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延床20坪の戸建てなら、外壁の塗装面積は約79㎡。外壁のみの塗り替えで総額40〜100万円が公表値の幅で、シリコン塗料なら50〜80万円あたりが中心的な目安です。ところが実際に見積書を受け取ると、多くの方が「思ったより安くない」と感じます。理由ははっきりしています。外壁塗装は、家が小さくなっても費用が同じ割合では下がらない工事だからです。この記事は、その「下がらない理由」を外周の算数と固定費の比率で分解します。
なお、本記事に掲載した金額はすべて民間の塗装会社・比較サイトが公表している数値です。外壁塗装に国が定めた標準単価は存在しないため、数値はすべて幅で示し、出典サイト名を明記しています。建物の寸法にかかわる計算は「正方形の総二階」を仮定した本記事独自の概算であり、実際の建物とは差が出ます。
結論:延床20坪=約79㎡。外壁のみで40〜100万円に散る
先に結論を数字で置きます。延床20坪の戸建てで外壁塗装を検討するとき、手元に持っておくべき数字は次の4つです。
- 外壁の塗装面積:約79㎡(20坪 × 3.3㎡ × 係数1.2 = 79.2㎡)
- 建物の外周:約23m(正方形の総二階を仮定した概算)
- 足場の架面積:約170㎡((外周23m + 4m)× 軒高6.3m)
- 30坪との差:塗装面積は0.66倍。でも足場は0.84倍までしか下がらない
総額の目安は、公表しているサイトによってかなり開きます。同じ「20坪」でも、屋根を含むか、シーリングを打ち替えるか、塗料グレードをどこに置くか、そして塗装面積を何㎡と置いているかが各社で違うためです。まずはそのバラつきをそのまま並べます。
| 出典 | 塗装面積の前提 | 外壁のみの総額 |
|---|---|---|
| リショップナビ(坪数別表) | 79㎡ | 40〜90万円 |
| 街の外壁塗装やさん東東京店 | 約80㎡ | 約40〜60万円 |
| 外壁塗装の窓口 | 約80㎡ | 50〜60万円 |
| DOORS@外壁塗装 | 60〜80㎡ | 60〜100万円 |
| フォーグッド(2階建て・シリコン) | 99㎡(係数1.5で算出) | 約50〜90万円 |
| フォーグッド(3階建て) | 99㎡ | 約55〜100万円 |
| 外壁塗装駆け込み寺 | 85㎡(係数1.3で算出) | シリコン70万円(アクリル45万〜光触媒98万) |
| 南大阪ペイントセンター | 記載なし | 75〜95万円 |
下は40万円台、上は100万円近くまで散っています。この幅を「いい加減な情報」と切り捨てると、判断材料を失います。バラつきの正体は、前提条件の違いです。特に塗装面積の前提が79㎡・80㎡・85㎡・99㎡と各社で違う点は見逃せません。99㎡と79㎡では2割以上ちがい、それだけで総額が10万円単位で動きます。工程ごとの単価の考え方そのものは外壁塗装の費用内訳で分解していますので、この記事は「20坪」という条件に絞って掘り下げます。
延床20坪の面積を出す──79㎡という数字の根拠
結論として、延床20坪の外壁塗装面積は約79㎡です。ここから逆算すれば、届いた見積書の数量欄が現実的かどうかをその場で判断できます。
計算式は「延床坪数 × 3.3 × 1.2」
1坪は約3.3㎡(正確には3.30578㎡)です。延床20坪は 20 × 3.3 = 66㎡。ここに係数1.2を掛けて、66 × 1.2 = 79.2㎡、およそ79㎡となります。
この係数1.2は、床面積から立体の外壁面積を推定するための経験則です。街の外壁塗装やさん東東京店も「延べ坪数 × 3.3 × 1.2」という同じ式を示し、20坪=79.2㎡(実務では80㎡として計算)としています(出典:街の外壁塗装やさん東東京店)。リショップナビの坪数別相場表も20坪=79㎡で一致しています(出典:リショップナビ)。
一方で、別の係数を使うサイトもあります。外壁塗装の窓口は「延床面積 × 1.2」で約80㎡、外壁塗装駆け込み寺は「66㎡ × 1.3」で85㎡、フォーグッドは係数1.5を用いて99㎡としています。つまり79㎡は各社の前提のなかでは下限寄りの数字です。実測すると80㎡台に乗ることは珍しくない、という前提で見積書を読んでください。
30坪・40坪との差を並べる
同じ係数1.2で計算すると、坪数別の面積は次のようになります。ここが本記事のいちばん重要な出発点です。
| 延床坪数 | 床面積 | 塗装面積(係数1.2) | 建物の外周(概算) | 足場の架面積(概算) |
|---|---|---|---|---|
| 20坪 | 66㎡ | 約79㎡ | 約23.0m | 約170㎡ |
| 30坪 | 99㎡ | 約119㎡ | 約28.1m | 約202㎡ |
| 40坪 | 132㎡ | 約158㎡ | 約32.5m | 約230㎡ |
| 20坪 ÷ 30坪 | 0.67倍 | 0.66倍 | 0.82倍 | 0.84倍 |
塗装面積は30坪の0.66倍まで下がります。ところが外周は0.82倍、足場は0.84倍にしかなりません。この「下がり方の違い」が、20坪の費用を読むうえでの核心です。次の見出しで、なぜそうなるのかを算数で確かめます。30坪・40坪それぞれの詳細は外壁塗装30坪の費用と外壁塗装40坪の相場で扱っています。
なぜ小さい家ほど坪単価が割高になるのか──外周と固定費の算数
結論から書きます。延床が3分の2になっても、外壁塗装の総額は3分の2にはなりません。本記事の試算では、面積が0.66倍まで下がっても総額は0.77倍までしか下がらず、その結果として㎡単価・坪単価は約1.16〜1.17倍に上がります。これは業者が小さい家をふっかけているのではなく、工事の構造そのものから出てくる数字です。
理由1:足場は「面積」ではなく「外周」に沿って組む
足場は床面積の上に乗せるものではなく、建物のまわりをぐるりと囲むものです。したがって数量を決めるのは外周の長さと高さであって、延床面積ではありません。
正方形の総二階を仮定して計算してみます。延床20坪(66㎡)の総二階なら1階の床面積は33㎡。正方形なら1辺は √33 = 約5.74mで、外周は 5.74 × 4 = 約23.0mです。延床30坪(99㎡)なら1階は49.5㎡、1辺は約7.04m、外周は約28.1mになります。
- 床面積の比:66 ÷ 99 = 0.67倍
- 外周の比:23.0 ÷ 28.1 = 0.82倍
面積は辺の長さの2乗に比例します。逆に言えば、面積が3分の2になっても辺の長さは√(2/3)=約0.82倍にしか縮まないということです。しかも足場の高さは変わりません。20坪だろうと30坪だろうと、二階建てなら軒高は6m前後で同じです。つまり足場は「横だけ少し短くなる」だけで、縦は1ミリも縮まないのです。足場の単価と数量の読み方は外壁塗装の足場代の相場で詳しく扱っています。
理由2:面積に比例しない費目がある
もう一つの理由が固定費です。外壁塗装の費用には、家の大きさにほとんど左右されない費目が含まれています。
- 現場管理費……現場責任者が現場を見に行く回数は、20坪でも30坪でもほぼ同じです
- 材料・資機材の運搬費……足場材を積んだトラックの往復回数、塗料や道具の搬入出は家が小さくても減りません
- 近隣挨拶・現場写真・書類作成……手間の量は面積と無関係です
- 職人の移動・段取り時間……朝の準備と夕方の片付けは、塗る面積が少なくても発生します
諸経費の中身については、現場経費(労務管理費・租税公課・保険料・福利厚生費・事務用品費)と一般管理費(広告宣伝費・事務所家賃など)に加え、作業車両のガソリン代や償却費、写真代、帳票代、近隣対策までが含まれると説明されています(出典:後悔しない、外壁塗装!)。この顔ぶれを見れば、面積に比例しない性質のものが多いことが分かります。
数式で確かめる──費目を3種類に分けて積み上げる
実際に積み上げてみます。ここでは費目を「面積に比例するもの」「外周に比例するもの」「ほぼ固定のもの」の3種類に分け、シリコン塗料・サイディング外壁・シーリング打ち替えという同一条件で20坪と30坪を並べます。単価は複数サイトの公表値の中央付近を採りました。
| 費目 | 性質 | 単価 | 延床20坪 | 延床30坪 | 20坪÷30坪 |
|---|---|---|---|---|---|
| 塗装本体(下塗り+中塗り+上塗り) | 面積比例 | 2,500円/㎡ | 79㎡=197,500円 | 119㎡=297,500円 | 0.66倍 |
| 高圧洗浄+養生 | 面積比例 | 計500円/㎡ | 39,500円 | 59,500円 | 0.66倍 |
| 足場(メッシュシート込み) | 外周比例 | 800円/㎡ | 170㎡=136,000円 | 202㎡=161,600円 | 0.84倍 |
| シーリング打ち替え | 外周比例 | 1,200円/m | 140m=168,000円 | 175m=210,000円 | 0.80倍 |
| 現場管理費・運搬・諸経費 | ほぼ固定 | 定額 | 100,000円 | 100,000円 | 1.00倍 |
| 合計 | — | — | 641,000円 | 828,600円 | 0.77倍 |
| ㎡単価 | — | — | 8,114円/㎡ | 6,963円/㎡ | 1.17倍 |
| 坪単価 | — | — | 32,050円/坪 | 27,620円/坪 | 1.16倍 |
| 固定費が総額に占める比率 | — | — | 15.6% | 12.1% | — |
読み取れることは3つです。
- 塗装面積は0.66倍でも、総額は0.77倍までしか下がらない。差額はおよそ18.8万円で、面積比どおりなら28.2万円下がるはずのところが3分の2しか下がっていません
- その結果、㎡単価は約1.17倍、坪単価は約1.16倍に上がります
- 固定費が総額に占める比率は12.1%から15.6%へ上昇。家が小さいほど、塗料以外の「動かない費用」の存在感が増します
ちなみに足場代が総額に占める比率も、30坪の19.5%に対して20坪では21.2%へ上がります。「20坪なのに足場だけで13万円以上取られている」と感じるのは、金額が高いのではなく比率が高いからです。この構造を知っていれば、見積書を見たときの落胆をかなりの部分まで先回りできます。
「安く済むはず」という期待とのズレは、この構造から生まれる
20坪の家にお住まいの方が見積書を見て「思ったより高い」と感じるのは、頭の中で総額を延床面積で割り算しているからです。「30坪で80万円なら、20坪はその3分の2で53万円くらいだろう」という期待が先に立ちます。ところが実際に出てくるのは60万円台、70万円台です。
この差は、業者が上乗せしているのではありません。足場という外周比例の費目と、動かない固定費が、割り算を許さないだけです。逆に言えば、坪単価で他人の家と比べても意味がないということでもあります。比べるべきは坪単価ではなく、㎡数と単価が数量欄に書かれているかどうかです。
塗料グレード別・79㎡での総額目安
結論として、20坪で塗料グレードを一段上げたときの追加負担は、30坪の家より小さくなります。塗料代は面積比例なので、面積が小さければグレードアップの上乗せ額も小さいからです。
まず、塗料代以外の工事費(足場・高圧洗浄・養生・シーリング打ち替え・諸経費)を積み上げると、20坪ではおおよそ33〜54万円になります。内訳は次のとおりです。
- 足場(メッシュシート込み):170㎡ × 800〜1,000円 = 約13.6〜17.0万円
- 高圧洗浄+養生:79㎡ × 各100〜400円 = 約1.6〜6.3万円
- シーリング打ち替え:140m × 900〜1,500円 = 約12.6〜21.0万円
- 現場管理費・諸経費:約5〜10万円
ここに塗料代を足したものが総額の目安です。
| 塗料グレード | ㎡単価 | 79㎡分の塗料工事費 | 総額の目安(外壁のみ) | 耐用年数の目安 |
|---|---|---|---|---|
| アクリル | 1,000〜1,800円 | 約7.9〜14.2万円 | 約41〜68万円 | 5〜8年 |
| ウレタン | 1,600〜2,500円 | 約12.6〜19.8万円 | 約46〜74万円 | 7〜10年 |
| シリコン | 2,000〜3,500円 | 約15.8〜27.7万円 | 約49〜82万円 | 10〜15年 |
| ラジカル | 2,800〜3,500円 | 約22.1〜27.7万円 | 約55〜82万円 | 13〜15年 |
| フッ素 | 3,000〜5,500円 | 約23.7〜43.5万円 | 約57〜98万円 | 15〜20年 |
| 無機 | 3,800〜6,000円 | 約30.0〜47.4万円 | 約63〜101万円 | 15〜25年(実績データが少なく信頼度は低め) |
この表の使いどころは、シリコンとフッ素の差額です。20坪ならその差は約8〜16万円ですが、30坪(119㎡)で同じ計算をすると約12〜24万円に広がります。面積が小さいほど、グレードアップのハードルは下がります。
ここで効いてくるのが足場代です。足場は塗り替えのたびに毎回かかる費目で、20坪でも13〜17万円は動きません。耐用年数10〜15年のシリコンを2回塗るあいだに、耐用年数15〜20年のフッ素なら1回で済む可能性があります。つまり足場を1回分節約できるかもしれない、という計算が成り立ちます。ただし塗料の耐用年数はメーカーの促進試験に基づく目安であり、立地・方角・下地の状態で実際の持ちは変わります。「必ずこの年数もつ」という性質のものではありません。塗料ごとの違いは塗料の種類と耐用年数一覧で整理しています。
同じ延床20坪でも、狭小地3階建て・平屋・総二階は別物
結論から書きます。延床20坪クラスは、建物の形が3タイプに大きく分かれる坪数帯です。そして係数1.2という一律の掛け算は、この違いをまったく吸収できません。20坪という数字だけで相場を当てにいくと外すのは、この理由が大きいのです。
延床20坪の家には、大きく次の3つがあります。
- 狭小地の3階建て……都市部の狭い敷地で、上に伸ばして床面積を確保したタイプ
- 平屋……高齢のご夫婦の住み替え、あるいは古くからの小規模住宅
- 小規模な総二階……いちばん標準的で、係数1.2がそのまま当てはまるタイプ
同じ延床66㎡を、正方形と仮定して3タイプで比較します(軒の出・開口部は考慮していない粗い概算です)。
| タイプ | 1階の床面積 | 建物の外周 | 建物の高さ | 外壁の粗い面積 | 足場の架面積(概算) | 屋根面積(概算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3階建て | 22㎡ | 約18.8m | 約9m | 約169㎡ | 約212㎡ | 約24㎡ |
| 総二階 | 33㎡ | 約23.0m | 約6m | 約138㎡ | 約170㎡ | 約36㎡ |
| 平屋 | 66㎡ | 約32.5m | 約3m | 約98㎡ | 約120㎡ | 約73㎡ |
3タイプで足場の架面積が120㎡から212㎡まで、1.8倍近く開きます。同じ「延床20坪」という言葉のなかに、これだけの幅が同居しているのです。
3階建ては足場代が跳ね上がる
3階建ては床面積が同じでも高さが1.5倍になるため、足場の架面積が総二階の約1.25倍になります。加えて高所作業の割増も乗ります。フォーグッドは20坪の実例として、2階建ての足場代145,000〜217,500円に対し、3階建ては207,000〜310,500円という数値を示しています(出典:フォーグッド)。差額はおよそ6.2〜9.3万円で、倍率にして約1.43倍です。総額でも2階建て約50〜90万円に対し3階建て約55〜100万円と、上限が10万円ほど押し上げられています。
ミツモアの解説でも、3階建て以上は㎡あたり200〜300円ほど足場単価が高くなり、2階建て30坪の16〜22万円に対し3階建ては3万円ほど加算されて19〜25万円が目安とされています(出典:ミツモア)。
平屋は外壁が減るが、屋根とシーリングは増える
平屋は外壁面積がいちばん小さく、足場も低くて済みます。ここだけ見れば安上がりです。ところが屋根面積は総二階の約2倍になります。屋根塗装まで含めるなら、この差は無視できません。
もうひとつ見落とされるのがシーリングです。平屋の外周は約32.5mで、これは延床30坪の総二階(約28.1m)より長くなります。サイディング外壁の目地は縦目地が建物の高さ方向に、横目地が外周方向に走りますから、外周が長い平屋は横目地の総延長が伸びます。「平屋だから安いはず」という期待も、坪単価の期待と同じ理由で裏切られることがあります。
狭小地は足場が割増になることがある
結論として、隣家との距離が近い狭小地では、足場そのものが割増になるか、そもそも通常の足場が組めずに工法変更が必要になることがあります。20坪クラスの家は都市部の狭い敷地に建っていることが多く、この論点を避けて通れません。
なぜ隙間が必要か──法令が幅を決めている
足場に必要な幅は、業者の都合ではなく法令で決まっています。労働安全衛生規則第563条は、高さ2m以上の作業場所における作業床について、幅を40cm以上とし、床材間のすき間は3cm以下、床材と建地とのすき間は12cm未満と定めています(出典:厚生労働省 労働安全衛生規則の足場規定)。
作業床が40cm、建地(支柱)そのものの太さ、そして外壁と作業床のあいだの作業スペース。これらを足せば、建物の外面から数十センチの空間が物理的に必要になることが分かります。ここが「隣家との隙間が足りないと足場が組めない」という話の正体です。塗装業者の側でも、隙間20cmあれば架設可能とする一方、多くの業者は30〜40cm未満だと断る、という実情が説明されています(出典:セイルズ)。
割増の形は3つに分かれる
| 条件 | 起きること | 費用への影響 |
|---|---|---|
| 隣家との距離が狭い | くさび式(ビケ)足場が入らず、単管足場やブラケット足場への変更。組立に手間と時間がかかる | 立地条件が悪い場合、5,000〜数万円ほど高くなる(ミツモア) |
| 前面道路が狭い/車両が入れない | 資材を積んだトラックが横付けできず、人力での小運搬が発生。職人の手間が増える | 人件費増として上乗せ(リフォームの匠美) |
| 道路上に足場がかかる | 道路使用許可の申請、交通誘導員の配置が必要になる | 申請手数料 約2,700円、誘導員 1日15,000円〜、業者手続き費用 10,000円〜(ミツモア) |
正直に書いておきます。「狭小地なら足場代が何%増しになる」という統一された基準や公的な統計は見つかりませんでした。公表されているのは「立地条件が悪いと5,000〜数万円高くなる」「人件費が増える」といった幅のある説明までです。逆に言えば、狭小地の割増額は現地を見てからでないと出せない数字であり、現地調査をせずに金額を即答してくる業者は、この部分を見ていないことになります。
隣地を使わせてもらう法的な枠組みはある
足場が自分の敷地内に収まらない場合、隣地を一時的に使わせてもらう必要が出てきます。2023年4月1日施行の改正民法第209条は、境界付近の工作物の築造・収去・修繕のために必要な範囲で隣地を使用できると定めています。改正前は「請求することができる」でしたが、改正後は「使用することができる」に変わりました。ただし、あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地の所有者と使用者に通知する義務があり、住家への立入りには居住者の承諾が必要です(出典:民法第209条(隣地の使用))。
法的な枠組みがあるとはいえ、実務では近隣関係が最優先です。工事後もそこに住み続けるのはご自身です。業者任せにせず、着工前の挨拶に同行するくらいの構えでいたほうが、結果的に穏便に進みます。
20坪でも省略できない工程がある
結論として、家が小さくても工程の数は1つも減りません。ここを削って安く見せる見積書には注意が必要です。
シーリング(コーキング)は打ち替えが基本
サイディング外壁なら、目地のシーリングは塗膜より先に劣化します。20坪クラスでも総延長は本記事の概算で約120〜165m(延床30坪の公表値150〜200mを外周比0.82で換算)あり、単価は打ち替え900〜1,500円/m、増し打ち500〜1,000円/mです。打ち替えなら12〜21万円前後で、総額の2割前後を占めることになります。
金額が大きいぶん、ここを増し打ちに変えると総額は簡単に5万円以上下がります。しかし増し打ちは既存のシーリングを残したまま上から重ねる工法で、下の層が劣化していれば一緒に剥がれます。見積書に「コーキング 一式」とだけ書かれていて、打ち替えか増し打ちかが書かれていない場合は必ず確認してください。この一行の有無が、数年後の差になります。
下地補修とケレンも面積では減らない
ひび割れの補修、鉄部のサビ落とし(ケレン、200〜500円/㎡)、旧塗膜の浮きの処理。これらは劣化の量で決まるのであって、家の大きさで決まるわけではありません。築年数が同じなら、20坪の家も30坪の家も同じくらい傷んでいます。むしろ20坪の家は総額が小さいぶん、補修費が総額に占める比率は高くなります。
3回塗りと乾燥時間、そして工期
下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りは、家の大きさと無関係に必要です。そして塗り重ねのあいだには乾燥時間(インターバル)が要ります。街の外壁塗装やさん東東京店は、一戸建て30坪程度で工期10日前後、屋根塗装を含めると約2週間とし、下塗り・中塗り・上塗りをそれぞれ1日ごとに行うのが普通だと説明しています(出典:街の外壁塗装やさん東東京店)。
ここが重要です。工期は面積ではなく工程数と乾燥時間で決まる部分が大きいため、20坪でも劇的には短くなりません。足場仮設1日、高圧洗浄1日、下地処理・養生、外壁3日、付帯部、点検・手直し1日、足場解体1日という積み上げは20坪でも同じです。「20坪だから3日で終わります」という提案があったら、乾燥時間をどう確保するのかを聞いてください。工期の短さは、そのまま品質のリスクになりえます。
なお、塗装工事は請負金額が税込500万円未満であれば建設業の許可は不要です(出典:国土交通省 建設業の許可)。20坪の外壁塗装はまず確実にこの範囲に収まりますから、「許可を持っているか」だけでは業者の力量を判断できません。許可の有無だけでなく、現地調査の丁寧さや見積書の書き方を判断材料にしてください。
よくある質問
20坪なのに70万円の見積もりです。高すぎませんか?
公表されている20坪の相場は40〜100万円と幅がありますので、70万円はその中に収まっています。高すぎるとは言えません。判断の分かれ目は総額ではなく内訳です。塗装面積が79㎡前後で書かれているか、足場の㎡数と単価が分かれているか、シーリングが打ち替えか増し打ちか。この3点が書かれていれば検算できます。逆に「一式」だけの見積書は、金額の高低以前に判断ができません。数量と単価が分かれて書かれた見積書を、複数社から集めてください。
30坪の相場から3分の2で計算してはいけないのですか?
おすすめできません。本記事の試算では、塗装面積が0.66倍になっても総額は0.77倍までしか下がりませんでした。足場が外周に沿って組まれるため0.84倍にしか減らず、現場管理費や運搬費といった固定費はまったく減らないからです。3分の2で計算すると、実際の見積額より10万円以上低い期待値を持つことになり、見積書を見たときに落胆します。
隣の家との隙間が40cmしかありません。塗装できますか?
できる可能性は十分にありますが、現地を見てもらうまで断定はできません。労働安全衛生規則第563条は作業床の幅を40cm以上と定めており、業者によって「20cmあれば架設可能」とする会社もあれば、30〜40cm未満は断る会社もあります。単管足場やブラケット足場への変更、隣地の一時使用の相談、部分的に足場をずらす工夫など手はあります。ただし手間が増えるぶん割増になることが多く、その金額は現地調査なしには出せません。複数社に見てもらうこと自体が有効な判断材料になります。
20坪の平屋なら足場は要りませんか?
必要です。労働安全衛生規則は高さ2m以上の作業について足場や墜落防止措置を求めており、平屋でも軒高は3m前後あります。脚立だけで済ませる工事は、安全面でも品質面でも避けるべきです。加えて平屋は外周が長いぶん足場の水平方向の延長が伸びますので、「低いから安い」とは限りません。本記事の概算では、20坪の平屋の足場架面積は約120㎡で、総二階の約170㎡に対して0.7倍程度です。
面積が小さいので、良い塗料に変えても負担は少ないですか?
相対的にはそのとおりです。79㎡でシリコンからフッ素に変えた場合の差額は約8〜16万円で、119㎡(30坪)の約12〜24万円より小さくなります。塗料代は面積比例だからです。ただし、耐用年数はメーカーの試験に基づく目安であり、立地や下地の状態で実際の持ちは変わります。「フッ素にすれば必ず20年もつ」とは言えません。塗り替え周期が延びる可能性が期待できる、という理解が適切です。
まとめ:20坪は「79㎡」と「外周23m」の2つで読む
延床20坪の外壁塗装は、塗装面積約79㎡、外壁のみで40〜100万円が公表値の幅です。ただしこの記事でいちばんお伝えしたかったのは総額ではなく、その金額の成り立ちでした。
- 塗装面積は 20坪 × 3.3 × 1.2 = 約79㎡。30坪(119㎡)の0.66倍
- しかし外周は0.82倍、足場は0.84倍にしか下がらない。足場は面積ではなく外周に沿って組むから
- 現場管理費・運搬費・諸経費は面積に比例しない。固定費比率は30坪の12.1%から20坪では15.6%へ上昇
- 結果として総額は0.77倍までしか下がらず、㎡単価・坪単価は約1.16〜1.17倍に上がる
- 同じ20坪でも、狭小地3階建て・総二階・平屋で足場架面積は120〜212㎡と1.8倍近く開く
- 隣家との距離が近い狭小地は、足場の工法変更や小運搬で割増が生じることがある。ただし統一された割増率の基準は見当たらず、現地調査が前提
- シーリング・下地補修・3回塗り・乾燥時間は、家が小さくても省略できない
「20坪なんだから安く済むはず」という感覚は、決して的外れではありません。実際、30坪より2割前後は安く上がります。ただしその下がり方が期待より緩やかなだけです。この構造を理解したうえで見積書を開けば、金額そのものよりも、数量欄と単価欄がきちんと書かれているかどうかに目が向くようになります。そこまで来れば、業者の説明を受け身で聞くのではなく、同じ土俵で話せます。20坪という条件は、決して不利な条件ではありません。
見積もりを取るときに使えるサービス
ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

