- 施工時の気温・湿度が条件を満たしていたか
なお、塗膜の厚みについては、エスケー化研のFAQで「通常の塗料は30μ(0.03mm)程度」と示されています。ミクロン単位の膜で外壁を守っている以上、規定量を守った施工かどうかが、水性か溶剤かという選択よりも結果を左右しやすいと考えられます。
価格の差はどれくらいか
結論として、同じメーカー・同じグレードで比べると、弱溶剤系のほうが材料費は高くなる傾向があります。ただしこれは缶単位の材料費の話であり、見積書に載る㎡単価の差とは必ずしも一致しません。
実際に、エスケー化研のシリコングレードで水性版と弱溶剤版の実売価格を比較してみます。いずれも塗料販売店の税込通販価格と、メーカー公表の標準塗り面積(2回塗り)から材料費を概算したものです。
| 比較項目 | 水性セラミシリコン | クリーンマイルドシリコン |
|---|---|---|
| タイプ | 一液・水性 | 二液・弱溶剤 |
| 希釈材 | 清水 | 塗料用シンナーA(別途費用) |
| 荷姿と税込価格 | 16kg缶 16,170円 | 15kgセット 23,540円 |
| 標準塗り面積(2回塗り) | 45〜64㎡ | 42〜68㎡ |
| 材料費の概算 | 約250〜360円/㎡ | 約350〜560円/㎡ |
| 適用下地に金属を含むか | 含まない | 含む(鉄部・亜鉛メッキ鋼・アルミ・ステンレス) |
延床30坪の住宅は、塗装面積が約119㎡(延床坪数×3.3×係数1.2)になるのが一般的な計算です。この面積で材料費だけを試算すると、水性で約3.0万〜4.3万円、弱溶剤で約4.2万〜6.7万円という幅になります。差額は2万円前後です。
ここで注意したいのは、この材料費と、見積書に載る「塗料㎡単価2,000〜3,500円」はまったく別物だという点です。見積書の㎡単価には、材料費に加えて職人の手間賃、下塗り材、消耗品、施工管理などが含まれています。材料費が㎡あたり100〜200円違ったからといって、見積総額がその分だけ動くとは限りません。費用の内訳がどう構成されているかは外壁塗装の費用内訳で詳しく分解しています。
価格差が見積書に現れにくいもう一つの理由は、業者ごとに材料の仕入れ値が違うことです。同じ商品でも仕入れルートで単価が変わるため、複数社の見積を並べると水性と溶剤の価格関係が逆転していることもあります。相場の幅がなぜ生まれるのかは外壁塗装の見積もり相場で整理しています。
弱溶剤系を使う場合に、材料費以外で発生しうるコストも挙げておきます。
- 希釈用の塗料用シンナー代(水性は水道水のため不要)
- 刷毛・ローラーの洗浄シンナーと廃液の処理
- 引火性液体としての保管・運搬に伴う管理コスト
なお溶剤類は消防法上の危険物第四類(引火性液体)に区分されます。指定数量は非水溶性の第一石油類で200L、第二石油類で1,000Lとされており、業者側が一定量を超えて保管する場合には手続きが必要になります。ただし、戸建て1棟の塗り替えで使う量がこの指定数量に達することは通常ありません。
施工条件の違い:気温・湿度・下地との相性
実務で最も明確な差が出るのが施工条件です。水性塗料は低温に弱く、気温5℃以下では使えないとメーカーが明記しています。この一点だけは、水性と溶剤の間にはっきりした線が引かれています。
エスケー化研の前掲FAQでは、水性塗料について「5℃以下の低温下では使えない」と記載され、寒冷地では溶剤形が適しているとされています。水性塗料は水が蒸発して樹脂粒子が融着することで塗膜になるため、低温では融着が進まず、正常な塗膜が形成されないという理屈です。
公的な標準仕様書が定める気象条件
気温と湿度の条件については、公共工事の標準的なルールが参考になります。国土交通省の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)の18章 塗装工事では、施工の共通事項として次のように定められています。
- 気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない(ただし、採暖・換気等を適切に行う場合はこの限りでない)
- 外部の塗装は、降雨のおそれのある場合または強風時は、原則として行わない
- 塗装を行う場所は、換気に注意して、溶剤による中毒を起こさないようにする
この「5℃以下・湿度85%以上」という基準は、民間の戸建て塗装でも事実上の共通ルールとして扱われています。注目したいのは、この条文が水性・溶剤の区別なく適用されている点です。溶剤系なら冬でも自由に塗れるわけではありません。
むしろ溶剤系には、低温期・高湿度期に特有の不具合があります。日本ペイントが公開する塗膜の欠陥に関する技術資料(白化)では、白化(ブラッシング)という現象について、溶剤が蒸発する際の潜熱で素材から熱が奪われ結露しやすくなること、冬季は未乾燥時間が長く結露の影響を受けやすいこと、梅雨時は高湿度のため結露しやすいことが説明されています。対策として、季節ごとに専用シンナーを使い分けることが挙げられています。
つまり、冬や梅雨の施工リスクは水性と溶剤の双方にあり、性質が違うだけです。時期ごとの注意点は冬の外壁塗装と梅雨時期の外壁塗装でそれぞれ整理しています。
| 施工条件 | 水性 | 弱溶剤(油性) |
|---|---|---|
| 気温5℃以下 | メーカーが使用不可と明記 | 標準仕様書上は塗装を行わない条件(採暖等の措置があれば例外) |
| 湿度85%以上 | 標準仕様書上は塗装を行わない条件 | 標準仕様書上は塗装を行わない条件 |
| 結露しやすい環境 | 乾燥が遅れやすい | 溶剤蒸発の潜熱で白化が起きることがある |
| 降雨のおそれ・強風時 | 原則として施工しない | 原則として施工しない |
| 季節による調整 | 希釈は水のため調整幅が小さい | 季節ごとの専用シンナーで調整 |
下地との相性で見落とされやすい点
下地との相性については、前述した「水性の上に溶剤形を塗る場合は試し塗りが必要」という点が実務的に重要です。前回の塗り替えで水性を使った家では、次回に弱溶剤系を選ぶ際、既存塗膜との適合を現場で確認する工程が入る可能性があります。
もう一つは、二液型のほうが下地への適用範囲が広いという点です。エスケー化研のFAQでは、二液型について「反応硬化タイプのため、幅広い下地に適用できます。下地への浸透性、付着性では一液より優れていると言えます」と説明されています。金属部や、劣化が進んで吸い込みの激しい下地では、この差が効いてくる場面があります。
実務で効くのは「弱溶剤か強溶剤か」「一液か二液か」という軸
ここまでの内容を踏まえると、「水性か油性か」という問いの立て方そのものが、実務では粗すぎるということが分かります。現場で塗料を選ぶ職人が実際に見ているのは、次の3つの軸の組み合わせです。この整理は、他の比較記事ではあまり明示されていない視点です。
- 軸1:樹脂グレード(アクリル/ウレタン/シリコン/ラジカル/フッ素/無機)
- 軸2:希釈系(水性/弱溶剤/強溶剤)
- 軸3:硬化形式(一液型/二液型)
耐久性を決めるのは主に軸1、施工条件と適用下地を決めるのが軸2、下地への付着性と現場の段取りを決めるのが軸3です。「水性か油性か」という問いは軸2だけを取り出したものであり、これだけでは何も決まりません。
一液型と二液型はどう違うのか
一液型は缶を開けてそのまま(水やシンナーで希釈して)使える塗料です。二液型は主剤と硬化剤を現場で計量して混ぜ、化学反応で硬化させます。
| 比較項目 | 一液型 | 二液型 |
|---|---|---|
| 使い方 | 希釈してそのまま塗る | 主剤と硬化剤を規定比率で混合 |
| 可使時間(ポットライフ) | 制限なし | 製品ごとに設定あり(例:クリーンマイルドシリコンは23℃で5時間) |
| 適用下地 | 一般建材が中心 | 金属を含め幅広い下地に対応する製品が多い |
| 下地への浸透性・付着性 | 標準的 | メーカーは一液より優れるとしている |
| 現場での手間 | 少ない | 計量・撹拌の手間があり、混合ミスのリスクもある |
| 残った塗料 | 翌日以降も使える | 可使時間を過ぎたぶんは使えない |
二液型には可使時間があるため、混ぜた分をその時間内に使い切る必要があります。混ぜた塗料が余っても翌日には使えません。逆に言えば、二液型を採用している業者は、日々の使用量を読んで計量する段取りができているということでもあります。
注意したいのは、水性=一液、溶剤=二液という単純な対応関係ではない点です。エスケー化研の水性セラミシリコンは一液の水性、クリーンマイルドシリコンは二液の弱溶剤ですが、水性の二液型(水性セラタイトFなど)も存在します。組み合わせは製品ごとに異なります。
JIS規格が示唆していること
前述のJIS K 5658が、ふっ素樹脂・シリコーン樹脂・ポリウレタン樹脂の二液硬化形を対象としている点は示唆的です。耐候性の等級を定める規格が二液形を対象に設計されているという事実は、性能を安定して評価する対象として二液形が想定されていることを意味します。ただしこれは一液型が劣るという証明ではなく、規格の適用範囲の話である点には注意が必要です。
業者に質問するなら、「水性ですか油性ですか」ではなく次のように聞くと、話が具体的になります。
- 上塗り材の製品名とメーカー名は何ですか
- それは水性ですか、弱溶剤ですか、強溶剤ですか
- 一液型ですか、二液型ですか
- 外壁・屋根・付帯部でそれぞれ別の製品を使いますか
- 下塗り材は上塗り材と同じメーカーの適合品ですか
見積書のどこを見れば水性か溶剤か判別できるか
結論として、見積書に「水性」「油性」と書かれていなくても、上塗り材の製品名が記載されていれば判別できます。製品名をメーカー公式サイトで検索し、希釈材の欄を見れば確定します。これは施主が自力でできる数少ない検証作業の一つです。
国土交通大臣指定の住宅リフォーム紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)は、見積書のセルフチェック ポイント3で次のように述べています。見積書に部品や製品の仕様の記載がない場合は必ず事業者に確認すること、材料や設備機器の仕様や品番が分かれば調べることが可能であること、数量が「一式」と示されていた場合は改めて内容の確認が必要であること、などです。
判別の手順
手元の見積書で、次の順に確認してみてください。
- 上塗り工程の行に、メーカー名と製品名が書かれているかを確認する
- 製品名をメーカー公式サイトで検索し、製品情報ページの「希釈材」または「うすめ液」の欄を見る
- 「清水」「水」とあれば水性、「塗料用シンナー」とあれば弱溶剤、「ラッカーシンナー」等とあれば強溶剤
- 同じページの「適用下地」を見て、自宅の外壁材が含まれているかを確認する
- 「主剤・硬化剤」の記載があれば二液型、なければ一液型
- 外壁・屋根・付帯部で別々の製品名が書かれているかを確認する
製品名が「水性◯◯」で始まっていれば水性であることが多く、エスケー化研の「クリーンマイルド」シリーズや日本ペイントの「ファイン」を冠する製品は弱溶剤系であることが多い、という傾向もあります。ただし例外もあるため、最終的にはメーカーの製品情報ページで希釈材を確認するのが確実です。
製品名が書かれていない見積書をどう扱うか
「外壁塗装一式」「シリコン塗料 3回塗り」のように、メーカー名も製品名もない見積書は珍しくありません。この場合、水性か溶剤かを判別する手がかりがないだけでなく、どのグレードのどの製品が使われるのかも確定しません。
住まいるダイヤルは同じページで、数量についても「すべて100㎡など同じ数字が書かれた見積書も散見される」として、図面や現場実測に基づいて正確に積算されているかを確認するよう促しています。製品名の記載がないことと、数量が丸められていることは、しばしば同じ見積書の中に同居します。
製品名を尋ねて明示してもらえない、あるいは「うちの独自塗料です」といった説明しか返ってこない場合は、判断材料が得られていない状態です。なお、塗装工事は請負金額が税込500万円未満であれば建設業の許可が不要とされています(国土交通省 建設業の許可)。許可の有無だけで技術力を判断することはできないため、見積書の記載内容そのものを確認する意味は大きくなります。
| 見積書の記載例 | 判別できること | 次にすべきこと |
|---|---|---|
| エスケー化研 水性セラミシリコン 3回塗り 119㎡ | 水性・一液・シリコン・面積が明示 | 適用下地に自宅の外壁材が含まれるか確認 |
| 日本ペイント ファインパーフェクトトップ 119㎡ | 弱溶剤・ラジカル制御形 | 付帯部にも同じ製品を使うのか確認 |
| シリコン塗料 3回塗り 一式 | グレードのみ。水性か溶剤か不明 | メーカー名と製品名の明示を依頼 |
| 外壁塗装工事 一式 | ほぼ何も判別できない | 工程・数量・単価への分解を依頼 |
よくある質問
水性塗料は油性より早く劣化しますか
同じ樹脂グレード同士で比べたとき、水性のほうが早く劣化すると示す公的な比較データは見つかりませんでした。エスケー化研のFAQでは、水性と溶剤形で性能的に大きな差はないとされています。JIS K 5658も耐候性の等級を水系・溶剤系で分けていません。耐用年数を左右するのは主に樹脂グレードと施工品質だと考えるのが妥当です。
外壁も屋根も付帯部もすべて水性にできますか
難しい場合が多いと考えられます。エスケー化研の水性セラミシリコンのように、水性の外装用上塗材は適用下地に金属を含まない製品があります。雨樋や鉄部、金属屋根がある家では、その部位に弱溶剤系が使われる可能性が高くなります。すべてを水性で統一できるかは、部位ごとの下地を業者に確認するのが確実です。
冬に外壁塗装をするなら油性のほうがよいですか
水性塗料は5℃以下では使えないとメーカーが明記しているため、寒冷地や真冬の低温時には溶剤形が選ばれることがあります。ただし、公共建築工事標準仕様書では気温5℃以下・湿度85%以上・結露時は水性か溶剤かを問わず塗装を行わないとされています。また溶剤系には低温期に白化が起きやすいという別の課題もあります。冬に工事をするかどうかは、気温の実測値と工程の余裕から判断するのが現実的です。
前回が水性だった家は今回も水性にすべきですか
必ずしもそうとは限りませんが、確認工程は必要になります。エスケー化研のFAQでは、溶剤形の上に水性を塗るのは問題ないとされる一方、水性の上に溶剤形を塗る場合は試し塗りで確認してから本施工に入る必要があるとされています。前回の塗料が分からない場合は、その旨を業者に伝えたうえで、既存塗膜の確認をどう行うか聞いておくと安心です。
見積書に「油性」としか書かれていない場合はどうすればよいですか
メーカー名と製品名の明示を依頼してください。「油性」という表記は弱溶剤と強溶剤の両方を指しうるため、それだけでは施工条件も適用下地も確定しません。住まいるダイヤルも、仕様の記載がない場合は必ず事業者に確認するよう促しています。品番が分かれば、施主自身がメーカー公式サイトで希釈材と適用下地を調べられます。
まとめ
水性塗料と油性(溶剤)塗料の違いを、耐久性・価格・施工条件の三つの軸から整理してきました。要点は次の通りです。
- 水性か油性かは、施主の好みではなく下地と部位で半ば決まる。水性の外装用上塗材には金属を適用下地に含まない製品がある
- 同じ樹脂グレード同士で水性が劣るという公的データは見つからなかった。JIS K 5658も耐候性等級を水系・溶剤系で分けていない
- 材料費は弱溶剤のほうが高い傾向がある。ただし見積書の㎡単価は手間賃を含むため、材料費の差がそのまま総額に出るとは限らない
- 水性は5℃以下では使えない。一方で気温5℃以下・湿度85%以上・結露時に塗装しないという基準は、水性・溶剤の区別なく適用される
- 実務で効くのは「弱溶剤か強溶剤か」「一液か二液か」という軸。業者には製品名で確認するのが早い
- 見積書に製品名が書かれていれば、メーカー公式サイトの希釈材の欄で水性か溶剤かを施主自身が判別できる
水性と油性のどちらが優れているかという問いには、現時点で一般化できる答えは見つかりませんでした。むしろ、自宅のどの部位にどの下地があり、それぞれにどの製品が適用できるのかを確認していくほうが、結果としてトラブルの少ない選択につながると考えられます。見積書を受け取ったら、まずは上塗り材の製品名が書かれているかどうかを見てみてください。
見積もりを取るときに使えるサービス
ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

