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訪問販売でリフォーム契約を結んでしまい、いま解約したいと考えている方へ。結論から言うと、法定の契約書面を受け取った日を1日目として数えて8日以内に、書面または電磁的記録で「契約を解除する」と通知すれば、原則として違約金や損害賠償を負担せずに契約をなかったことにできます。工事が始まっていても、代金を払ってしまっていても、すぐにあきらめる必要はありません。この記事では特定商取引法の条文と、消費者庁・国民生活センターの案内をもとに、通知の書き方から8日を過ぎた場合の手立てまでを順番に整理します。
なお本記事は、一般的な制度のしくみを解説するものです。個別の契約が制度の対象になるかどうかは、契約書の記載や勧誘の経緯によって判断が変わります。ご自身のケースの最終的な判断については、お住まいの地域の消費生活センター等にご相談ください。
リフォームのクーリングオフは「書面を受け取った日から8日以内」に通知する
訪問販売で結んだリフォーム契約は、特定商取引に関する法律(特商法)第9条にもとづき、一定期間内であれば無条件で申込みの撤回や契約の解除ができます。これがクーリング・オフ制度です。期間は8日間で、起算日は「法定の書面を受け取った日」です。
まず、制度の骨格を一覧で確認しておきます。急いでいる方は、この表の内容だけを押さえてすぐ通知の作成に進んでも構いません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠となる法律 | 特定商取引に関する法律 第9条(訪問販売における契約の申込みの撤回等) |
| 期間 | 8日間 |
| 起算日 | 法定の契約書面(申込書面を先に受け取った場合はその書面)を受け取った日。受け取った日を1日目として数える |
| 通知の方法 | 書面、または電磁的記録(電子メール、事業者の専用フォーム、記録媒体など) |
| 効力が生じる時点 | 通知を発した時点(同条第2項)。相手に届いた日ではなく、出した日で判断される |
| 違約金・損害賠償 | 事業者は請求できない(同条第3項) |
| 支払い済みの代金 | 事業者は速やかに返還する義務がある(同条第6項) |
| 工事が進んでいた場合 | 原状回復に必要な措置を無償で講じるよう請求できる(同条第7項) |
| 不利な特約 | 消費者に不利な特約は無効(同条第8項) |
ここで重要なのは、クーリング・オフに理由がいらないという点です。「よく考えたら高かった」「家族に反対された」でも構いません。事業者の同意も必要ありません。消費者が一方的に通知を出すだけで効力が生じる、強い権利として設計されています。
やることは3つだけ
手続き自体は複雑ではありません。切迫している方のために、最短の流れを先に示します。
- 契約書面を探し、受け取った日付を確認する(8日以内かを判定する)
- はがきなどの書面に必要事項を書き、両面をコピーしてから郵便局の窓口で特定記録郵便または簡易書留で出す
- クレジット契約(ローン)を組んでいる場合は、信販会社にも同じ内容の通知を同時に出す
8日目が迫っている場合は、細かい判断を後回しにして、まず通知を出してしまうという考え方もあります。通知を出したこと自体で不利益を受けることは、制度上想定されていないためです。ただし出すかどうか迷う要素がある場合は、消費者ホットライン188に電話しながら書くのが確実です。
リフォームの訪問販売トラブルは増えている
「自分だけがだまされたのでは」と落ち込む必要はありません。国民生活センターがまとめている全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)の集計では、住宅の点検をきっかけとした訪問販売の相談は増加傾向にあります。
同センターの公表では、点検商法に関する相談件数は2023年度の12,550件から2025年度の19,696件へと増えています。この数値は2026年5月31日時点の集計であり、未確定の速報値である点には注意が必要です。それでも、外壁や屋根の点検を切り口にした勧誘が広く行われている実態はうかがえます。
関連する手口の全体像はリフォーム詐欺の手口や屋根修理の訪問販売詐欺でも整理しています。あわせて読むと、自分の契約がどのパターンだったのかを整理しやすくなります。
最初に確かめる3つのこと:自分の契約は対象になるか
結論として、確認すべきは「どこで契約したか」「書面をいつ受け取ったか」「対象外の類型に当たらないか」の3点です。この3つが揃えば、8日以内かどうかの判定はほぼ機械的に行えます。
1. 契約はどこで、どのように結んだか
特商法の訪問販売とは、営業所等以外の場所で申込みを受け、または契約を締結する取引を指します。自宅の玄関先やリビングで契約書にサインした場合は、典型的な訪問販売です。工事現場で言われるまま署名した場合も同様に考えられます。
また、路上で声をかけられて営業所に連れて行かれた場合(キャッチセールス)や、電話やはがきで「当選しました」などと呼び出されて営業所で契約した場合(アポイントメントセールス)も、訪問販売として扱われます。東京都の消費生活総合サイトでも、キャッチセールスやアポイントメントセールスは訪問販売に含まれると案内されています。
2008年の法改正以降、特商法の訪問販売は原則としてすべての商品・役務が対象とされています。外壁塗装、屋根の葺き替え、シロアリ防除、給湯器交換、太陽光発電の設置なども、訪問販売で契約すれば制度の対象に入ります。
2. 法定書面をいつ受け取ったか
ここが最もつまずきやすいポイントです。起算日は「契約した日」ではなく「法定の書面を受け取った日」です。特商法第9条第1項は、第5条第1項または第2項の書面を受領した日(それより前に第4条第1項の申込書面を受領していればその日)から起算して8日、と定めています。
そして「起算して8日」なので、受け取った日を1日目として数えます。東京都の案内でも「契約書面を受け取った日を含め8日間以内に通知(発信)しなければなりません」と説明されています。翌日から数える方式ではないため、1日分ずれると期限を誤ります。
| 契約書面を受け取った日 | 1日目 | 8日目(期限) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 4月1日 | 4月1日 | 4月8日 | 4月8日中に通知を発信すれば有効 |
| 4月10日 | 4月10日 | 4月17日 | 土日祝を含めて数える |
| 4月28日 | 4月28日 | 5月5日 | 連休をまたいでも数え方は同じ |
| 契約日と書面交付日が違う場合 | 書面を受け取った日 | その7日後 | 契約日ではなく書面受領日が基準 |
期限の日が土日祝日に当たる場合の扱いについては、郵便局の窓口が閉まっていると特定記録郵便で出せません。窓口が開いている日を逆算して動くのが安全です。判断に迷う場合は、期限前に消費生活センターへ相談することをおすすめします。
3. 対象外になる代表的なケース
クーリング・オフには適用除外があります。リフォーム契約で関係しやすいものを整理します。
| ケース | 扱い | 補足 |
|---|---|---|
| 自分から店舗(営業所)に出向いて契約した | 原則対象外 | じっくり検討できる状況とみなされるため |
| ネットやカタログを見て申し込んだ(通信販売) | 制度の対象外 | 通信販売にはクーリング・オフの規定がない。事業者が定める返品特約による |
| 営業・事業のために契約した | 原則対象外 | 特商法第26条第1項第1号 |
| 代金3,000円未満の現金取引 | 対象外 | 東京くらしWEBの案内による |
| 乗用自動車の販売など政令で除外された取引 | 対象外 | リフォームでは通常問題にならない |
| 期間(8日)を過ぎた | 原則対象外 | ただし後述の例外あり |
ここで注意したいのが、「対象外」と自己判断してしまうことです。特に次の項目で説明する「自分から呼んだ場合」は、業者が対象外だと主張してくることが多い一方で、実際には解釈が分かれる論点です。
「自分から業者を呼んだ」ケースはどう扱われるのか
結論として、自分から電話して呼んだ場合でも、必ずしもクーリング・オフの対象外になるとは限りません。消費者庁の解釈では、適用除外となる「請求」の範囲はかなり限定的に読まれています。
条文が定める「請求訪問販売」の適用除外
特商法第26条第6項第1号は、「その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者」に対して行う訪問販売について、クーリング・オフを含む規定の適用を除外しています。いわゆる請求訪問販売です。
ただし消費者庁の特定商取引法ガイドに掲載されているQ&Aでは、この「請求した者」とは、購入者があらかじめ契約の申込みや締結をする意思を持っており、自宅でその契約を行いたい旨を明確に意思表示した場合に限られる、という解釈が示されています。
つまり「◯◯を買うので来てください」と、契約の中身まで明確にして呼んだ場合が想定されています。単に来訪を求めただけでは、この除外に当たらない可能性があります。
「点検を頼んだだけ」はどう考えるか
リフォームで多いのが、「無料点検のチラシを見て電話し、屋根に上ってもらったら、その場で高額な工事契約を勧められた」というパターンです。この場合、消費者が請求したのは点検であって、工事契約の申込みではありません。
同じQ&Aでは、鍵の修理を例に、広告に表示された金額と実際の請求額に相当な開きがある場合、消費者は当初の依頼段階では低額での契約意思しか持っておらず、高額での契約意思を有していなかったことは明らかだ、という考え方が示されています。この整理は、点検を依頼しただけで高額な工事を契約させられたケースを考えるうえで参考になります。
また同Q&Aでは、外出先で依頼したロードサービスの事例について、「その住居において」という要件を満たさないため適用除外に当たらない、という説明もされています。条文の文言が細かく効いてくる領域です。
したがって、業者から「お客様が呼んだのだからクーリングオフはできません」と言われても、それが法的に確定した結論とは限りません。呼んだ経緯、依頼した内容、当初想定していた金額を書き出したうえで、消費生活センターに相談する価値があります。ここは個別事情で判断が分かれるため、断定的な自己判断は避けてください。
経緯を残しておく
相談の質を上げるために、次の情報を思い出せる範囲でメモにしておくと役立ちます。
- 最初の接点(チラシ、飛び込み訪問、電話、紹介など)と、その日付
- 自分から連絡した場合、そのとき依頼した内容(点検だけか、見積りまでか、工事までか)
- 訪問された日時と、滞在した時間の長さ
- 「このままでは雨漏りする」など、不安をあおる説明があったか
- 契約書にサインした場所と時刻、書面を受け取った日
- 撮影された屋根の写真を見せられたか、それが自宅のものだと確認できたか
訪問販売そのものへの対処法は外壁塗装の訪問販売の断り方で、契約前に見抜くポイントは悪徳業者の見分け方で解説しています。次に同じ勧誘を受けたときの備えとして目を通しておくとよいでしょう。
クーリングオフのやり方:通知書の書き方と出し方
結論として、はがきに必要事項を書き、両面をコピーしてから郵便局の窓口で特定記録郵便または簡易書留で出す、という流れが基本形です。経済産業省北海道経済産業局や名古屋市消費生活センターの案内も、この方法を推奨しています。
手順1:通知書に書く項目
形式に決まった様式はありません。必要な情報が読み取れれば有効です。書くべき項目を表にまとめます。
| 記載項目 | 書き方の例 | 補足 |
|---|---|---|
| 表題 | 契約解除通知書 | 「通知書」でも構わない |
| 契約年月日 | 令和◯年◯月◯日 | 契約書に記載された日付と揃える |
| 商品名・役務名 | 外壁塗装工事一式 | 契約書の記載どおりに書く |
| 契約金額 | 金1,500,000円 | 税込総額を書く |
| 販売会社名 | 株式会社◯◯ | 契約書の事業者名を正確に |
| 担当者名 | ◯◯◯◯ | 分からなければ「ご担当者様」 |
| 解除する旨 | 上記契約を解除します | 撤回・解除の意思が明確に読めることが重要 |
| 支払済み代金の返還 | 支払済みの代金◯◯円を返金してください | 支払いがある場合のみ |
| 通知の日付 | 令和◯年◯月◯日 | 実際に投函する日 |
| 自分の住所・氏名 | ◯◯県◯◯市…/◯◯◯◯ | 契約者本人の名義で書く |
文章としては、「令和◯年◯月◯日に貴社と締結した外壁塗装工事一式(契約金額1,500,000円)について、契約を解除します」といった一文があれば足ります。理由を書く必要はありません。感情的な非難を書き添える必要もありません。
手順2:コピーを取ってから、記録の残る方法で出す
ここが実務上いちばん大事な部分です。クーリング・オフは通知を発した時に効力が生じます(特商法第9条第2項)。したがって「期限内に出した」ことを自分で証明できる形にしておく必要があります。
- 投函前に、はがきの表と裏の両面をコピーまたは撮影する
- ポストに入れず、郵便局の窓口へ持ち込む
- 特定記録郵便または簡易書留を選ぶ
- 窓口で渡される受領証(書留・特定記録郵便物等受領証)を、コピーと一緒に保管する
特定記録は差し出した記録と配達の記録が残る方法で、簡易書留は引受けと配達の記録が残り、万一の場合に賠償もあります。どちらを選ぶかは費用と安心感の兼ね合いです。名古屋市の案内でも、両面コピーと受領証をあわせて保管するよう説明されています。
より確実性を重視する場合は、内容証明郵便という選択肢もあります。いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を出したかを郵便局が証明する制度です。金額が大きい契約や、事業者と争いになりそうな場合には検討する価値があります。ただし費用と手間はかかります。
手順3:クレジット契約があれば信販会社にも同時に出す
リフォーム工事はローンを組むケースが多く、ここを忘れると請求が止まりません。工事代金を分割払いにしている場合、多くは個別信用購入あっせん(個別クレジット)という契約になっています。
割賦販売法第35条の3の10は、訪問販売等で個別クレジット契約を結んだ場合について、書面等により申込みの撤回や解除ができることを定めています。期間は同じく書面受領日から起算して8日で、効力は書面を発した時に生じます。また業者が受領している金銭は速やかに返還しなければならないとされています。
経済産業省北海道経済産業局の案内でも、支払方法がクレジットの場合は信販会社にも必ず同時に同様の通知をするよう明記されています。信販会社宛の通知には、販売会社名や連絡先も書き添えると処理が早くなります。
メールなど電磁的記録で通知する場合
2022年6月15日から、電磁的記録によるクーリング・オフが可能になりました。経済産業省北海道経済産業局の告知によれば、電子メールのほか、USBメモリ等の記録媒体や、事業者が自社サイトに設ける専用フォームによる通知が認められています。
消費者庁が公表している「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」では、事業者は合理的に可能な範囲で複数の電磁的方法に対応する必要があり、契約締結に使った連絡手段での受付を一方的に拒む取扱いは、消費者に不利な特約として無効になり得るという整理が示されています。
ただし、実務上は次の点に注意してください。
- 送信したメールは削除せず保存し、送信画面のスクリーンショットも残す
- 宛先のメールアドレスは、契約書面に記載されたものを使う
- 迷惑メール扱いや受信拒否のリスクがあるため、書面(はがき)と併用すると安心
- 電話や口頭だけで済ませない。記録が残らず、後で「聞いていない」と言われる恐れがある
編集部としては、期限が迫っている状況では、まずメールを送り、同日または翌営業日に特定記録郵便でも同じ内容を出す二重の方法をおすすめします。どちらも発信主義なので、先に出したほうの日付で効力を主張できる可能性があります。
工事が始まった・お金を払った後でもクーリングオフはできる
結論として、期間内であれば、着工していても支払い済みでもクーリング・オフはできます。むしろ特商法は、そうした状況で消費者が不利にならないよう、細かく手当てをしています。
条文が定めている効果
特商法第9条は、クーリング・オフがあった場合の処理を次のように定めています。
- 第3項:事業者は損害賠償や違約金の支払を請求することができない
- 第4項:商品が引き渡されている場合、その引取り費用は事業者の負担
- 第5項:すでに役務が提供されていても、事業者は役務の対価その他の金銭の支払を請求できない
- 第6項:事業者が金銭を受領しているときは、速やかに返還しなければならない
- 第7項:役務の提供に伴い土地や建物その他の工作物の現状が変更されたときは、原状回復に必要な措置を無償で講じることを請求できる
- 第8項:これらに反する消費者に不利な特約は無効
第7項は、リフォームでとりわけ重要な規定です。足場が組まれた、高圧洗浄が済んだ、下塗りまで終わった。こうした状態でも、原状回復に必要な措置を無償で求められるという建て付けになっています。
状況別の考え方
| 状況 | 原則的な扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約したが何も始まっていない | 通知だけで契約は消滅する | 特商法第9条第1項 |
| 足場が組まれた | 撤去などの原状回復を無償で請求できる | 同第7項 |
| 洗浄・下塗りまで進んだ | 施工分の対価を請求されない。原状回復も請求できる | 同第5項・第7項 |
| 手付金・着手金を払った | 速やかに返還を受けられる | 同第6項 |
| 全額支払い済み | 速やかに返還を受けられる | 同第6項 |
| クレジットで支払い中 | 信販会社にも通知。既払金の返還を求められる | 割賦販売法第35条の3の10 |
| 契約書に「着工後のキャンセルは違約金50%」とある | 消費者に不利な特約は無効 | 特商法第9条第8項 |
ただし、実際に事業者が素直に応じるとは限りません。原状回復の範囲や方法をめぐって争いになることもあります。工事が進んでいる場合ほど、通知を出したうえで消費生活センターに相談し、間に入ってもらう流れが現実的です。
通知を出した後にやっておくこと
- 現場の状態を写真で記録する(足場、施工箇所、資材の置き場所)
- 通知を出した日付、方法、宛先をメモに残す
- 事業者から電話が来た場合、話した日時と内容を記録する
- 「違約金を払え」と言われても、その場で支払いに応じない
- 追加の書類にサインしない。合意書や覚書は特に注意する
契約後のキャンセル全般については外壁塗装の契約後キャンセルでも扱っています。クーリング・オフの対象にならない契約をやめたい場合の考え方も含めて整理しています。
8日を過ぎてしまったときに残されている選択肢
結論として、8日を過ぎたからといって手立てがなくなるわけではありません。制度上、期間が進行していないと考えられるケースと、別の法律による取消しという二つの方向があります。
そもそも期間が始まっていない可能性
起算日は「法定の書面を受け取った日」です。逆に言えば、法律が求める記載事項を満たした書面を受け取っていなければ、8日のカウントは始まらないと考えられます。東京くらしWEBでも、契約書を受け取るまではクーリング・オフができる旨が案内されています。
次のような場合は、書面が法定の要件を満たしていない可能性があります。契約書を手元に出して確認してみてください。
- そもそも契約書を渡されていない、見積書しかもらっていない
- クーリング・オフができる旨の記載がどこにもない
- 事業者の名称、住所、電話番号が書かれていない
- 工事の内容や数量、金額の内訳が特定できない
- 契約年月日が空欄のまま渡された
- クーリング・オフに関する記載が、著しく小さい文字で読めない
また特商法第9条第1項のただし書は、事業者がクーリング・オフを妨げるために不実のことを告げたり、威迫して困惑させたりした場合について、あらためて交付された書面を受領した日から起算して8日を経過するまでは撤回等ができる、という趣旨の定めを置いています。「もう解約できません」と嘘を言われて8日が過ぎた場合などが想定されます。
これらは条文の解釈が絡むため、消費者だけで結論を出すのは困難です。書面を持参して消費生活センターに相談するのが確実です。
取消しという別のルート
クーリング・オフとは別に、勧誘の仕方に問題があった場合、契約の意思表示そのものを取り消せる制度があります。代表的な3つを整理します。
| 制度 | 使える主な場面 | 行使できる期間 |
|---|---|---|
| 特商法第9条の3による取消し | 訪問販売で、重要事項について事実と異なることを告げられた、または故意に事実を告げられなかった | 追認をすることができる時から1年、契約締結時から5年 |
| 消費者契約法第4条による取消し | 不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知、不退去、退去妨害、過量契約など | 追認をすることができる時から1年、契約締結時から5年(同法第7条) |
| 民法第96条による取消し | 詐欺または強迫による意思表示 | 民法の一般規定による |
リフォームの訪問販売でよく問題になるのは、不実告知です。たとえば「このままでは半年で雨漏りします」「近所で工事をしているので足場代が無料になります」「今日契約しないとこの価格は出せません」といった説明が、事実と異なっていた場合が該当し得ます。
ただし、取消しを主張するには、どのような説明を受けたのかを具体的に示す必要があります。録音、メモ、渡されたチラシや点検報告書などが手元にあれば保管しておいてください。取消しが認められるかどうかは事案ごとの判断になるため、結果を保証できるものではありません。
相談できる窓口
| 窓口 | 連絡先 | 特徴 |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 局番なしの188 | 最寄りの消費生活センターや相談窓口につながる。相談は無料(通話料は自己負担) |
| 住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター) | 03-3556-5147 | 受付10:00〜17:00(土日祝休日・年末年始を除く)。リフォームの見積りや契約に関する相談ができる |
| 各地の弁護士会 | 地域ごとの法律相談センター | 法的手続きを前提にした相談。有料の場合が多い |
| 法テラス | 各地の窓口 | 収入等の要件を満たす場合に無料法律相談や費用立替の制度がある |
消費者庁の案内によれば、188の通話料は一般回線で8.5円(税込9.35円)/180秒、携帯電話で10円(税込11円)/20秒です。相談窓口につながった時点から通話料が発生しますが、相談そのものは無料です。
どこに相談してよいか分からない場合は、まず188にかけるのが最短です。地域の消費生活センターは、事業者との間に入ってあっせんを行ってくれることもあります。
【独自解説】業者に言われがちな5つの「できません」との向き合い方
クーリング・オフを申し出たとき、事業者側から返ってくる説明にはいくつかの型があります。ここでは編集部が消費生活センターの公表資料や公的機関の解説を読み比べて整理した、5つの典型パターンと、法律の建て付け上どう考えられるかを対比させます。相手の言葉に押し切られないための材料としてお使いください。
| 言われがちな説明 | 法律の建て付け上の考え方 | 確認するもの |
|---|---|---|
| 「お客様から呼ばれて伺ったので対象外です」 | 適用除外となる「請求」は、住居で契約の申込み・締結をする意思を明確に表示した場合に限定して解釈されている | 最初に何を依頼したか。点検だけを頼んだのか、工事契約まで求めたのか |
| 「もう着工したのでキャンセルできません」 | 役務が提供されていても対価は請求できず、原状回復も無償で請求できる(特商法第9条第5項・第7項) | 契約書面の受領日。着工日ではなく書面受領日から8日 |
| 「材料を発注したので実費を負担してください」 | 事業者は損害賠償や違約金の支払を請求できない(同第3項) | 請求書の名目。違約金・キャンセル料・実費など名称を問わない |
| 「契約書に着工後のキャンセル不可と書いてあります」 | 消費者に不利な特約は無効(同第8項) | 契約書の特約条項。無効を主張できる可能性がある |
| 「8日はとっくに過ぎています」 | 法定書面の要件を満たしていなければ期間は進行していないと考えられる。妨害があった場合の規定もある | 契約書にクーリング・オフの記載があるか、事業者情報が揃っているか |
その場で言い返す必要はない
大切なのは、電話口や玄関先で論破することではありません。むしろ、その場で議論をしないほうが安全です。次の対応を基本にしてください。
- 「消費生活センターに相談していますので、書面でお願いします」と伝えて電話を切る
- 訪問してきた場合は玄関の中に入れない。ドア越しに同じことを伝える
- その場で新しい書類にサインしない、印鑑を押さない
- やり取りの日時と内容をメモに残す
- 一人で対応せず、家族や近隣の人に同席してもらう
「解約に応じる代わりに」という提案に注意する
編集部が公的機関の注意喚起を読むなかで、繰り返し出てくるのが再契約への誘導です。「今回は解約でよいので、代わりに小規模な工事だけ契約してほしい」「合意解約書にサインしてくれれば処理します」といった提案がなされることがあります。
クーリング・オフは、消費者が一方的な通知で行使できる権利です。事業者と新しい合意を結ぶ必要はありません。合意書にサインすると、かえって権利関係が複雑になる恐れがあります。書類を出されたら、その場では預かるだけにして、消費生活センターに見てもらってください。
次回に同じ状況を招かないためには、そもそも契約前に複数社を比較する習慣が有効です。リフォーム見積もり比較のポイントで、金額の妥当性を判断する基準を確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 8日目の当日に気づきました。今日出しても間に合いますか。
クーリング・オフは通知を発した時に効力が生じるため、8日目の当日中に発信すれば期間内と考えられます(特商法第9条第2項)。郵便局の窓口が開いている時間であれば特定記録郵便で出し、閉まっている場合は電子メールでの発信も選択肢になります。いずれの場合も、出した記録を必ず残してください。心配な場合は、翌営業日にあらためて書面でも同じ内容を送っておくと安心です。
Q. 契約書を渡されていないのですが、クーリングオフできますか。
8日間の起算日は法定の書面を受け取った日です。したがって、書面を受け取っていなければ期間はまだ進行していないと考えられます。東京くらしWEBでも、契約書を受け取るまではクーリング・オフができる旨が案内されています。ただし、書面の有無や記載内容をめぐって事業者と主張が食い違うことがあります。まずは通知を出したうえで、消費生活センターに経緯を相談することをおすすめします。
Q. 電話でクーリングオフを伝えました。それでも有効ですか。
特商法第9条第1項は、書面または電磁的記録による通知を求めています。電話は記録が残らないため、後から「聞いていない」と言われると立証が困難です。電話で伝えた場合でも、必ず書面または電子メールであらためて通知を出し、記録を残してください。すでに電話した日付と担当者名をメモしておくと、経緯の説明に役立ちます。
Q. 足場が組まれてしまいました。撤去費用を請求されませんか。
特商法第9条第3項は、クーリング・オフがあった場合に事業者が損害賠償や違約金の支払を請求できないと定めています。また同条第7項は、工事によって建物等の現状が変更されたときに、原状回復に必要な措置を無償で講じるよう請求できると定めています。制度の建て付け上、足場の撤去費用を消費者が負担する前提にはなっていません。請求された場合は支払いに応じる前に、消費生活センターへ相談してください。
Q. ショールームに自分で行って契約しました。解約する方法はありますか。
自ら店舗に出向いて結んだ契約は、原則としてクーリング・オフの対象外とされています。ただし、路上で声をかけられて店舗に連れて行かれた場合や、電話で呼び出された場合は訪問販売として扱われることがあります。また、勧誘の際に事実と異なる説明があったのであれば、消費者契約法第4条による取消しを検討する余地があります。契約の経緯を整理したうえで、消費生活センターにご相談ください。
まとめ
訪問販売で結んだリフォーム契約は、法定の契約書面を受け取った日を1日目として8日以内に、書面または電磁的記録で解除を通知すれば、原則として違約金なしで契約をなかったことにできます。理由は不要で、事業者の同意もいりません。効力は通知を発した時点で生じるため、期限内に出した記録を残すことがすべてです。
本記事の要点を整理します。
- 起算日は契約日ではなく、法定書面を受け取った日。受け取った日が1日目
- はがきの両面をコピーし、特定記録郵便または簡易書留で出す。受領証を保管する
- クレジット契約があれば、信販会社にも同時に通知する(割賦販売法第35条の3の10)
- 2022年6月15日から、電子メールなど電磁的記録による通知も可能
- 着工後・支払い後でも、対価の請求は認められず、原状回復を無償で請求できる
- 「自分から呼んだ」場合でも、点検を依頼しただけなら対象外とは限らない
- 8日を過ぎても、書面不備や妨害があれば期間が進行していない可能性がある
- 取消しという別ルートもある。相談は消費者ホットライン188へ
制度の適用は、契約書の記載内容や勧誘の経緯によって判断が分かれます。この記事は一般的なしくみの解説であり、個別の事案について法的な結論を保証するものではありません。ご自身のケースについては、契約書と受け取った書面を手元に用意したうえで、消費生活センター等の専門の窓口にご相談ください。
見積もりを取るときに使えるサービス
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