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外壁塗装のDIYは、2階建て以上の外壁全面については、おすすめできません。理由は3つです。第一に、高所からの墜落・転落は建設のプロでも死亡災害の最多要因であること。第二に、プロが必ず組む「足場」を個人で再現するのが難しいこと。第三に、実費を積み上げると、思ったほど安くならないことです。一方で、1階の手が届く範囲や木部・雨戸などはDIYの対象になります。この記事では、公的な統計と実費の試算をもとに、線引きを整理します。
結論:外壁塗装のDIYは「範囲を限る」なら成り立ちます
結論から申し上げます。外壁塗装のDIYは、作業する高さと範囲を限れば成り立ちます。ただし家一軒まるごとを自分で塗るのは、費用面でも安全面でも合理的とは言えません。
判断の基準はシンプルです。「両足を地面につけたまま届く範囲かどうか」。これが一つの目安になります。脚立に乗らないと届かない場所から先は、性質の違う作業になります。
- やってよい範囲の例:物置、フェンス、門扉、木製の柵、雨戸、1階の腰高までの外壁
- 慎重に判断する範囲:1階の軒下まで(脚立が必要になる高さ)
- やってはいけない範囲:2階以上の外壁、屋根、高所での高圧洗浄、破風・軒天の高所部分
この記事では、なぜこの線引きになるのかを、厚生労働省の労働災害統計、国民生活センターの事故情報、労働安全衛生規則の足場規定、そしてDIYの実費の積み上げから説明します。数値はすべて出典を明記しています。
危険の実態:墜落・転落は「プロでも最多」の事故です
まず数字から確認します。高所作業の危険は、感覚ではなく統計で裏づけられています。安全に関わる話ですので、年次と出典を明記して整理します。
建設業の死亡災害は業種別で最多、事故の型別では墜落・転落が最多
厚生労働省が2026年5月27日に公表した「令和7年の労働災害発生状況」によると、令和7年(2025年)の労働災害による死亡者数は700人でした。前年比46人・6.2%の減少です。このうち業種別で最も多いのが建設業の214人でした。
事故の型別で見ると、最も多いのは「墜落・転落」の186人です。全産業の死亡者700人のうち、およそ4人に1人が高いところから落ちて亡くなっています(厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」)。
けがまで含めるとさらに鮮明です。建設業の休業4日以上の死傷者は令和7年で13,437人。そのうち墜落・転落は4,343人で、事故の型別の第1位です(厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」、建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」)。
ここが重要な点です。これは、毎日高所で作業し、特別教育を受け、足場を組み、安全帯を着けている「プロ」の数字です。訓練を受けた人が、装備を整えたうえで、それでも落ちています。
一般家庭の脚立・はしご事故は、自宅で起きています
次に、一般家庭の事故です。国民生活センターは2019年3月28日に「思わぬ大けがに!高齢者の脚立・はしごからの転落」を公表しています。医療機関ネットワークに寄せられた458件のうち、95%にあたる433件が転落事故でした。入院が必要になった事例は全体の約3分の1にのぼります(国民生活センター)。
発生場所は自宅が大半です。天井裏の点検、窓の清掃、屋根の修理といった、住まいの手入れの最中に起きています。
消費者庁も2014年12月22日に「脚立・はしごからの転落に注意!」を公表しました。死亡事故の情報が8件報告されており、作業内容は庭木の剪定が最多、次いで屋根等の修理でした。被害者の7割強が50歳以上です。製品が壊れたケースは1割未満で、大半はバランスを崩した、足を滑らせたといった使い方の問題でした(消費者庁)。
製品評価技術基盤機構(NITE)も2022年9月に注意喚起を出しています。2017年度から2021年度までの5年間に、はしご・脚立の事故が162件。被害者の約4割が60代以上でした。「はしごの上で作業しない」「脚立の天板に乗らない・またがらない」が呼びかけの柱です(製品評価技術基盤機構)。
持ち家のDIYは、労災保険の対象になりません
見落とされがちな点があります。自宅を自分で塗っていて落ちても、労災保険は使えません。
労災保険の対象は「労働の対価として賃金を受けるすべての労働者」です。常用・日雇・パート・アルバイトなど雇用形態は問いませんが、賃金を受けて働いていることが前提になります(厚生労働省 愛媛労働局「労災保険の適用者について」)。
自分の家を自分で塗る行為は、誰かに雇われた労働ではありません。したがって治療費も休業補償も、労災からは出ません。健康保険や自身が加入している傷害保険での対応になります。プロが落ちた場合と、施主が落ちた場合とでは、その後の経済的な備えがまったく違うのです。
| 統計・注意喚起 | 年次 | 主な数値 |
|---|---|---|
| 労働災害による死亡者数(全産業) | 令和7年(2025年) | 700人(前年比46人減) |
| うち建設業の死亡者数 | 令和7年 | 214人(業種別で最多) |
| 事故の型別・墜落・転落の死亡者数 | 令和7年 | 186人(事故の型別で最多) |
| 建設業の休業4日以上の死傷者数 | 令和7年 | 13,437人 |
| うち墜落・転落 | 令和7年 | 4,343人(事故の型別で最多) |
| 高齢者の脚立・はしご転落(医療機関ネットワーク) | 2019年公表 | 458件中433件が転落。約3分の1が入院 |
| 脚立・はしごからの転落(死亡事故情報) | 2014年公表 | 8件。50歳以上が7割強 |
| はしご・脚立の製品事故 | 2017〜2021年度 | 162件。約4割が60代以上 |
ではプロは、なぜ落ちにくいのでしょうか。DIYとの決定的な違いは、塗る技術ではなく足場にあります。足場があるかないかで、作業の安全性も仕上がりも変わります。
労働安全衛生規則が定める足場の基準
労働安全衛生規則は、事業者が労働者を働かせる場合のルールです。自宅を自分で塗る個人には直接は適用されません。ただし「なぜ足場が必要なのか」の根拠として、内容を知っておく価値があります。
主な条文は次のとおりです(厚生労働省 滋賀労働局「足場に関する労働安全衛生規則」)。
| 条文 | 定めている内容 |
|---|---|
| 第519条 | 高さ2m以上の作業床の端・開口部などで墜落のおそれがある箇所には、囲い、手すり、覆い等を設ける |
| 第563条 | 作業床の幅は40cm以上。床材間の隙間は3cm以下、床材と建地の隙間は12cm未満。墜落防止のため高さ85cm以上の手すり等と中桟等を設ける |
| 第565条 | つり足場、張出し足場、高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更には、技能講習を修了した「足場の組立て等作業主任者」を選任する |
| 第567条 | 足場での作業を開始する前に点検を行い、手すり等の取り外しや脱落があれば直ちに補修する |
ここから読み取れるのは「高さ2m」という一つの境界線です。2mを超えたところから、囲いや手すりが法令上の要求事項になります。一般的な2階建て住宅の2階外壁は、地上から5〜7m前後の高さです。
さらに2015年(平成27年)7月1日からは、足場の組立て・解体・変更の業務に従事する労働者に対して、特別教育の修了が義務づけられています(厚生労働省「足場からの墜落防止のための措置を強化します」)。プロの世界では、足場を組むこと自体が教育を受けた人の仕事なのです。
脚立では「両手が使えない」という問題
足場の価値は、落ちないことだけではありません。両手が自由に使えることです。
作業床の上に立てば、片手にローラー、片手にバケットを持てます。体重を足でしっかり支えられるので、ローラーを一定の力で押しつけられます。塗膜の厚みが均一になり、塗り残しも減ります。
脚立の上ではそうはいきません。片手はどこかを掴んでいたい。姿勢を保つことに神経を使い、塗る動作は雑になります。手が届かない部分を「あと少し」と体を伸ばした瞬間が、最も危険な瞬間です。
高圧洗浄も同じです。ケルヒャーの家庭用高圧洗浄機の取扱説明書には「トリガーガンを握り水を出す時に反発力や回転力があります」「本体を高い場所に置いて使用しないこと」と明記されています(ケルヒャー 家庭用高圧洗浄機 取扱説明書)。不安定な足元で反発力のある道具を扱う行為は、転落の条件がそろっています。
足場そのものの費用の考え方については、外壁塗装の足場代の相場の記事で詳しく整理しています。
DIYの実費を積み上げると、30坪でいくらになるか
「安く済むから」がDIYの最大の動機だと思います。そこで、実費を一つずつ積み上げてみます。
前提は延床30坪の2階建てです。当メディアでは、延床坪数 × 3.3 × 係数1.2 で塗装面積を概算しています。30坪なら約119㎡です。この数字をもとに、必要な材料と道具の実費を見ていきます。
塗料の量から確認します。カンペハピオ「水性シリコン凹凸外かべ用」16kg缶の標準塗り面積は、2回塗りで16〜20㎡です。119㎡なら6〜8缶が必要になります。販売価格は通販サイトで税別13,980円前後、参考基準価格は税別18,500円と表示されています(モノタロウ)。
| 項目 | 内容の目安 | 実費の目安 |
|---|---|---|
| 上塗り塗料 | 水性シリコン系16kg缶(2回塗りで16〜20㎡)を6〜8缶 | 9〜15万円 |
| 下塗り材(シーラー) | 小容量品は1Lあたり2,500〜3,000円前後。業務用の大容量缶なら単価は下がる | 3〜8万円 |
| シーリング材・プライマー | 総延長150〜200m分のカートリッジ、撤去用カッター、バックアップ材 | 3〜6万円 |
| 足場のレンタル | 個人向け足場キットは1週間1万円前後から。家一周を囲うには複数セットか複数回の組み替えが必要 | 5〜20万円 |
| 高圧洗浄機のレンタル | 業務用冷水機(ケルヒャーHD 4/8 C)で1週間16,280円、30日31,240円(税込) | 1.6〜3.2万円 |
| 養生材 | マスカー、ブルーシート、養生テープ、飛散防止ネット | 2〜5万円 |
| 塗装道具 | ローラー、替えスリーブ、刷毛、バケット、皮スキ、ワイヤーブラシ、脚立 | 2〜5万円 |
| 安全用具 | フルハーネス型墜落制止用器具+ランヤードが税別1.6〜5万円。ヘルメット、手袋、保護メガネ | 2〜6万円 |
| 廃塗料・空き缶の処分 | 自治体で扱いが異なる。回収業者に依頼すると費用が発生 | 0〜3万円 |
| 合計 | — | 約28〜71万円 |
合計は約28〜71万円です。ここに、思わぬ出費が加わることがあります。塗料が足りずに追加購入する、ローラーのスリーブを何度も交換する、雨で養生をやり直す、といった場面です。
一方、業者に依頼した場合はどうでしょうか。当メディアでは、足場600〜1,500円/㎡、高圧洗浄100〜400円/㎡、養生100〜400円/㎡、ケレン200〜500円/㎡、シリコン塗料2,000〜3,500円/㎡、シーリング打ち替え900〜1,500円/mという単価を目安にしています。30坪でこれを積み上げると、諸経費を含めておおむね80〜130万円が一つの目安です。詳しい内訳は外壁塗装の費用内訳と外壁塗装30坪の費用で解説しています。
差額は数十万円です。決して小さくはありません。ただし、この差額が何と引き換えなのかを、次の章で数字にしてみます。
【独自試算】DIYで浮く金額を「時給」に換算するとどうなるか
DIYの是非は「いくら浮くか」ではなく「時間あたりいくらになるか」で考えると、判断しやすくなります。ここが他ではあまり触れられていない視点です。
まず、工程ごとの作業日数を見積もります。業者は職人2〜3人体制で7〜14日程度をかけます。これを未経験者が1人でこなす場合の実働日数を、1日8時間として概算しました。
| 工程 | 作業内容 | 1人でこなす場合の実働日数の目安 |
|---|---|---|
| 足場の設置・解体 | 搬入、組立、解体、返却 | 2〜4日 |
| 高圧洗浄 | 外壁全面の洗浄、乾燥待ち | 1〜2日 |
| 養生 | 窓、玄関、給湯器、植栽、隣地境界 | 2〜3日 |
| ケレン・下地処理 | 旧塗膜の処理、ひび割れ補修 | 3〜5日 |
| シーリング | 総延長150〜200mの撤去・打設・均し | 4〜6日 |
| 下塗り | シーラーまたはフィラーの塗布 | 3〜4日 |
| 中塗り | 上塗り材の1回目 | 4〜6日 |
| 上塗り | 上塗り材の2回目 | 4〜6日 |
| 片付け・廃材処理 | 養生撤去、道具洗浄、廃塗料の処分 | 1〜2日 |
| 合計 | — | 24〜38日(実働192〜304時間) |
実働で24〜38日。これは連続して晴天が続いた場合の数字です。実際には塗り重ね乾燥時間が必要で、カンペハピオの水性シリコン系塗料の場合、20℃で約3時間、冬期は約6時間とされています(モノタロウ)。雨天と乾燥待ちを挟むため、暦の上ではさらに延びます。
ここで時給を計算します。業者見積の目安80〜130万円の中間を約105万円、DIY実費28〜71万円の中間を約50万円とすると、差額はおよそ55万円です。これを実働192〜304時間で割ると、時給換算で約1,800〜2,900円になります。
この金額をどう見るかは人それぞれです。ただし、この「時給」には次のものが含まれていない点は押さえておきたいところです。
- 墜落・転落のリスク(労災保険の対象外)
- 仕上がりが不十分だった場合の塗り直し費用
- 塗り替え周期が短くなった場合の将来コスト
- 近隣への飛散が起きた場合の対応
- 保険・保証が付かないこと
さらに言えば、下地処理が不十分だと塗膜の密着が悪くなり、数年で剥がれることがあります。剥がれた塗膜を除去してから塗り直すとなれば、最初から業者に頼むより高くつく可能性があります。時給1,800〜2,900円という試算は、あくまで「一度で成功した場合」の上限だとお考えください。
DIYで安全にできる範囲と、避けるべき範囲
ここまでを踏まえて、具体的な線引きを示します。判断の軸は「高さ」と「反力のある道具を使うか」の2つです。
DIYの対象にしやすい部位
- 木製フェンス、ウッドデッキ、門扉、物置:地面に立ったまま作業でき、失敗しても影響が限定的です
- 雨戸、戸袋、シャッターボックス:外して平置きで塗れる場合は、作業性が大きく上がります
- 1階の腰高までの外壁の部分補修:チョーキングやごく浅いひび割れの補修
- 玄関まわりの木部:木部は塗り替え周期が短く、部分的な手入れの効果が出やすい部位です
これらに共通するのは、脚立に乗らずに済むこと、そして万一失敗しても建物の防水性能に直結しないことです。
避けるべき作業
- 2階以上の外壁の塗装:足場なしでは作業床も手すりも確保できません
- 屋根の塗装や点検:勾配のある面での作業は、建設のプロでも死亡災害が起きている領域です
- 脚立やはしごの上での高圧洗浄:反発力でバランスを崩す条件がそろいます
- 破風板、鼻隠し、軒天の高所部分:高さがあるうえ、上を向く姿勢で重心が後ろに移ります
- サイディング目地のシーリング全面打ち替え:カッターで既存材を切除する工程があり、防水層を傷めるおそれがあります
- 雨漏りが疑われる箇所の補修:原因の特定を誤ると、塗装で塞いで悪化させることがあります
とくにシーリングは、外壁の防水を担う重要な部位です。費用の考え方はコーキング打ち替えの費用の記事で整理しています。
お金以外に見落としやすい5つのリスク
DIYの検討では費用と安全に目が向きがちです。しかし実際にトラブルになりやすいのは、それ以外の部分です。5つ挙げます。
1. 残った塗料の処分は自治体で扱いが違います
塗料は、多くの自治体で通常の家庭ごみとして出せません。福岡市の分別案内では、塗料は「市で収集しないごみ」に分類されており、「販売店へご相談ください。少量の場合は、布や紙に染み込ませ、燃えるごみへ」と案内されています(福岡市「ごみと資源の分け方・出し方情報サイト」)。
扱いは自治体ごとに異なります。一般廃棄物として一定量まで受け入れるところもあれば、産業廃棄物扱いで回収業者への依頼が必要なところもあります。液体のまま排水口に流すのは論外です。作業を始める前に、お住まいの市区町村の分別ルールを確認しておいてください。
2. 近隣への飛散は賠償の問題になり得ます
塗料の飛散は、風の強い日に起こりやすい事故です。隣家の外壁や駐車中の自動車に付着すると、洗浄や再塗装の費用が発生します。
民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています(e-Gov法令検索「民法」)。業者であれば請負業者賠償責任保険で対応するのが一般的ですが、DIYの場合は自分で備える必要があります。
個人賠償責任保険や火災保険の特約で対応できる可能性はあります。ただし、DIY作業中の事故が補償対象になるかは契約内容によって異なります。当編集部が調べた範囲では、すべての契約に共通する統一的な取り扱いは確認できませんでした。加入中の保険会社に、事前に個別に確認することをおすすめします。
3. リフォーム瑕疵保険は使えません
リフォーム瑕疵保険は、工事に欠陥が見つかった場合に補修費用等の保険金が支払われる制度です。国土交通省の説明によれば、保険に加入するのは事業者で、保険法人への事業者登録が条件になります。加えて、第三者検査員(建築士)による現場検査が施工中と工事完了後に行われます(国土交通省「リフォーム瑕疵保険」)。
つまり、施主自身が施工するDIYは、この仕組みの外側にあります。第三者の検査も入りません。仕上がりが適切かどうかを判断してくれる人が、誰もいない状態になります。
4. 塗料メーカーや業者の保証も付きません
塗料メーカーの保証や施工店の自社保証は、所定の仕様どおりに施工されたことが前提です。下塗り材の指定、希釈率、塗り重ね乾燥時間、気温や湿度の条件が守られてはじめて成立します。
DIYでは、これらの条件を記録として残すことが難しくなります。数年後に不具合が出ても、原因が塗料なのか施工なのかを切り分けられません。
5. 「500万円未満なら許可不要」は安全とは別の話です
塗装工事は、税込500万円未満の工事であれば建設業の許可がなくても請け負えます(国土交通省「建設業の許可」)。この事実から「素人でも問題ない作業だ」と受け取る方がいますが、これは請負契約の話であって、作業の危険度とは無関係です。
むしろ、許可が不要だからこそ、業者選びでは実績や資格の確認が重要になります。詳しくは外壁塗装の業者の選び方で解説しています。
DIY以外に費用を抑える方法があります
費用を抑えたいという動機そのものは、まったく正当です。DIY以外にも、現実的な手段はいくつもあります。
- 複数社から見積もりを取り、内訳を比較する。「一式」表記の多い見積もりは内訳の説明を求める
- 外壁と屋根を同時に施工し、足場の費用を1回分にまとめる
- 自治体の助成金・補助金の有無を確認する。省エネ改修や住宅リフォームの枠で対象になる場合があります
- 塗料のグレードを見直す。耐用年数と単価のバランスで選ぶ
- 繁忙期を避け、業者の予定に余裕がある時期に相談する
足場を1回にまとめる考え方は、金額へのインパクトが大きい方法です。外壁と屋根の同時施工で詳しく整理しています。助成金については外壁塗装の助成金をご覧ください。
見積書の見方に不安がある場合は、国土交通大臣が指定した住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)が、見積書のセルフチェックの方法を公開しています(住まいるダイヤル「リフォームの基礎知識」)。中立の立場の情報ですので、目を通しておくと判断の助けになります。
なお、「無料点検」を名目にした訪問販売には注意が必要です。国民生活センターの集計では、点検商法に関する相談件数は2023年度の12,550件から2025年度の19,696件へと増えています。これは2026年5月31日時点の集計で、数値は未確定です(国民生活センター「点検商法」)。訪問販売による契約には、特定商取引法により8日間のクーリング・オフが適用されます(消費者庁「特定商取引法ガイド」)。
よくある質問
1階部分だけを自分で塗って、2階は業者に頼めますか
理屈のうえでは可能ですが、費用面のメリットはあまり期待できません。理由は足場です。2階を業者に頼む以上、足場は結局必要になります。足場が架かっているなら、1階も一緒に塗ってもらったほうが、単価も工程も効率的です。
また、施工箇所が分かれると、不具合が出たときの責任の切り分けが難しくなります。境目の部分で色や艶が揃わないことも起こり得ます。
足場を組まずに、はしごだけで2階を塗るのは無理ですか
おすすめできません。製品評価技術基盤機構は「はしごの上で作業しない」と明確に呼びかけています。はしごは昇降のための道具であり、作業のための道具ではないという考え方です。
加えて、はしごの上では片手がふさがります。ローラーとバケットの両方を扱うことができず、塗料を含ませる動作のたびに体勢を崩す危険があります。
DIYで塗ると、どのくらいで塗り替えが必要になりますか
一律の答えは出せません。塗料の耐用年数は、シリコン系で10〜15年、ウレタン系で7〜10年が一つの目安です。ただしこれは、下地処理と塗布量が適切であることが前提の数字です。
下地の汚れやチョーキングが残っていると密着が悪くなります。塗布量が不足すれば塗膜が薄くなります。DIYで実際に何年もつかという公的な統計は、当編集部が調べた範囲では確認できませんでした。塗料ごとの耐用年数は別の記事で整理しています。
DIY中にけがをしたら、どの保険で対応しますか
労災保険は使えません。労災保険の対象は賃金を受けて働く労働者であり、自宅を自分で塗る行為はこれに当たらないためです。
治療費は健康保険での対応が基本になります。休業補償に相当するものは、ご自身が加入する傷害保険や所得補償保険の契約次第です。どの範囲が補償されるかは契約ごとに異なりますので、作業前に保険会社へ確認してください。
余った塗料はどこに捨てればよいですか
お住まいの自治体のルールに従ってください。扱いは自治体で大きく異なります。福岡市の例では、塗料は市で収集しないごみとされ、販売店への相談が案内されています。少量であれば布や紙に染み込ませて燃えるごみへ、という運用です。
量が多い場合は、産業廃棄物として回収業者に依頼することになり、費用が発生します。購入前に必要量を計算し、余りを出さないことが最も確実な対策です。
まとめ
外壁塗装のDIYについて、公的な統計と実費の積み上げから整理しました。要点は次のとおりです。
- 令和7年の労働災害では、死亡者700人のうち墜落・転落が186人と事故の型別で最多でした。建設業は業種別で最多の214人です
- 一般家庭でも脚立・はしごからの転落は起きており、被害者の多くが中高年層です。発生場所は自宅が大半を占めます
- 持ち家のDIYは労災保険の対象外です。治療費も休業補償も労災からは出ません
- 労働安全衛生規則は、高さ2m以上の作業に囲いや手すりを求めています。足場は「落ちない」ためだけでなく「両手を使う」ためにも必要です
- 30坪のDIY実費は約28〜71万円。業者見積の目安80〜130万円との差額を実働時間で割ると、時給換算で約1,800〜2,900円という試算になります
- この試算には、事故のリスク、塗り直し費用、保証がないこと、近隣対応が含まれていません
- 塗料の処分、飛散による賠償、リフォーム瑕疵保険が使えないことも、事前に押さえておきたい点です
DIYを全面的に否定するつもりはありません。フェンスや雨戸、1階の手が届く範囲であれば、DIYは十分に現実的な選択です。作業そのものの楽しさもあります。
線引きの基準は「両足を地面につけたまま届く範囲か」。この一点です。脚立が必要になった時点で、作業の性質が変わったと考えてください。統計が示しているのは、その先が訓練を受けたプロでも落ちる領域だということです。
見積もりを取るときに使えるサービス
ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

