屋根の無料点検は怪しい?点検商法の見分け方と法律上の正しい対処法

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「近くで工事をしていたら、お宅の屋根がずれているのが見えました。無料で点検しますよ」。突然の訪問にこう言われて、応じてよいのか迷っていませんか。結論から言うと、無料の屋根点検には「正当なもの」と「点検商法」の両方が実在します。すべてが詐欺ではありませんが、突然訪問してきた業者に、その場で屋根に上らせるのは避けるべきです。国民生活センターに寄せられる点検商法の相談は年間約1万9千件規模で、屋根工事はその代表格です。この記事では、公的機関が公表している数値と法律の条文をもとに、怪しい点検と正当な点検の見分け方、断り方、契約してしまったときの対処を整理します。

目次

結論:無料の屋根点検は「全部が詐欺」ではないが、飛び込み訪問は危険度が高い

無料の屋根点検そのものは、違法でも珍しくもありません。屋根や外壁の工事は契約単価が大きいため、契約前の調査を無料でおこない、見積書とセットで提案する会社は数多くあります。工事を発注した会社からのアフターメンテナンス、火災保険の代理店経由の紹介、地元の工務店による定期訪問など、正当なルートの無料点検も確実に存在します。

一方で、「無料点検」を入り口にして不安をあおり、不要または過大な工事を高額で契約させる手口が「点検商法」として問題になっています。国民生活センターの国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」のページで公表されているPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)の集計を確認したところ、点検商法の相談件数は次のように推移していました。

年度点検商法の相談件数訪問販売によるリフォーム工事の相談件数
2023年度12,550件11,879件
2024年度19,249件9,839件
2025年度19,696件5,544件
2026年度(5月31日までの登録分)2,193件(前年同期2,012件)602件(前年同期680件)
出典:国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法(各種相談の件数や傾向)」2026年5月31日現在の集計。同センターは、消費生活センター等からの経由相談の一部が含まれておらず、件数は未確定である旨を注記しています。

点検商法の相談は2023年度から2024年度にかけて約1.5倍に増え、2025年度も19,696件と高止まりしています。一方で「訪問販売によるリフォーム工事」という分類の相談は減っており、相談内容の分類のされ方が変わっている可能性もあります。いずれにせよ、点検を入り口にしたトラブルが年間2万件近い規模で発生していること自体は、公的な集計から読み取れます。

つまり「無料点検=怪しい」と決めつける必要はありませんが、誰が、どういう経緯で、何のために来たのかで危険度がまったく違うということです。以下、その線引きを具体的に見ていきます。

点検商法とはどういう手口か(公的機関の定義と実際のトーク)

点検商法は、警察も消費者行政も名指しで注意喚起している類型です。警視庁は点検商法を「家庭を訪問して、あたかも正規の点検の振りをしながら断りきれない状態にしておいて、不必要又は法外な価格のリフォーム工事や商品交換、駆除作業等を行う契約を取る商法」と説明しています。ポイントは「正規の点検のふりをする」ことと「断りきれない状態にする」ことの2点です。

屋根で使われる典型的な勧誘トーク

国民生活センターは2023年10月11日に「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-」を公表しています。同資料や警視庁のページで紹介されている勧誘の言い回しには、次のようなパターンがあります。

  • 「近くで工事をしていて、お宅の瓦がずれているのが見えました」(近所で工事中という設定を使う)
  • 「このままだと台風が来たら雨漏りしますよ」(時間的な切迫感をつくる)
  • 「屋根が落ちてきて通行人にけがをさせたら大変ですよ」(他人への加害の不安をあおる)
  • 「火災保険を使えば自己負担なしで直せます」(保険金を持ち出して金銭的な抵抗感を消す)
  • 「今日契約してもらえれば足場代をサービスします」(その場で決めさせる)

これらの言い回しに共通するのは、「見えないものを見た人だけが知っている」という情報の非対称性を使って、判断の時間を奪うという構造です。屋根は住んでいる本人が自分の目で確かめにくい場所なので、この手口が成立しやすくなっています。逆に言えば、時間さえ確保できれば防げるということでもあります。

被害は高齢者に強く集中している

屋根工事の点検商法は、契約当事者の年齢が高いことが数字ではっきり出ています。国民生活センターの上記報道発表資料(2023年10月11日)から実際に確認できた内容は次のとおりです。

項目公表されている内容
屋根工事の点検商法の相談件数2018年度923件/2019年度1,157件/2020年度1,824件/2021年度2,352件/2022年度2,885件/2023年度は8月31日までで1,346件
契約当事者の年代(n=2,642)60歳代552件(21%)、70歳代847件(32%)、80歳代629件(24%)、90歳以上100件(4%)。資料は「契約当事者の8割超が60歳以上」と記載
契約購入金額(2022年度)100万円以上500万円未満が738件で最多、平均は約132万円
平均既支払額資料上では確認できませんでした
出典:国民生活センター 報道発表資料「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています」(2023年10月11日)

70歳代以上だけで全体の約6割(32%+24%+4%)を占めます。平均約132万円という金額は、屋根の部分的な補修としては明らかに高い水準です。参考までに、棟板金の交換であれば一般的にはもっと小さい工事で済むケースが多く、費用の目安は棟板金交換の費用の記事で相場の幅を整理しています。金額の感覚を先に持っておくだけでも、提示された見積書が妥当かどうかの判断材料になります。

【独自】勝負は「屋根に上らせるかどうか」で決まる

この記事でもっとも強調したいのは、点検商法への対処は「契約書にサインするかどうか」ではなく、その手前の「屋根に上らせるかどうか」で決まるということです。多くの解説記事は契約段階の断り方に力点を置いていますが、実務上は、屋根に上られた時点で交渉の主導権が相手に移ります。

上らせると何が起きるのか

理由は3つあります。第1に、屋根の上の状態は住人が確認できないため、業者が撮ってきた写真がそのまま「事実」になります。第2に、その写真が本当にあなたの家の屋根かどうかを、その場で検証する手段がありません。第3に、そして最も深刻な問題として、点検中に屋根を壊されたという相談が現に存在します。

警視庁の点検商法のページには、屋根の点検を装って上がった業者に「屋根を壊された上、その写真を見せられて、修理費用を請求された」という趣旨の事例が掲載されています。床下点検で「土台の木が腐っていて家が傾く」とうそを言われた事例も併記されています。ただし、「点検業者が屋根をわざと破損させた件数」を集計した公的な統計は、今回の調査では確認できませんでした。件数の規模は不明であり、「必ず壊される」ということではありません。しかし、警察が注意喚起の対象として事例を挙げている以上、可能性がゼロではないリスクとして扱うのが妥当です。

屋根に上らせる前に確認したい5項目

屋根に上ってもらう前に、次の5点を確認してください。すべて、正当な会社であれば数分で答えられる内容です。答えを渋る、はぐらかす、逆に急かしてくるようであれば、その時点で断って問題ありません。

確認項目具体的に聞くこと正当な会社の反応
1.身元会社名・所在地・建設業許可番号・担当者名を名刺と書面でその場で名刺を出し、許可番号も答える
2.来訪の目的「これは契約の勧誘が目的ですか」と直接聞く勧誘目的であることを明示する(法律上の義務)
3.上る承諾「屋根に上ってよいか」を口頭で確認したか上る前に必ず承諾を取る。無断で上らない
4.記録の残し方写真は日付入りか、どの部位かを説明できるか、報告書を紙で出すか撮影箇所を図面や写真で説明し、報告書を残す
5.契約のタイミング「今日は契約しません。見積書だけ置いていってください」と伝える受け入れて、後日の連絡に切り替える
出典:国民生活センター・警視庁の注意喚起内容および特定商取引法の規定をもとに編集部で整理

とくに3番目の「上る前に承諾を取るか」は、簡単なわりに効きます。あなたが庭にいる間に業者が勝手に脚立をかけて上りはじめるようなら、それは点検ではなく既成事実づくりです。また、5番目の「今日は契約しません」と最初に宣言する方法は、相手の想定シナリオを崩すので有効です。断り方の具体的な言い回しは外壁塗装の訪問販売の断り方で詳しく扱っています。

正当な無料点検と点検商法を見分けるチェックポイント

見分ける軸は「会社が実在して追跡可能か」「判断の時間をくれるか」「記録を残すか」の3つです。逆に、営業マンの人当たりや作業着の清潔さ、若さや礼儀正しさは判断材料になりません。悪質な事業者ほど第一印象は良好です。

会社の実在性を自分で確かめる方法

建設業の許可の有無は、無料で誰でも調べられます。国土交通省の国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」では、建設業許可業者の代表者名・所在地・電話番号などの企業情報を検索できます。同省の説明によれば、新規の許可取得や許可内容の変更が反映されるまでには1カ月程度かかるとされています。

ただし注意点があります。国土交通省「建設業の許可」によれば、建設業許可が不要な「軽微な建設工事」は、建築一式工事以外では請負代金が消費税込みで500万円未満の工事とされています。つまり、100万円程度の屋根の部分補修であれば、建設業許可がなくても法律上は施工できます。許可がないこと自体は違法ではありません。許可があれば「一定の資格者を置き、財産的基礎を満たし、5年ごとに更新している会社」という裏付けになる、という読み方をしてください。許可の有効期間は5年間です。

許可がない会社の場合は、代わりに次のような点を確認します。

  • 会社の所在地が実在するか(地図サービスで住所を検索し、事務所や倉庫の実体があるか見る)
  • 固定電話の番号があるか(携帯番号だけ、という場合は追跡が難しくなる)
  • 法人であれば国税庁の法人番号公表サイトで商号と所在地が一致するか
  • 自社サイトに施工実績と会社概要(設立年・代表者名)が載っているか
  • リフォーム瑕疵保険の登録事業者かどうか

比較表:正当な無料点検と点検商法の違い

比較の観点正当な無料点検に多い点検商法に多い
接点のつくり方自分から問い合わせた/過去に施工した会社/保険代理店や知人の紹介突然の訪問。「近くで工事をしていて」が定番
身元の示し方名刺・パンフレット・建設業許可番号を最初に出す会社名があいまい。名刺を出さない、社名だけで所在地が不明
目的の告げ方点検後に見積提案をしたい旨を先に伝える「点検だけ」と言って上がり、その場で契約書を出す
屋根への上り方上る前に承諾を取り、必要なら立ち会いを促す承諾なく上る。立ち会いを断る
診断結果の示し方写真付きの報告書を紙またはデータで残す。劣化の程度と緊急性を分けて説明スマホの画面を見せるだけ。報告書を残さない
契約の迫り方持ち帰りと相見積もりをすすめる「今日中」「今なら」「足場代サービス」で即決を迫る
金額の出し方数量と単価に分けた内訳のある見積書「屋根工事一式」など一式表記が中心
保険の扱い保険の適用可否は保険会社に確認するよう案内「保険で自己負担ゼロ」と請求方法まで主導する
出典:国民生活センター、警視庁、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの公表資料をもとに編集部で整理

「一式」だらけの見積書は、金額の妥当性を検証できないという意味で危険です。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)は住まいるダイヤル「リフォームの基礎知識」で見積書のセルフチェックポイントを公開しており、複数の事業者から見積もりを取ること、数量が正確に積算されているかを確認することなどを挙げています。より広い悪質業者の見分け方は悪徳業者の見分け方にまとめています。

「火災保険で自己負担ゼロ」と言われたときの注意点

無料点検と火災保険をセットにした勧誘は、点検商法のなかでも特に相談が多いパターンです。ここは慎重に扱ってください。

一般社団法人日本損害保険協会の日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」によれば、住宅修理に保険金が使えると勧誘されたことに関する相談は、2010年度から2020年8月時点までの累計で11,261件に達しています。同協会が挙げている事例には、「工事をしなかった場合は保険金の4割を支払え」と請求されたケースや、「完全成功報酬型で保険金の30%を報酬として請求する」と説明され、受け取った保険金100万円に対して修理費が足りなくなったケースが含まれます。

国民生活センターも2021年9月2日に「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!」を公表しています。同資料で確認できた年度別の相談件数は、2018年度1,759件、2019年度2,691件、2020年度5,447件、2021年度は集計時点までで1,465件でした。手数料の事例として「修理代を上回る保険金が受け取れる。手数料は40%だが損はない」といった説明が紹介されています。同資料は、うその理由で保険金を請求することについて「刑事罰(詐欺罪)に問われるおそれもあります」と明記しています。

押さえるべき原則は次のとおりです。

  • 保険金の請求は加入者本人がおこなうのが基本。まず契約している損害保険会社または代理店に連絡する
  • 経年劣化による損傷は火災保険(風災補償等)の対象外。「劣化を台風被害ということにしましょう」という提案は不正請求にあたるおそれがある
  • 成功報酬型の手数料は保険金の30〜40%という事例が公表されている。手数料を差し引くと修理費に足りなくなる可能性がある
  • 「工事をキャンセルするなら違約金」という契約条項がないか、契約前に必ず読む

なお、金融庁が「火災保険申請サポート業者」について個別に注意喚起を出しているかどうかは、今回の調査では確認できませんでした。確認できたのは、日本損害保険協会と国民生活センターによる注意喚起です。火災保険が実際に使えるケースと使えないケースの線引きは、屋根修理と火災保険の適用条件で整理しています。台風や強風で棟板金が飛んだといった「自然災害による突発的な損傷」であれば正当に請求できる可能性があり、保険の利用自体が悪いわけではありません。問題は、業者が主導して事実と異なる申請をさせることです。

法律で決まっていること:訪問販売の義務とクーリング・オフ

訪問してきた業者と自宅で契約した場合、特定商取引法の「訪問販売」に該当します。この法律は、事業者に義務を課し、消費者に契約を解除する権利を与えています。知っておくだけで、その場での対応が変わります。

事業者に課されている義務と禁止行為

消費者庁が公開している消費者庁「特定商取引に関する法律・解説(第2節 訪問販売)」の条文を確認したところ、主な内容は次のとおりでした。

条文内容玄関先での意味
第3条(氏名等の明示)勧誘に先立ち、事業者の氏名または名称、契約の締結について勧誘をする目的である旨、勧誘に係る商品・役務の種類を明らかにしなければならない「点検だけです」と言って勧誘するのは義務違反にあたりうる
第3条の2(再勧誘の禁止)勧誘を受ける意思があるか確認するよう努めなければならない。契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、勧誘をしてはならない一度「いりません」と言えば、それ以上の勧誘は禁止される
第4条・第5条(書面交付)申込みや契約の際、法定の事項を記載した書面を交付しなければならない書面を渡さない業者は法律を守っていない
第6条(禁止行為)重要事項について不実のことを告げる行為、故意に事実を告げない行為、人を威迫して困惑させる行為を禁止「壊れています」といううその指摘、居座りは禁止行為
第9条(クーリング・オフ)法定書面を受領した日から起算して8日を経過する日までは、書面または電磁的記録により申込みの撤回・契約の解除ができる受け取った日を1日目として8日間
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「特定商取引に関する法律・解説」(第2節 訪問販売)

工事が終わっていてもクーリング・オフはできる

ここが最も重要な点です。同じ条文には、クーリング・オフがあった場合について次の趣旨が定められています。

  • 事業者は、申込みの撤回や契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払いを請求することができない
  • 役務の提供にともなって土地や建物その他の工作物の現状が変更されたときは、消費者は事業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求できる

つまり、屋根に手をつけられたあとでも、8日以内であればクーリング・オフができ、業者の費用負担で元に戻すよう求められます。「もう工事を始めてしまったのでキャンセルできません」「解約するなら違約金です」という説明は、法律上は通らない可能性が高いということです。

さらに、愛知県弁護士会の愛知県弁護士会「クーリング・オフについて」の解説によれば、期間は「契約書面を受け取った日から8日間」で、受け取った日も日数に含まれます。契約書面を受け取っていない場合や、受け取っていても法律の定める事項に記載漏れがある場合には、8日を過ぎていてもクーリング・オフができる可能性があるとされています。「もう8日過ぎたから無理だ」と自己判断せず、まず消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。

2025年に特定商取引法の改正はあったのか

調べた範囲では、2025年(令和7年)に、訪問販売のクーリング・オフ期間や勧誘規制そのものを変更する特定商取引法の改正は確認できませんでした。2025年3月に消費者庁が示した特定商取引法施行令の改正資料は、商工中金法に新設される金融ADR制度(指定紛争解決機関)を適用除外に加える内容で、リフォームや住宅修理の訪問販売に直接関係するものではありませんでした。

また、消費者庁では「デジタル取引・特定商取引法等検討会」が継続して開催されており、SNSやチャットを使った勧誘など、不意打ち性の高い広告・勧誘への規制が議論されています。ただしこれは検討段階であり、2026年9月時点で訪問販売の8日間のクーリング・オフというルール自体は変わっていません。玄関先で「法律が変わって解約できなくなった」と言われても、それを信じる根拠は今のところありません。

自分でできる屋根の確認と、点検の正しい頼み方

屋根に自分で上ってはいけない理由

「業者に上らせたくないなら自分で見ればいい」と考えるかもしれませんが、屋根に自分で上るのは絶対にやめてください。屋根点検を自分でやろうとした結果の転落事故は、実際に統計に出ています。

国民生活センターが2019年3月28日に公表した「思わぬ大けがに!高齢者の脚立・はしごからの転落」では、医療機関ネットワークに寄せられた脚立・はしごが関係する事故が458件(2010年12月以降2019年2月末までの伝送分、受傷者20歳以上)確認されています。同資料によれば、60〜70歳代が236件で全体の54.5%、65歳以上が239件(55.2%)、75歳以上が118件(27.3%)を占め、入院を必要とする事故が206件(47.6%)、うち35件(転落事故全体の8.1%)が生命に危険が及ぶような重症・重篤な危害でした。事故が起きた作業としては庭木の剪定・収穫に次いで、屋根・軒先での作業が多く挙げられています。

製品評価技術基盤機構(NITE)もNITE「はしご・脚立の誤使用は大ケガにつながります」(2022年9月16日)で、2017年度から2021年度の5年間に162件の事故情報を収集し、被害者の約4割が60歳代以上であること、他の製品と比べて重傷・死亡率が高いことを公表しています。

地上から屋根の状態を見る4つの方法

上らなくても、屋根の異常のサインはある程度つかめます。次の方法は費用がほとんどかかりません。

  • 双眼鏡で見る:道路の向かいや庭の端など、家から離れた位置から屋根面を見上げます。倍率8倍程度あれば、瓦のずれ、棟の歪み、スレートの割れ、板金のめくれは十分わかります
  • スマートフォンでズーム撮影する:望遠で撮ってあとから拡大すると、目視より細部が見えます。撮影日をそろえて年1回残しておくと、劣化の進み方を比較できます
  • 2階の窓やベランダから見る:下屋(1階部分の屋根)や雨どい、外壁との取り合い部分は、上階の窓から観察できます。身を乗り出さないでください
  • 室内と外周を見る:天井のシミ、屋根裏の湿気やカビ臭、外壁の雨だれ跡、雨どいからの水あふれ、地面に落ちている屋根材の破片やコケは、屋根の異常を示す間接的なサインです

雨漏りがすでに起きている場合は、放置すると下地の木材まで傷み、修理範囲と費用が広がります。症状別の費用の目安は雨漏り修理の費用で確認できます。地面に屋根材の破片が落ちている、天井にシミがある、という段階であれば、訪問業者を待つのではなく、自分から会社を選んで調査を依頼するほうが安全です。

点検が必要だと感じたら、どこに頼めばよいか

結論としては、自分から連絡先を選んで依頼するのが最も安全です。優先順位は次のとおりです。

  • 1.新築時の施工会社、または過去に屋根工事をした会社(履歴と図面を持っている)
  • 2.地元で長く営業している屋根工事・板金の専門会社(所在地が確認でき、施工実績がある)
  • 3.リフォーム瑕疵保険の登録事業者(保険法人の登録事業者検索で調べられる)
  • 4.判断に迷う場合は、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」(電話0570-016-100、平日10時〜17時)に相談する。国土交通大臣から指定を受けた住宅専門の相談窓口です

そのうえで、必ず複数社から見積もりを取ってください。1社だけでは、提示された金額や工事内容が妥当かどうかを判断できません。会社を選ぶ際の具体的な基準は屋根修理の業者の選び方にまとめています。

なお、「他社の見積もりを見せてください」と言ってきた業者に、そのまま金額を見せるのは避けたほうが無難です。わずかに安い金額を出して受注し、着工後に追加請求をするという流れをつくられる可能性があります。金額ではなく、工事内容と数量が同じ条件で比較できているかを見るようにしてください。

よくある質問

Q1.無料点検を頼んだら、あとで点検料を請求されることはありますか

正当な会社であれば、無料と説明した点検に対して料金を請求することはありません。ただし、「点検は無料だが、屋根に上るための足場代は別」「調査報告書の作成費は別」といった条件が付いているケースはあります。トラブルを避けるため、依頼する前に「費用が発生する場合はどのタイミングで、いくらか」を確認し、可能であればメールなど文字で残る形でやりとりしてください。もし事前説明のない費用を請求されたら、支払う前に消費者ホットライン188に相談してください。

Q2.業者が撮ってきた屋根の写真が本物か、どうすれば確かめられますか

完全に確かめる方法はありませんが、確度を上げる手はあります。ひとつは、屋根全体の引きの写真と、損傷部分の寄りの写真の両方を求めることです。引きの写真に自宅の特徴(アンテナ、太陽光パネル、隣家の位置関係、下屋の形状)が写っていれば、自分の家であることを照合できます。もうひとつは、撮影日時のデータが残った状態で画像をもらうことです。あわせて、地上から双眼鏡やスマートフォンのズームで、指摘された箇所が実際に見えるかを確認してください。求めに応じない、または画面を見せるだけで渡さないという対応であれば、その業者との契約は見送ったほうが安全です。

Q3.すでに契約書にサインしてしまいました。どうすればよいですか

訪問販売にあたる契約であれば、法定書面を受け取った日から起算して8日以内は、書面または電磁的記録でクーリング・オフができます。工事が始まっていても、終わっていても可能で、業者は違約金や損害賠償を請求できません。屋根に手が加えられている場合は、無償での原状回復も請求できます。通知はハガキなどを特定記録郵便や簡易書留で送り、両面のコピーを控えとして保管してください。8日を過ぎている場合でも、契約書面がない、記載事項に漏れがある、うその説明を受けたといった事情があれば解除できる可能性があります。まず消費者ホットライン188に電話し、契約書・見積書・受け取った書類一式を手元に用意して相談してください。

Q4.点検中に屋根を壊されたかもしれません。どう対応すればよいですか

まず、その場で追加の工事契約をしないでください。そのうえで、日時・業者名・担当者名・作業内容をメモに残し、業者が撮影した写真の提供を求めます。次に、その業者とは無関係の別の屋根工事会社に調査を依頼し、損傷の状態と原因について第三者の所見をもらってください。故意の破損が疑われる場合は警視庁や各都道府県警の相談窓口(警察相談専用電話#9110)に相談できます。ただし、点検業者による屋根の故意破損の件数を集計した公的な統計は今回確認できませんでした。破損の原因が故意か、経年劣化か、作業上の過失かの判断には専門的な調査が必要になります。

Q5.訪問された業者に建設業許可がありませんでした。それだけで断るべきですか

許可がないこと自体は違法ではありません。国土交通省の説明では、建築一式工事以外の工事は請負代金が消費税込みで500万円未満であれば建設業許可がなくても請け負えます。屋根の部分補修はこの範囲に収まることが多く、許可を持たない専門会社も存在します。判断すべきは許可の有無だけではなく、所在地が実在するか、固定電話があるか、施工実績を示せるか、その場で契約を迫らないか、内訳のある見積書を出すかといった複数の要素です。ただし、突然の訪問で、許可もなく、所在地もあいまいで、即決を迫ってくるという条件が重なるようであれば、契約は見送ることをおすすめします。

まとめ

無料の屋根点検は、それ自体が詐欺というわけではありません。施工した会社によるアフター点検や、自分から依頼した調査など、正当な無料点検は数多くあります。問題は「突然の訪問」「不安をあおる説明」「その場での契約」という組み合わせです。この記事で確認できた要点を整理します。

  • 点検商法に関する相談は、国民生活センターのPIO-NET集計で2025年度19,696件(2026年5月31日現在の集計、件数は未確定)。2023年度の12,550件から増加している
  • 屋根工事の点検商法は2018年度923件から2022年度2,885件へ増加。契約当事者の8割超が60歳以上、2022年度の平均契約購入金額は約132万円(国民生活センター2023年10月11日公表)
  • 警視庁は、屋根点検で「屋根を壊された上、その写真を見せられて修理費用を請求された」事例を紹介している。ただし故意破損の件数を集計した公的な統計は確認できなかった
  • 勝負どころは契約時ではなく「屋根に上らせるかどうか」。上る前に、身元・目的・承諾・記録・契約タイミングの5点を確認する
  • 「火災保険で自己負担ゼロ」は要注意。手数料30〜40%の事例が公表されており、うその理由での請求は詐欺罪に問われるおそれがある
  • 訪問販売には特定商取引法が適用され、氏名等の明示、再勧誘の禁止、書面交付、不実告知の禁止が事業者に課される。クーリング・オフは法定書面受領日から起算して8日間で、工事後でも無償の原状回復を請求できる
  • 2025年に訪問販売のクーリング・オフ期間等を変更する特定商取引法の改正は確認できなかった
  • 自分で屋根に上らない。地上からの双眼鏡・スマートフォンのズーム・2階の窓・室内のシミの確認で十分に兆候はつかめる

玄関先で覚えておく言葉は一つで足ります。「今日は決めません。会社名と連絡先を書いた見積書を置いていってください」。この一言を言えるかどうかで、結果が大きく変わります。判断に迷ったときは、契約する前に消費者ホットライン188か住まいるダイヤルへ相談してください。

見積もりを取るときに使えるサービス

ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

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この記事を書いた人

リフォーム編集部のアバター リフォーム編集部 株式会社スゴヨク|編集部

「リフォーム」編集部です。運営は株式会社スゴヨク(福岡市中央区/Webサイト制作・Webマーケティング)。外壁塗装・屋根工事・外構リフォームの費用や業者選びを、国土交通省・国民生活センター・住宅リフォーム推進協議会などの一次情報にあたって解説しています。金額や制度には必ず出典を明記し、確認できなかったことは「未確認」と書く方針です。当サイトは施工を行っておらず、特定の業者への送客を目的としない立場で編集しています。

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