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外壁塗装の見積書にある「人工(にんく)」が何人分でいくらが妥当なのか、判断材料が見つからず困っている方は多いはずです。結論から言えば、1人工の金額を客観的に測るための唯一の公的なアンカーは、国が毎年3月に改定している「公共工事設計労務単価」です。最新は令和8年3月から適用で、塗装工は東京都36,500円・福岡県29,200円(いずれも1日8時間あたり)。ただしこの単価には現場管理費や一般管理費が含まれていないため、見積の1人工がこれより高いこと自体はおかしくありません。この記事では、その単価を正しく読む手順と、人工数(何人×何日)の桁感の確認方法に絞って解説します。
結論:1人工を測る公的なアンカーは「公共工事設計労務単価」だけ
外壁塗装の「1人工いくらが妥当か」という問いに、業界側から客観的な基準が示されることはほとんどありません。しかし、国は毎年、職種別・都道府県別の労務単価を公表しています。それが公共工事設計労務単価です。
この単価は、国土交通省と農林水産省が前年度に実施した公共事業労務費調査の結果に基づいて決定され、47都道府県・51職種別に設定されます。そのなかに「塗装工」という職種があります。令和8年3月から適用される単価については、国土交通省が令和8年2月17日に公表しており、全国全職種加重平均値は25,834円、全国全職種単純平均で前年度比4.5%の引き上げとなりました。平成25年度の改定から14年連続の引き上げで、初めて25,000円を超えたと発表されています(国土交通省 報道発表/報道発表資料(PDF))。
ただし、この単価の使い方には重要な注意点が3つあります。先に挙げておきます。
- この単価は「労働者に支払われる賃金」に関するもので、現場管理費や一般管理費などの諸経費を含んでいません
- 所定労働時間内8時間あたりの単価であり、時間外の割増賃金も含みません
- 公共工事の工事費の積算に用いるためのもので、民間工事の人件費を拘束するものではありません
つまり、この単価は「ぼったくりかどうかを判定する線引き」ではなく、「桁がずれていないかを確認するための物差し」です。この区別をつけずに見積と直接比較すると、かえって判断を誤ります。
「人工(にんく)」とは何か:1人が1日働く単位
人工とは、職人1人が1日働く量を1とする、労務量の単位です。2人の職人が10日間作業すれば2×10=20人工、3人が5日間なら15人工という数え方になります。見積書に「塗装工 20人工 ×○○円」と書かれていれば、これは「職人1人1日あたりの金額に、延べ20日分を掛けた」という意味です。
公的な積算でも「人・日」で計算されている
「人工」という言葉自体を定義した公的文書は確認できませんでしたが、同じ考え方は公共工事の積算基準にそのまま採用されています。国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」(令和8年改定、令和8年3月11日最終改定)では、工事の労務費を「歩掛り(単位施工量あたりに必要な所要量。単位は人)」に労務単価を掛けて算出する方式が採られており、労務単価については「『公共工事設計労務単価』による」と明記されています(国土交通省 公共建築工事標準単価積算基準(PDF))。
さらに明確なのが、改正建設業法に基づいて中央建設業審議会が検討している「労務費の基準」です。令和7年6月3日の第8回ワーキンググループで概ね合意された資料には、基準の算定式がこう書かれています。
- 「労務費の基準」=労務単価(円/人日)× 歩掛(人日/単位施工量)
- 労務単価には「公共工事設計労務単価」を活用
- 歩掛には「国土交通省直轄工事で用いられている歩掛」を活用
対象として検討されている職種分野には「塗装」(日本塗装工業会)も含まれています(国土交通省「労務費の基準」に関する検討状況について(PDF)/労務費の基準に関するワーキンググループ)。国自身が「円/人日」という単位、つまり1人工あたりの金額で労務費を組み立てているわけです。だからこそ、公共工事設計労務単価を物差しに使う意味があります。
なお、この「労務費の基準」については、国土交通省の資料に「建設工事の労務費に関する基準を作成し、令和7年12月にその実施を勧告」したと記載されています(国土交通省 報道発表資料(PDF))。ただしこれは元請と下請の間の請負代金に関する制度であり、住宅の所有者が業者に支払う金額を直接定めるものではありません。令和8年3月時点で、塗装工事の基準値が確定して公表されているかどうかは確認できませんでした。
【令和8年3月適用】塗装工の公共工事設計労務単価 都道府県別
最新の塗装工の単価は下表のとおりです。いずれも所定労働時間内8時間あたりの金額で、令和8年3月から適用されています。
| 都道府県 | 塗装工の単価(円/8時間) |
|---|---|
| 東京都 | 36,500 |
| 神奈川県 | 36,300 |
| 千葉県 | 34,700 |
| 埼玉県 | 34,500 |
| 愛知県 | 33,600 |
| 宮城県 | 33,400 |
| 大阪府 | 32,300 |
| 京都府 | 31,300 |
| 佐賀県 | 30,200 |
| 北海道 | 30,100 |
| 長崎県 | 29,900 |
| 沖縄県 | 29,800 |
| 鹿児島県 | 29,500 |
| 熊本県 | 29,300 |
| 福岡県 | 29,200 |
| 兵庫県 | 29,000 |
| 宮崎県 | 29,000 |
| 岩手県 | 28,500 |
| 大分県 | 28,500 |
| 青森県 | 27,400 |
| 広島県 | 26,700 |
| (参考)全国全職種加重平均 | 25,834 |
単価表の原本は農林水産省のページからPDFで確認できます(農林水産省 公共工事設計労務単価/令和8年3月適用 労務単価表(PDF))。
都道府県別に単価を公表している自治体もあります。東京都財務局の公表資料では塗装工36,500円(令和8年3月適用)、福岡県の公表資料では塗装工29,200円(令和8年3月12日から適用)となっており、農林水産省のPDFと一致しました(東京都財務局 公共工事設計労務単価/福岡県 公共工事設計労務単価/福岡県 単価表(PDF))。
同じ塗装工でも、最も高い東京都(36,500円)と最も低い広島県(26,700円)では約1万円の差があります。地域によって1人工の水準が1.3倍以上違うということは、「全国共通の1人工いくら」という答えがそもそも存在しないことを意味します。相場を調べるときは、必ず自分の都道府県の数値を見てください。
労務単価は毎年3月に改定され、上がり続けている
見落とされがちですが、この単価は毎年3月に改定されます。数年前の記事に載っている数字をそのまま使うと、実勢から大きくずれます。福岡県が公表している資料から、塗装工の単価の推移を拾うと次のようになります。
| 適用年度 | 福岡県 塗装工 | 東京都 塗装工 |
|---|---|---|
| 令和5年3月適用 | 25,400円 | (確認できませんでした) |
| 令和6年3月適用 | 26,900円 | 32,700円 |
| 令和7年3月適用 | 28,300円 | 34,500円 |
| 令和8年3月適用 | 29,200円 | 36,500円 |
| 3年間の上昇幅 | 約15%増 | 約12%増(令和6年比) |
福岡県は3年間で25,400円から29,200円へ、約15%上がっています(福岡県 令和7年3月適用 公共工事設計労務単価(PDF))。東京都も令和6年3月適用の32,700円から令和8年3月適用の36,500円へ上がりました(令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価(PDF)/東京都財務局 令和7年3月適用)。
これは「職人の人件費が上がっている」という事実が公的なデータで裏付けられているということです。3年前に親戚が外壁塗装をしたときの金額と比べて高いと感じたとしても、その差の一部は人件費の上昇で説明がつきます。
見積の1人工が労務単価より高いのは、おかしくありません
ここがこの記事でもっとも伝えたい点です。見積書の1人工の金額が公共工事設計労務単価より高くても、それだけでは不当だとは言えません。なぜなら、労務単価には含まれていないものがあるからです。
単価表に明記されている注記
労務単価表そのものに、次の注記が付いています。
「本単価は労働者に支払われる賃金に係わるものであり、現場管理費(法定福利費(事業主負担分)、研修訓練等に要する費用等)及び一般管理費等の諸経費は含まれていない。」
「本単価は、所定労働時間内8時間当たりの単価である。」
出典は農林水産省掲載の労務単価表(PDF)です。同じ趣旨の記載は国土交通省の報道発表資料にもあります。
つまり労務単価36,500円というのは、職人の手に渡る賃金の部分だけを指しています。これに加えて、少なくとも次のような費用が実際には発生します。
- 法定福利費の事業主負担分(健康保険・厚生年金・雇用保険など)
- 研修訓練などに要する費用
- 現場管理費(現場の管理・安全管理に関わる費用)
- 一般管理費等の諸経費(会社の運営費)
- 所定時間外の労働に対する割増賃金
見積書の「1人工○○円」という数字に、これらのどこまでが乗っているかは業者によって違います。だから、同じ地域の同じ工事でも1人工の表示額がばらつきます。このばらつき自体は不正の証拠ではありません。外壁塗装の費用内訳を項目ごとに見ていくと、諸経費がどこに計上されているかの違いが見えてきます。
国も「労務単価をそのまま下請代金にしないこと」と通知している
この点については、国土交通省が業界向けに明確な通知を出しています。「下請代金の決定に当たって公共工事設計労務単価を参考資料として取り扱う場合の留意事項について」という文書で、平成23年12月1日から繰り返し発出され、最新版は令和7年12月10日付(国土交通省大臣官房参事官(建設人材・資材))です。
その内容は、要約すると次のとおりです。
- 公共工事設計労務単価は「公共工事の工事費の積算に用いるためのもの」である
- 所定労働時間内8時間あたりの労務単価として設定されたものである
- 所定時間外の割増賃金、現場管理費(法定福利費等)、一般管理費等の諸経費は含まれていない
- 下請代金を決めるときは、技能労働者の賃金等に加えてこれらの経費を適正に考慮する必要がある
- 書面による見積依頼、適正な見積期間の設定、経費内訳の明示、双方の協議を経て決定すること
出典は国土交通省「下請代金の決定に当たって公共工事設計労務単価を参考資料として取り扱う場合の留意事項について」(令和7年12月10日・PDF)および同(平成29年12月1日・PDF)です。
国がわざわざこの通知を繰り返し出している理由は、労務単価を上限のように扱って代金を値切る動きがあったからです。消費者の立場からすると、これは裏返しの教訓になります。「国の単価より高いじゃないか」と値引きを迫ることは、国が業界に向けてやめるよう求めている行為と同じ構図になりかねません。
この単価と見積を直接比べて高い安いを断定してはいけない
労務単価は便利な物差しですが、使い方を間違えると判断を誤ります。公共工事設計労務単価は公共工事の工事費の積算に用いるためのものであり、民間工事の人件費を拘束するものではありません。戸建て住宅の外壁塗装は民間工事ですから、この単価に従う義務は誰にもありません。
具体的に、次の3つの理由から単純比較はできません。
- 調査対象が違う:単価は前年度の公共事業労務費調査に基づいて決まります。公共工事に従事する労働者の実態を反映した数値であり、戸建て住宅の塗装を主とする小規模事業者の実勢とは必ずしも一致しません
- 含まれる費用の範囲が違う:前述のとおり、単価は賃金部分のみです。見積書の「人工」には諸経費が含まれている場合もあり、そうでない場合もあります
- 工事の条件が違う:公共工事の積算は定められた歩掛を前提にします。戸建ては足場の立てにくさ、隣地との距離、下地の劣化度合いなどで必要な手間が大きく変わります
したがって、労務単価の正しい使い方は「桁の確認」です。1人工が数千円と書かれていれば賃金としても成り立たない水準ですし、逆に労務単価の数倍になっていれば、その差額が何の費用なのかを説明してもらう根拠になります。外壁塗装の見積もり相場と合わせて、総額と内訳の両面から見るのが現実的です。
人工数の桁感:30坪・2人・10日=20人工は妥当か
金額よりも先に確認すべきなのが人工数(何人×何日)です。単価が妥当でも、人工数が足りなければ工事そのものが成立しません。
延床30坪の戸建て(塗装面積の簡易計算では約119平方メートル)の外壁塗装について、工程ごとの人工数を積み上げると次のような桁感になります。ただし、この人数と日数の組み合わせは一般に流通している目安であり、公的な裏付けは確認できませんでした。国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」には塗装の歩掛を定めた節が存在しますが、今回その節の数値そのものを取得できませんでした。参考値として読んでください。
| 工程 | 想定人数 | 想定日数 | 人工数 |
|---|---|---|---|
| 足場架設 | 2〜4人 | 1日 | 2〜4 |
| 高圧洗浄 | 1〜2人 | 1日 | 1〜2 |
| 養生 | 1〜2人 | 1日 | 1〜2 |
| ケレン・下地補修 | 1〜2人 | 1〜2日 | 1〜4 |
| シーリング工事 | 1〜2人 | 1〜2日 | 1〜4 |
| 外壁 下塗り | 2人 | 1日 | 2 |
| 外壁 中塗り | 2人 | 1日 | 2 |
| 外壁 上塗り | 2人 | 1日 | 2 |
| 付帯部塗装 | 1〜2人 | 1〜2日 | 1〜4 |
| 検査・手直し・清掃 | 1〜2人 | 1日 | 1〜2 |
| 足場解体 | 2〜4人 | 1日 | 2〜4 |
| 合計 | - | 10〜14日 | 16〜32人工 |
このように積み上げると、30坪の外壁塗装はおおむね16〜32人工、中心は20人工前後という桁感になります。よく言われる「2人で10日=20人工」は、この範囲のなかに収まります。工期の日数そのものの内訳は外壁塗装は何日かかるかで詳しく扱っています。
労務単価×人工数を計算してみると、数字が合わなくなる
ここで正直に書いておきたいことがあります。最新の労務単価にこの人工数を掛けると、戸建て塗装の実勢とは整合しない金額になります。
| 地域(令和8年3月適用) | 16人工 | 20人工 | 32人工 |
|---|---|---|---|
| 東京都(36,500円/人工) | 584,000円 | 730,000円 | 1,168,000円 |
| 福岡県(29,200円/人工) | 467,200円 | 584,000円 | 934,400円 |
| 広島県(26,700円/人工) | 427,200円 | 534,000円 | 854,400円 |
東京都で20人工なら73万円。ここに足場、塗料、養生材、諸経費が加わるわけですから、30坪の外壁塗装費用として流通している総額の目安と並べると、労務の賃金部分だけで総額の大半を占める計算になってしまいます。
この不整合をどう読むべきか。考えられる理由は複数あります。
- 公共事業労務費調査が反映している賃金水準と、戸建て塗装の現場の実勢に差がある可能性
- 上の人工数の試算(16〜32人工)そのものが、公的な裏付けのない流通値である
- 足場は塗装業者とは別の専門業者が担い、人工ではなく平方メートル単価で計上されることが多い
- 塗装工より単価の低い職種が一部の工程を担っている可能性(たとえば令和8年3月適用で普通作業員は東京都27,000円・福岡県24,100円)
どれが主因かを一次情報で特定することはできませんでした。はっきり言えるのは、公共工事の積算値をそのまま民間の戸建て塗装に当てはめて「いくらが正解」と計算することはできない、ということです。この記事の表は、金額の正解を出すためのものではなく、桁が2桁ずれていないかを確かめるためのものだと理解してください。
極端に少ない人工数の見積は、工程圧縮を疑う材料になる
金額よりも実害が出やすいのは、人工数が極端に少ない見積です。たとえば「2人×4日=8人工」で30坪の外壁塗装を仕上げるという内容であれば、上の工程表のどこかが省かれていることになります。
外壁塗装の工期は、人を増やせば比例して短縮できるものではありません。塗料には工程間隔時間が定められており、下塗りの次の工程に進むまで一定時間あけなければならないからです。
具体例を一次情報で確認しました。日本ペイントの外壁用複層塗材E主材「タイルラックEMA-Sベース」の標準塗装仕様では、下塗りから主材までの工程間隔は「4時間以上」、主材から上塗りまでも「4時間以上」、上塗りの塗り重ね乾燥時間は「16時間以上」と記載されています。さらに施工条件として「5℃未満、もしくは湿度85%以上である場合」は塗装を避けるべきとされています(日本ペイント タイルラックEMA-Sベース 製品資料(PDF))。
鉄部用の合成樹脂調合ペイント「Hi-CRデラックスエコII」では、下塗り後の上塗り施工までが「16時間以上」、上塗り後の養生も「16時間以上」とされ、同じく気温5℃未満・湿度85%以上では施工を避けるよう記載されています(日本ペイント Hi-CRデラックスエコII 製品資料(PDF))。
16時間以上という間隔は、実質的に1日に1工程しか進められないことを意味します。人を10人に増やしても、乾燥時間は短縮できません。だからこそ「職人を増やして工期を半分にします」という説明には無理があり、人工数が極端に少ない見積は、工程そのものが圧縮されている可能性を考える材料になります。
なお、使用する塗料の種類によって工程間隔時間は異なります。上記の数値はあくまで特定の製品の仕様であり、すべての外壁塗料に当てはまるものではありません。見積に書かれた塗料の製品名で、メーカーの標準仕様を確認するのが確実です。
見積書で人工・人数をどう確認するか
結論として、人工について確認すべきことは3つに絞られます。金額の高安を争うより、こちらのほうが実益があります。
1. 何人が何日入るのかを書面で出してもらう
「人工」とだけ書かれていて人数と日数の内訳がない場合は、工程表の提出を依頼してください。工程表には、どの日に何の作業を何人で行うかが書かれているのが通常です。これがないと、後から工期が延びたときにどちらの責任なのかが判断できません。
見積書の項目が「外壁塗装工事 一式」としかなっていない場合も同様です。見積書の「一式」とは何かで、どこまで分解を求めるべきかを整理しています。
2. 1人工の金額に何が含まれているか聞く
「この1人工には、法定福利費や現場管理費が含まれていますか」と聞くのが要点です。含まれていると答えるなら、別途「諸経費」が計上されていないかを確認します。二重計上を避けるためです。含まれていないと答えるなら、諸経費がどの項目に乗っているかを確認します。
この質問に答えられない担当者は、自社の見積の構造を把握していない可能性があります。それ自体が業者選びの判断材料になります。
3. 実際に作業する職人が自社か外注かを聞く
同じ20人工でも、自社の職人が施工する場合と、複数の下請を経由する場合では、1人工あたりに乗る経費が変わります。建設業は重層下請構造になっていることが多く、中間の段階ごとに対価が加わります。この構造については一人親方への外壁塗装の依頼で詳しく扱っているので、そちらを参照してください。
重要なのは、下請を使うことが悪いという話ではないことです。足場や防水のように専門性が分かれる工程では、専門業者に任せるほうが品質が安定します。確認したいのは「誰が責任を持つのか」であって、中間業者の数そのものではありません。
よくある質問
Q. 外壁塗装の1人工はいくらが相場ですか
民間工事の1人工の相場を示した公的な統計は見つかりませんでした。客観的な参照値として使えるのは公共工事設計労務単価で、令和8年3月適用の塗装工は東京都36,500円、福岡県29,200円、広島県26,700円などとなっています(いずれも所定労働時間内8時間あたり)。ただしこれは賃金部分のみの金額で、法定福利費や現場管理費・一般管理費は含まれていません。また公共工事の工事費の積算に用いるための単価であり、民間工事の人件費を拘束するものではありません。見積書の1人工がこれより高くても、それだけで不当とは言えません。
Q. 人工が労務単価の2倍以上あるのですが、ぼったくりでしょうか
それだけでは判断できません。1人工に法定福利費・現場管理費・一般管理費などがどこまで乗っているかは業者によって異なり、国土交通省も労務単価だけで代金を決めないよう業界に通知しています。確認すべきは「差額が何の費用なのか」です。1人工に諸経費が含まれているのかを聞き、別途「諸経費」の項目があるなら二重計上になっていないかを確かめてください。説明を求めても内訳が出てこない場合は、他社の見積と内訳の構造を並べて比較するのが現実的な対処になります。
Q. 30坪の外壁塗装は何人工くらいが普通ですか
一般に流通している人数・日数の目安から積み上げると16〜32人工、中心は20人工前後という桁感になります。ただしこの数値には公的な裏付けを確認できませんでした。国土交通省の公共建築工事標準単価積算基準には塗装の歩掛を定めた節がありますが、今回その節の数値を取得できませんでした。足場の仮設や外壁の形状、下地の劣化度合いで必要な手間は大きく変わるため、人工数も幅を持ちます。重要なのは正解の数字を当てることではなく、見積の人工数が極端に少なくないかを確認することです。
Q. 職人を増やせば工期は短くなりますか
比例して短くはなりません。塗料には工程間隔時間が定められており、日本ペイントの外壁用複層塗材E主材の標準仕様では上塗りの塗り重ね乾燥時間が16時間以上、鉄部用の合成樹脂調合ペイントでは下塗りから上塗りまで16時間以上と記載されています。乾燥を待つ時間は人数では縮められません。また気温5℃未満や湿度85%以上では施工を避けるべきとされており、天候でも工程は止まります。「増員で工期を半分に」という説明があった場合は、どの工程をどう短縮するのか具体的に聞いてください。
Q. 公共工事設計労務単価は自分で調べられますか
調べられます。国土交通省の報道発表、農林水産省の公共工事設計労務単価のページ、各都道府県の公表資料のいずれからもPDFで確認できます。見るときの注意は2つです。1つは適用年度で、単価は毎年3月に改定されるため、古い年度の表を見ると実勢からずれます。もう1つは職種と都道府県で、塗装工(職種番号12)の自分の都道府県の行を見る必要があります。全国平均の数値は全職種を含むため、塗装工の水準とは一致しません。
まとめ
外壁塗装の「人工」について、この記事の要点を整理します。
- 人工は「職人1人が1日働く量」を1とする単位。2人×10日=20人工と数える
- 1人工の金額を測る公的なアンカーは公共工事設計労務単価。令和8年3月適用の塗装工は東京都36,500円、福岡県29,200円(所定労働時間内8時間あたり)
- 単価は毎年3月に改定される。福岡県は3年で25,400円から29,200円へ約15%上昇した
- 単価には現場管理費(法定福利費の事業主負担分、研修訓練等の費用)および一般管理費等の諸経費が含まれていない。見積の1人工が単価より高いこと自体はおかしくない
- 単価は公共工事の工事費の積算に用いるためのもので、民間工事の人件費を拘束しない。見積と直接比べて高い安いを断定してはいけない
- 30坪で16〜32人工(中心20人工前後)という桁感は流通している目安で、公的な裏付けは確認できなかった
- 塗料の工程間隔時間(製品によって4時間以上・16時間以上など)があるため、増員で工期は比例短縮できない。人工数が極端に少ない見積は工程圧縮を疑う材料になる
人工の金額だけを睨んでいても答えは出ません。公的な単価で桁を確認し、そのうえで「何人が何日入るのか」「1人工に何が含まれているのか」を書面で確認するという順番が、結果として判断を誤りにくい手順です。
この記事で扱った人工・人数・労務単価は、見積全体のうち人件費の部分に限った話です。足場や塗料、諸経費を含めた全体像は費用内訳の記事、総額の幅は見積もり相場の記事で確認してください。

