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外壁の色選びの失敗は、センスの問題ではなく「決め方の手順」の問題であることがほとんどです。実際の調査でも、失敗の理由は「汚れが目立つ」「塗ってみたらイメージと違った」に集中しています。どちらも、色を決める前に確認する手順さえ踏んでいれば、かなりの部分を減らせた内容です。この記事では、個別の色の良し悪しではなく、色を決めるプロセスをどう設計するかを、順番・タイミング・確認方法・チェックリストの形で整理します。
外壁の色選びの失敗は「センス」ではなく「手順」で起きています
結論から書きます。色選びの失敗は、好みが悪かったから起きるのではなく、確認すべきことを確認しないまま決めてしまったから起きます。裏づけになる調査を見てみます。
外壁塗装紹介サイトを運営する株式会社鶴亀が、外壁塗装の経験者239人(女性159人/男性80人)を対象に2024年2月27日から3月9日にかけて実施したインターネット調査では、「外壁塗装の色選びで失敗したこと」の1位が「汚れが目立つ」で131人・54.8%、2位が「塗ってみたらイメージと違った」で48人・20.1%でした。3位以下は「好みの色ではない・オシャレではない」「周囲の家から浮いている」「色が褪せた」と続きます(出典:株式会社鶴亀 プレスリリース)。
この調査は民間企業がインターネットで任意回答を集めたものであり、公的統計ではありません。回答者の属性に偏りがある可能性もあります。ただ、上位2項目で全体の約7割を占めるという傾向は、色選びのどこに注意を向けるべきかを考えるうえで参考になります。
注目したいのは、上位に並ぶ失敗がいずれも「決める前に検証できた」種類のものだという点です。汚れの目立ちやすさは色の明度と関係し、イメージとの差は色見本の見方と関係します。周囲から浮くかどうかは、事前に近所を歩けば見当がつきます。つまり、これらは感性ではなく手順の問題です。
失敗パターン別・原因と防げる工程の一覧
失敗の種類ごとに、原因と「どの段階なら防げたか」を整理すると次のようになります。
| 失敗パターン | 主な原因 | 防げる段階 | 具体的な防ぎ方 |
|---|---|---|---|
| 汚れが目立つ | 明度が高すぎる/低すぎる。艶の設定を決めていない | 候補を絞る前 | 汚れの許容度を先に決め、中間の明度帯から候補を選ぶ |
| 塗ってみたらイメージと違った | 小さい色見本だけで決めた(面積効果)。室内の照明下で判断した | 契約前~着工前 | A4以上の塗り板を屋外・時間帯を変えて確認する |
| 周囲の家から浮いている | 周辺の外壁色を調べていない | 候補を絞る前 | 半径100メートル程度を歩いて、外壁の色の傾向を記録する |
| サッシや屋根と合わない | 変えられない色を先に確認していない | 候補を絞る前 | サッシ・屋根・玄関ドアの色を先に固定してから外壁色を選ぶ |
| 色が褪せた | 鮮やかな色は退色が見えやすい。塗料グレードとの兼ね合い | 塗料を決める段階 | 彩度の高い色を選ぶなら、退色前提で塗り替え周期を考える |
| 家族の誰かが納得していない | 決定プロセスに参加していない人がいた | 契約前 | 候補を3つに絞った段階で全員に見せ、決定者を決めておく |
| 付帯部との色差が想定外 | 雨樋・破風・軒天の色を指定していない | 見積書の作成時 | 見積書に部位ごとの色番号を書いてもらう |
表を見ると、ほとんどの失敗が「候補を絞る前」か「契約前」に対処できることが分かります。逆に言えば、色の話を業者との打ち合わせの最後に回すと、対処できる余地が小さくなります。外壁塗装全般の失敗例については外壁塗装の失敗例も参考になります。
最初にやるのは「変えられない色」の棚卸しです
色選びの最初の作業は、色見本帳を開くことではありません。その家で色を変えられない部分を書き出し、そこから逆算することです。外壁は家の面積の大部分を占めますが、家の外観を構成する要素は外壁だけではありません。サッシ、玄関ドア、屋根、外構、隣家。これらの色はすでに決まっており、多くは塗装工事では変えられません。
順番を逆にすると失敗します。外壁の色を先に決めてしまうと、あとから「サッシの色と合わない」と気づいても、直せるのは外壁の側だけです。制約の強い側から固定し、自由度の高い外壁を最後に決めるのが合理的な順番になります。
サッシの色は数値で確認できます
アルミサッシの色は、メーカーがマンセル値を公表していることがあります。三協アルミが公開しているアルミカラーの資料では、代表的な色のマンセル値(C光源)が次のように示されています。
| アルミカラー名 | マンセル値(C光源) | 色の性格 |
|---|---|---|
| ホワイト(WH) | 6.1GY 9.2/0.3 | ほぼ無彩色に近い高明度 |
| サンシルバー(SLC) | 10.0Y 8.7/0.2 | ほぼ無彩色に近い高明度 |
| アーバングレー(UC) | 1.0Y 6.6/1.2 | わずかに黄み寄りの中明度グレー |
| ブロンズ(BR) | 9.7YR 4.3/2.6 | 暖色系。彩度がやや高い |
| ダークブロンズ(BD) | 5.9YR 2.7/0.8 | 暖色系の低明度 |
| ブラック(KC) | 1.3G 2.2/0.1 | ほぼ無彩色の低明度 |
ここから読み取れる実務的な意味は明快です。ホワイト・サンシルバー・ブラックのサッシは彩度がほぼゼロで、どんな外壁色とも衝突しにくい。一方、ブロンズは彩度2.6の暖色で、青みの強い外壁色と並べると互いを打ち消し合うことがあります。ブロンズサッシの家で寒色系の外壁を検討する場合は、この点を先に業者に伝えておくとよいでしょう。
なお、サッシの色そのものを変える手もありますが、コストがかかります。外壁塗装110番の情報では、アルミサッシの塗装は1か所あたり4万円から6万円程度、交換は1か所あたり15万円から20万円程度が目安とされています(出典:外壁塗装110番「アルミサッシを塗装や交換するときの価格相場と注意点」)。アルミは塗膜が密着しにくく剥がれやすい素材であり、専用の下地材を使う前提の作業になります。窓の数が10か所あれば、塗装でも数十万円規模になる計算です。
部位ごとに「変えられる/変えにくい」を仕分ける
棚卸しの結果を、変更の可否と費用感で整理すると次のようになります。外壁塗装の工事のなかで一緒に色を変えられるものと、別工事になるものを分けて考えるのがポイントです。
| 部位 | 塗装工事で色を変えられるか | 変える場合の費用感 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 外壁 | 変えられる(主役) | 本体工事に含まれる | 最後に決める。自由度が最も高い |
| 雨樋・破風・軒天・水切り | 変えられる(付帯部塗装) | 本体工事に付帯部として計上 | 色番号を見積書に明記させる |
| 屋根(スレート・金属) | 塗装なら変えられる | 屋根塗装として別途計上 | 同時施工なら足場が共用できる |
| 屋根(瓦) | 基本的に変えられない | 葺き替えが必要 | 瓦の色を制約として扱う |
| アルミサッシ | 変えにくい | 塗装 約4万〜6万円/か所、交換 約15万〜20万円/か所 | 原則そのままの色を前提に外壁色を選ぶ |
| 玄関ドア | 変えにくい | ドアのみ入れ替えで20万〜30万円程度 | カバー工法なら半日〜1日で交換可能 |
| 基礎・外構・門柱 | 物による | 別途見積もり | 外壁の下端と連続して見えるため無視しない |
| 隣家・向かいの家の外壁 | 変えられない | ー | 並んだときの見え方を現地で確認する |
玄関ドアについて補足します。ホームプロによれば、ドアのみを入れ替えるカバー工法・扉交換工法の相場は20万円から30万円程度、工期は扉交換工法で約3時間、カバー工法で半日から1日とされています。間口を変える在来工法になると40万円以上、工期は4日から1週間程度です。玄関ドアの色を変える選択肢は現実的に存在しますが、外壁塗装の予算とは別枠で考える必要があります。
地域によっては行政の色彩基準も「変えられない制約」になります
景観計画区域や景観地区に指定されている地域では、建築物の外壁の色にマンセル値による基準が定められていることがあります。たとえば大阪府の景観色彩ガイドラインでは、外壁の基調色について「R(赤)、YR(橙)系の色相の場合は彩度6以下」「Y(黄)系の色相の場合は彩度4以下」「その他の色相の場合は彩度2以下」という考え方が示されています(出典:大阪府景観色彩ガイドライン)。
この数値は大阪府のガイドラインのものであり、全国一律の基準ではありません。自治体ごとに区域も数値も異なり、そもそも規制がない地域も多くあります。ただ、注目すべきは「赤・橙系は彩度6まで許容されるが、青や緑は彩度2まで」という色相による差です。これは、日本の住宅地では暖色系の低彩度色のほうが景観になじみやすいという考え方が背景にあります。規制のない地域でも、色を絞り込むときの一つの目安として使えます。
自宅が景観計画区域に入っているかどうかは、市区町村の都市計画課や景観担当部署で確認できます。塗り替えが届出の対象になるかは自治体によって扱いが違うため、鮮やかな色を検討している場合は事前に問い合わせておくと安全です。
色を決められるタイミングは3つあり、できることが違います
ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。多くの人は「色は工事が始まるまでに決めればいい」と考えていますが、実際には契約前・着工前(塗料発注前)・下塗り後という3つのタイミングがあり、それぞれ「できること」と「変更にかかるコスト」がまったく違います。
前提として工程を確認します。外壁塗装の一般的な工期は10日から15日程度で、足場架設1〜2日、高圧洗浄1〜2日、乾燥1〜2日、下地補修、養生、下塗り1〜2日、中塗り1〜2日、上塗り1〜2日、付帯部塗装1〜2日、足場解体1日という流れが一般的です(出典:ユーコーコミュニティー「外壁塗装の工期」)。この日数はあくまで一般的な目安で、天候や建物の状態によって前後します。
この工程のなかで、色を無償で変えられるのは実質的に塗料を発注する前までです。着工してからの色変更は、新しく塗料を用意する必要があるため追加費用が発生します。塗装業者の説明でも、契約内容どおりの色で工事が始まったあとに「イメージと違ったので別の色に変えたい」というケースは、施主都合の追加工事として扱われるとされています(出典:株式会社佐藤塗装「外壁・屋根塗装で追加費用が発生する場合」)。
タイミング別にできることを比べる
| タイミング | できること | 変更のコスト | この段階でやるべきこと |
|---|---|---|---|
| 契約前 | 色の方向性を自由に変えられる。塗り板の作成も依頼できる | 原則なし | 候補を3色前後に絞り、塗り板を手配する |
| 着工前(塗料発注前) | 色番号の最終確定。付帯部の色の指定 | 原則なし(発注済みなら発生する可能性) | 色番号を書面で確認し、発注のタイミングを聞く |
| 足場架設〜高圧洗浄 | この時点でも変更できる場合がある | 塗料が未発注なら小さい。発注済みなら塗料代が発生 | 変更したいなら即日で伝える |
| 下塗り後・中塗り前 | 実際に塗られた色を試し塗りで確認できる | 変更するなら塗料の再手配で追加費用 | 試し塗りの了承を事前に得ておく |
| 中塗り以降 | 実質的に変更は困難 | 塗り直し相当の費用と工期延長 | 確認して問題がなければ承認する |
この表から導ける実務的な結論は3つです。
- 塗り板を頼むなら、契約前に頼む。着工が決まってからでは間に合わないことがある
- 契約時に「塗料はいつ発注しますか」と聞き、色の最終変更期限を明確にしておく
- 下塗り後の試し塗りは、やるなら契約時点で合意しておく。当日いきなり頼んでも工程が止まる
とくに2つめは軽視されがちです。塗料は色ごとに調色して手配されるため、発注後の変更はそのまま材料費の損失になります。「いつまでなら無償で変えられますか」という一言を契約時に聞いておくだけで、後戻りできる余地の大きさが変わります。追加費用が発生する条件そのものについては、契約前に書面で確認しておくのが安全です。
色見本の確認方法は5段階あり、精度と手間が違います
「塗ってみたらイメージと違った」という失敗を減らす鍵は、どの精度の色見本まで確認してから決めたかにあります。確認方法には段階があり、精度が高いものほど費用と日数がかかります。
色を指定する共通言語になるのが、一般社団法人日本塗料工業会が発行する「塗料用標準色」の色見本帳です。最新版は2024年P版で、収録色数は新色13色を含む600色。ポケット版は税込3,960円、ワイド版は2分冊で税込28,930円とされています。次版の発行は2027年の予定です(出典:日本塗料工業会「2024年P版 塗料用標準色」)。
塗り板については、外壁塗装110番の解説で「A4サイズの板」に実際の塗料を塗って作るもので、手配には1週間から10日かかるとされています。また、すべての業者が対応しているわけではないことにも触れられています(出典:外壁塗装110番「色見本や塗り板で色を選ぶときの注意点」)。
| 確認方法 | 精度の目安 | 費用 | 所要日数 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| カラーシミュレーション(画面) | 低い。モニターの発色に左右される | 無料のことが多い | 即日 | 方向性を家族で共有する最初の1歩 |
| メーカーカタログの色見本 | 中。実際の塗料の発色に近づけて作られている | 無料 | 即日〜数日 | 塗料の製品を絞り込むとき |
| 日塗工の色見本帳(ポケット版) | 中。色数が多く比較しやすいが1枚が小さい | 税込3,960円(2024年P版) | 即日〜数日 | 色番号で会話するための共通言語 |
| 日塗工の色見本帳(ワイド版) | 中〜高。色票が大きい | 税込28,930円(2024年P版・2分冊) | 即日〜数日 | 業者側が持っていることが多い |
| 塗り板サンプル(A4程度) | 高い。実際の塗料と艶で確認できる | 業者により無料〜有料 | 1週間〜10日 | 最終候補2〜3色の絞り込み |
| 現場での試し塗り | 最も高い。実際の壁・実際の光 | 業者との事前合意が必要 | 工程内で実施 | 着工後の最終確認 |
面積効果をどう補正するか
小さい色見本と実際の外壁で色の印象が変わる現象を面積効果といいます。外壁塗装110番の解説では、小さい面積より大きい面積のほうが明るく、鮮やかに見える傾向があるとされ、明るい色を選ぶときは少し暗めを、暗い色を選ぶときは少し明るめを選ぶことが勧められています。また、室内で見るのと屋外で見るのとでは色の見え方が違うため、屋外での確認が推奨されています。
実務的には、次の手順で見ると差が縮まります。
- 色見本や塗り板は必ず屋外に持ち出して、直射日光の下と日陰の両方で見る
- 晴れの日の午前・午後・夕方の3回、同じ場所で見比べる
- 塗り板は壁に立てかけて、目線の高さではなく実際の壁の角度・距離で見る
- 手に持たず、自分から数メートル離して見る(手元で見ると明るく感じやすい)
- 候補色を単独で見ず、必ずサッシや屋根と並べて見る
- 曇りの日にも1回見る。曇天は色みが最も分かりにくい条件です
カラーシミュレーションは方向性を共有するには便利ですが、モニターの色設定や画像の元写真の明るさに影響されます。シミュレーションだけで最終決定しないことが、失敗を減らす基本になります。
色は「イメージ」ではなく番号で決めて、見積書に書いてもらう
「明るめのベージュで」という決め方は、失敗の温床です。色は日本塗料工業会の色票番号で指定し、その番号を見積書または仕様書に書いてもらうのが、認識のずれを防ぐ最も確実な方法です。
日塗工の色票番号の読み方
日本塗料工業会の色票番号は、1995年以降マンセル値に基づいた三属性表示で構成されています。たとえば「L15-60V」という番号は、次のように分解できます(出典:日本塗料工業会「色票番号について」)。
- L … 発行年記号(アルファベット1文字)
- 15 … 色相区分(有彩色は数字2桁、無彩色は「N」)
- 60 … 明度区分(数字2桁)
- V … 彩度区分(アルファベット1文字)
重要なのは、改訂で発行年記号が変わっても、それ以外の部分が同じであれば同一色という原則です。日本塗料工業会は「P15-90B = K15-90B」という例を挙げています。つまり、業者が古い版の見本帳を持っていても、番号の後半が一致していれば同じ色を指しています。手元の見本帳の版が違っても慌てる必要はありません。
また、無彩色は「N」で表され、後ろの数字が明度を示します。N-90に近づくほど白く、N-20に近づくほど黒くなります。グレーを検討している場合は、この数字で明度帯を会話できるようにしておくと精度が上がります。詳しくはグレー外壁の後悔で解説しています。
見積書に書いてもらう項目
国土交通大臣指定の住宅リフォーム紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)は、見積書のセルフチェックとして「工事箇所、数量、仕様や単価を確認しましょう」「工事範囲を必ず再確認しましょう」「追加工事が発生した場合について事前に打ち合わせ」を挙げています(出典:住まいるダイヤル「リフォームの基礎知識」)。色は、この「仕様」に含まれる部分です。
具体的には、次の項目が書面に落ちているかを確認します。
- 外壁の色番号(日塗工番号またはメーカー品番)
- ツートンの場合は上下・面ごとの色番号と、境目の位置
- 艶の設定(艶あり・7分・5分・3分・艶消しのいずれか)
- 雨樋・破風・軒天・水切り・帯板など付帯部それぞれの色
- 屋根も塗る場合は屋根の色番号
- 塗料のメーカー名・製品名・グレード
- 色を変更する場合の期限と、その後に発生する費用の考え方
付帯部の色は、忘れられやすい割に見た目への影響が大きい部分です。外壁を明るくしたのに雨樋が黒のままで線が目立つ、というのはよくある話です。見積書を受け取ったら、色の欄が空欄のままになっていないかを必ず確認してください。
艶と汚れの前提を先に決めると、候補は自然に絞れます
色の候補が多すぎて決められないという場合、順番が逆になっている可能性があります。色から入るのではなく、「汚れをどこまで許容するか」「艶をどうするか」という前提条件を先に決めると、候補は自動的に絞られます。
先の鶴亀の調査で、色選びの失敗の1位が「汚れが目立つ」(131人・54.8%)だったことを思い出してください。汚れの見え方は、外壁の色と汚れそのものの色との明度差で決まります。外壁に付着する汚れには、砂ぼこりや排気ガスによる黒っぽい汚れ、藻やカビによる緑・黒の汚れ、雨だれの筋汚れなど複数の種類があります。
ここから導ける原則はシンプルです。
- 純白に近い高明度の色は、黒っぽい汚れとの明度差が大きく、汚れが目立ちやすい
- 真っ黒に近い低明度の色は、砂ぼこりや白い水垢との明度差が大きく、白い汚れが目立ちやすい
- ベージュ、グレージュ、ライトグレーなど中間の明度帯は、両方向の汚れとの明度差が小さくなる
ただし「中間色なら汚れない」わけではありません。汚れは同じように付着していて、見えにくいだけです。定期的な確認は色にかかわらず必要になります。黒い外壁を検討している場合の具体的な注意点は黒い外壁のデメリットにまとめています。
彩度の高い色は退色の見え方が変わります
色あせも、色の性質と関係します。塗料に使われる顔料には有機顔料と無機顔料があり、有機顔料は炭素を中心とした化合物で鮮やかな色を出せる一方、紫外線や雨に弱く色褪せが早い傾向があるとされています。無機顔料は金属を含む化合物で、白・ベージュ・グレー・茶色といった落ち着いた色に使われ、紫外線や熱に強いとされています(出典:外壁塗り替えガイド「有機顔料と無機顔料の違い」)。
この説明は塗料メーカーの公式資料ではなく塗装業者による解説であり、実際の退色の速さは塗料のグレードや添加される紫外線吸収剤の性能にも左右されます。「この色なら何年もつ」という断定はできません。ただ、赤・青・緑といった彩度の高い色を選ぶ場合は、退色が起きたときに変化が目に見えやすいという前提で検討したほうが、後悔は少なくなります。
艶は色より先に決める
同じ色番号でも、艶ありと艶消しではまったく違う印象になります。艶ありは光を反射して明るく鮮やかに見え、艶消しは落ち着いて見えます。塗り板を作ってもらうときは、艶の設定も指定して作ってもらわないと確認になりません。艶の段階には艶あり・7分艶・5分艶・3分艶・艶消しといった区分があり、選び方は艶あり・艶なしの選び方で解説しています。
順番としては、「汚れの許容度を決める → 艶を決める → 明度帯を決める → その範囲で色相を選ぶ」という流れになります。この順番で進めると、最初に600色から選ぶという無理な作業をしなくて済みます。
家族の合意をどう作るか、契約前チェックリスト
意外に多いのが、家族の誰かが納得しないまま工事が進んでしまうケースです。外壁の色は10年以上そこにあり続けるうえ、外壁塗装は家族全員の目に毎日入るものです。決定プロセスに全員を巻き込んでおくことが、工事後の不満を減らします。
参考になるデータとして、株式会社AlbaLinkが2021年11月9日から15日にかけて家を購入した経験のある500人(女性334人/男性166人)を対象に実施したインターネット調査があります。この調査では、56.8%が家の購入時に夫婦の意見が合わなかった経験があると回答し、意見が割れた項目の3位に「内装・デザイン」が入っています(出典:株式会社AlbaLink プレスリリース)。
これは新築購入時の調査であり、外壁塗装の色決めに関する調査ではありません。また民間企業のインターネット調査であり、公的統計ではありません。それでも、住まいの見た目に関する判断は家庭内で意見が分かれやすい領域であるという傾向は読み取れます。
意見が割れたときの進め方
実務的には、次のようなルールを先に決めておくと話が進みます。
- 候補は3色までに絞ってから家族に見せる。10色を見せると議論が発散します
- 「好き・嫌い」ではなく「汚れが気になるか」「近所から浮かないか」という判断軸で話す
- 最終決定者を先に決めておく。全員一致を目指すと決まりません
- 反対する人には「代わりにどの候補なら受け入れられるか」を聞く。否定だけで終わらせない
- 塗り板が届いたら、必ず全員が屋外で実物を見る場を設ける
- 決まったら色番号をメモして共有する。「あのベージュ」では後で食い違います
契約前に確認する12項目
最後に、契約書にサインする前の確認事項をまとめます。
- サッシ・玄関ドア・屋根・外構の色を書き出したか
- 自宅が景観計画区域に入っていないか、自治体に確認したか
- 近隣を歩いて、周辺の外壁色の傾向を見たか
- 汚れの許容度と艶の設定を先に決めたか
- 候補を3色前後に絞ったか
- 最終候補の塗り板を依頼したか(手配に1週間から10日)
- 塗り板を屋外・複数の時間帯・複数の天候で見たか
- 面積効果の補正(明色は少し暗め、暗色は少し明るめ)を考慮したか
- 色番号が見積書または仕様書に記載されているか
- 付帯部それぞれの色が指定されているか
- 塗料の発注時期と、色変更の期限を確認したか
- 家族全員が実物を見て、最終決定者が決まっているか
この12項目のうち、時間がかかるのは塗り板の手配だけです。逆に言えば、塗り板の手配日数を工程に織り込んでおけば、残りは自分の手で進められます。人気の色の傾向を知りたい場合は外壁塗装の人気色ランキング、2色使いを検討している場合は外壁ツートンの組み合わせもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 色を決めるのに、どのくらいの期間を見ておけばよいですか
塗り板の手配に1週間から10日かかるとされているため(外壁塗装110番)、そこから逆算すると2週間から1か月程度を見ておくと余裕があります。候補を絞るのに1〜2週間、塗り板の手配に1週間から10日、届いた塗り板を複数の天候で見るのに数日、という配分です。契約から着工までの期間が短い業者の場合、塗り板を作る時間が取れないこともあるため、色にこだわりたい場合は契約前の相談段階で伝えておくとよいでしょう。
Q. 工事が始まってから色を変えることはできますか
塗料が未発注であれば変更できる場合がありますが、発注済みの場合は追加費用が発生する可能性が高いです。塗装業者の解説でも、契約どおりの色で工事が始まったあとに施主の都合で色を変える場合は、新たに塗料を用意する必要があるため追加費用が発生するとされています(株式会社佐藤塗装)。金額は塗料のグレードと数量によって変わるため一律には言えません。契約時に「塗料の発注はいつですか」「色を変えられるのはいつまでですか」と確認しておくのが確実です。
Q. 日塗工の色見本帳は自分で買ったほうがよいですか
必須ではありません。多くの業者が持参してくれます。ただ、自宅でじっくり検討したい場合、ポケット版は税込3,960円(2024年P版)で購入できます。収録色数は新色13色を含む600色です(日本塗料工業会)。注意点として、ポケット版は色票が小さいため、これだけで最終決定するのは避けたほうがよいでしょう。用途としては「業者と色番号で会話するための共通言語」と考えるのが現実的です。なお発行年記号が違っても、それ以外の部分が同じなら同一色として扱えます。
Q. サッシの色が古いブロンズ系で、外壁の色が決めづらいのですが
ブロンズ系のアルミカラーは、三協アルミの資料ではブロンズ(BR)がマンセル9.7YR 4.3/2.6、ダークブロンズ(BD)が5.9YR 2.7/0.8とされており、いずれも暖色系(YR=橙系)の色相です。そのため、同じ暖色系のベージュやアイボリー、ブラウン系とは色相が近く、比較的まとまりやすい傾向があります。青みの強いグレーや寒色系を合わせる場合は、色相が離れるぶん対比が強く出ます。合わないと決まるわけではありませんが、塗り板をサッシの横に当てて確認する工程を必ず入れてください。サッシ自体を塗装する選択肢もありますが、1か所あたり4万円から6万円程度が目安とされており(外壁塗装110番)、窓の数によっては大きな金額になります。
Q. カラーシミュレーションだけで決めてはいけませんか
方向性の共有には有効ですが、最終決定の根拠にするのは避けたほうがよいと考えられます。理由は3つあります。1つめは、モニターやスマートフォンの画面設定によって発色が変わること。2つめは、元にする写真の撮影条件(天候・時間帯)で印象が変わること。3つめは、艶の質感が画面では再現しにくいことです。外壁塗装110番も、室内で見るのと屋外で見るのとでは色の見え方が違うため屋外での確認を勧めています。シミュレーションで候補を3色程度に絞り、そこから塗り板で確認するという二段構えが現実的です。
まとめ
外壁の色選びの失敗は、色そのものではなく、決める順番とタイミングの設計で大きく減らせます。この記事の要点を整理します。
- 経験者239人への調査(株式会社鶴亀・2024年)では、失敗の1位が「汚れが目立つ」54.8%、2位が「イメージと違った」20.1%。どちらも事前に検証できる内容です
- 最初にやるのは色見本を開くことではなく、サッシ・玄関ドア・屋根といった変えられない色の棚卸しです
- サッシの塗装は1か所4万〜6万円、交換は15万〜20万円程度(外壁塗装110番)。原則は既存色を制約として扱います
- 色を変えられるのは実質的に塗料の発注前まで。着工後の施主都合の変更は追加費用の対象になります
- 塗り板の手配には1週間から10日かかるため、契約前に依頼するのが基本です
- 色は日塗工の色票番号で指定し、付帯部を含めて見積書に書いてもらう
- 汚れの許容度と艶を先に決めると、候補は自然に絞り込めます
- 家族の合意は、候補を3色に絞ってから、判断軸と最終決定者を決めて進めます
色の善し悪しには正解がありませんが、決め方の手順には再現性があります。制約から逆算し、精度の高い方法で確認し、番号で書面に残す。この3つを守るだけで、「塗ってみたら違った」という結末はかなり避けられるはずです。なお、この記事で紹介した調査はいずれも民間企業によるインターネット調査であり、公的統計ではありません。数値は傾向をつかむための参考としてご覧ください。
見積もりを取るときに使えるサービス
ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

