【PR】この記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。リンク経由でお申し込みがあった場合、当サイトは提携先から報酬を受け取ることがあります。報酬の有無によって記事内の評価を変えることはありません。詳細は広告掲載ポリシーをご覧ください。
外壁塗装を安くする方法は、突き詰めると「削ってよいもの」と「削ってはいけないもの」を分けることに尽きます。中間マージン、不要な付帯工事、過剰なグレードの塗料、足場の重複──ここは削っても建物は傷みません。一方で足場・下地補修・シーリング・3回塗り・養生を削ると、数年で塗り直しになり結局高くつきます。この記事では、この二分法を軸に、見積書のどこを見れば「安さの正体」が判別できるかまで整理します。
結論:安くする方法は「削ってよいもの」と「削ってはいけないもの」を分けること
外壁塗装の費用は、大きく2種類のお金でできています。建物の寿命に直結するお金と、建物の寿命とは無関係なお金です。安くするというのは、後者だけを狙って減らす作業のことです。前者に手を付けた瞬間、それは節約ではなく前借りに変わります。
なぜこの分け方が決定的かというと、外壁塗装は「工事が終わった直後には、良い工事と悪い工事の区別がつかない」商品だからです。3回塗るべきところを2回で終えても、塗り立ての壁はきれいに見えます。下地のひび割れを埋めずに上から塗っても、その日は分かりません。差が出るのは3年後、5年後です。だからこそ、契約する側は「何にいくら払うか」ではなく「その項目は削ってよい項目か」で判断する必要があります。
まず全体像を、削ってよいもの・いけないものの一覧で確認してください。以降の章は、この表を1行ずつ展開していく構成になっています。
| 分類 | 項目 | 削れる理由/削れない理由 |
|---|---|---|
| 削ってよい | 中間マージン | 塗る職人の手も塗料も変わらない。取引の経路が変わるだけ |
| 削ってよい | 不要な付帯工事 | 今回まとめてやる必然性がない部分は次回に回せる |
| 削ってよい | 過剰なグレードの塗料 | 建物の残り寿命を超える耐久性にはお金を払う意味が薄い |
| 削ってよい | 足場の重複 | 外壁と屋根を別々にやると足場を2回組むことになる |
| 削ってよい | 時期の割高分 | 繁忙期を外すと交渉の余地が生まれる場合がある |
| 削ってよい | 使わなかった助成金・保険 | 要件に当てはまるなら申請しないぶんだけ損になる |
| 削ってはいけない | 足場 | 労働安全衛生規則で仕様まで定められた法定設備 |
| 削ってはいけない | 下地補修・ケレン | 下地が動けば上の塗膜も割れる。塗料の性能が出ない |
| 削ってはいけない | シーリング(コーキング) | 雨水の侵入口。塗膜より先に寿命が来る部位 |
| 削ってはいけない | 3回塗り(下塗り・中塗り・上塗り) | 規定の塗布量に届かず、カタログ上の耐用年数が成立しない |
| 削ってはいけない | 養生 | やり直しやトラブルの原因。仕上がりの精度に直結する |
この記事の残りは、上半分(削ってよいもの)をどう削るか、下半分(削ってはいけないもの)がなぜ削れないか、そして見積書を見ただけでどちらが削られているか判別する方法の3部構成です。
削ってよいもの:建物の寿命に影響しない6つのコスト
結論から言えば、削ってよいコストの多くは「誰から買うか」「いつ買うか」「どこまで買うか」で決まります。工事の中身そのものではなく、取引の条件です。だから減らしても壁は傷みません。
1. 中間マージン ─ 塗る人は同じでも金額は変わる
もっとも大きく、かつ建物に一切影響しないのが中間マージンです。ハウスメーカーや大手リフォーム会社、訪問販売会社が窓口になった場合、実際に塗るのは提携先の塗装会社であることが少なくありません。このとき、契約先が取る利益と、実際に施工する会社が取る利益が二重に乗ります。
ある塗装関連の解説では、この構造によって「本来の適正費用から10〜30%も費用が高くなることもある」とし、施工費100万円の工事に2社ぶんのマージンが乗って140万円になる例を挙げています(出典:外壁塗装コンシェルジュ)。ただしこの数字は業界解説サイトによるもので、経路別のマージン率を集計した公的な統計は見つかりませんでした。幅として受け止めてください。
対策は「自社施工の会社に直接頼む」の一点です。確認のしかたは次の3つです。
- 「実際に塗るのは御社の社員ですか、協力会社ですか」と直接聞く。下請けに出すこと自体は違法でも悪でもありませんが、金額の構造は変わります
- 建設業許可の有無を確認する。塗装工事は請負金額が税込500万円未満なら許可がなくても請け負えます(出典:国土交通省「建設業の許可」)。つまり許可がないこと自体は違法ではありませんが、許可業者は経営や技術者の要件を満たして登録されているという情報になります
- 塗装技能士がいるかを聞く。技能検定は国が定める国家検定制度で、1級の受検には原則7年の実務経験が必要とされています(出典:中央職業能力開発協会)
2. 外壁と屋根を同時にやり、足場を1回にする
足場は建物1棟に対して1回ぶんの費用です。外壁を今年、屋根を3年後に別々に頼めば、足場代を2回払うことになります。延床30坪の2階建てで足場代は15万〜25万円前後が一つの目安ですから、単純に言えばこの金額が丸ごと重複します。
ただし言い方には注意が必要です。同時施工は「今回の支払額が安くなる」のではありません。屋根の工事費が加わるぶん、今回出ていく総額はむしろ増えます。正しくは「別々にやるより生涯コストで得になりうる」です。この差額の内訳は外壁と屋根の同時施工で実際に積算しています。
3. 過剰なグレードの塗料を選ばない
塗料の㎡単価は、アクリル1,000〜1,800円、ウレタン1,600〜2,500円、シリコン2,000〜3,500円、ラジカル2,800〜3,500円、フッ素3,000〜5,500円、無機3,800〜6,000円がおおよその幅です。延床30坪の塗装面積を約119㎡(延床坪数×3.3×係数1.2)とすると、シリコンとフッ素の塗料代の差はおよそ12万〜24万円になります。延床40坪なら塗装面積はさらに広がるため、同じグレード差でも金額差は大きくなります(40坪の外壁塗装の相場)。
高いグレードが常に正解ではありません。判断軸は「建物をあと何年使うか」です。10年以内に建て替えや売却を考えている、あるいはご高齢で次回の塗り替えを想定していない──こうした場合、耐用年数15〜20年のフッ素に上乗せした差額は回収されないまま終わります。逆に、まだ30年以上住み続けるつもりなら、上のグレードのほうが結果的に有利になる計算が成り立ちます(後述の生涯コストの章で試算します)。
なお無機塗料の耐用年数は15〜25年とされますが、市場に出てからの年数が浅く、実際に20年以上経過した実績データが少ない点は割り引いて考える必要があります。
4. 今回やらなくてよい付帯工事を切り分ける
見積書には、雨樋・破風板・軒天・雨戸・水切りといった付帯部の塗装が並びます。これらは足場がある間にやるのが効率的なのは事実ですが、すべてが今回必須とは限りません。たとえば5年前に交換したばかりの雨樋、まだ劣化していない雨戸などは、状態を見て次回に回す判断もあり得ます。
大切なのは「いらないから外す」ではなく「今の劣化状態を業者と一緒に見たうえで外す」ことです。現地調査のとき、付帯部それぞれについて「これは今回やる必要がありますか、次回でも間に合いますか」と聞いてください。理由を説明できる会社なら、その説明自体が判断材料になります。
5. 繁忙期を外す
塗装業界では、気候が安定する春(3〜5月)と秋(9〜11月)が繁忙期、夏(6〜8月)と冬(12〜2月)が閑散期とされます。閑散期は依頼が少ないぶん「思わぬ値引きをしてくれる業者もいる」と説明されています(出典:外壁塗装の知恵袋)。
ただし、これは値引きが約束されるという意味ではありません。閑散期でも価格を動かさない会社は普通にあります。また梅雨時期や真冬は雨・低温・高湿度で工期が延びやすく、塗料メーカーが定める施工条件(気温5℃以上・湿度85%以下が一般的な基準)を満たせない日が増えます。時期の活用は「交渉の余地が生まれることがある」程度に見積もり、工程を急がせない前提で使うのが安全です。
6. 助成金・火災保険という「使えるのに使っていないお金」
自治体の助成金は、外壁塗装そのものを目的にした制度は多くなく、省エネ(遮熱塗料)・耐震・地域経済循環といった別目的の制度に塗装が含まれる形が中心です。着工前の申請が要件になっている制度が多く、契約後に気づいても手遅れになりがちです。制度の探し方は外壁塗装の助成金にまとめました。
火災保険は、台風・強風・雹・大雪などの自然災害で壊れた場合に限って使える可能性があります。経年劣化やさびによる損害は対象外です。「保険を使えば実質0円」と持ちかける業者には別のリスクがあります。線引きは屋根修理と火災保険の適用条件で整理しています。
削ってはいけないもの:ここを削ると数年で塗り直しになる
結論から言うと、次の5項目は「安くなった」のではなく「まだ払っていないだけ」です。いずれも数年後に、より大きな金額として戻ってきます。
足場 ─ 法令で仕様まで決められた設備
足場は「あったほうが安全」という任意の設備ではありません。労働安全衛生規則は、高さ2メートル以上の箇所で作業を行うときに作業床を設けることを事業者に義務づけ(第518条)、作業床の端や開口部には囲い・手すり等を設けること(第519条)、作業床の床材のすき間は3センチメートル以下・床材と建地とのすき間は12センチメートル未満とすること(第563条)、一定規模以上では足場の組立て等作業主任者を選任すること(第565条)、作業開始前に墜落防止設備を点検すること(第567条)まで定めています(出典:厚生労働省 労働局「足場に関する主な規定」)。
つまり足場は、法令が寸法単位で管理している設備です。ここを値切ることは、単価を下げるか、本数を減らすか、簡易な足場に替えるかのいずれかを意味します。相場の幅とその理由は外壁塗装の足場代の相場で分解しています。
下地補修・ケレン ─ 塗料の性能が出るかどうかの前提
ケレン(さび落とし・目粗し)の㎡単価は200〜500円、高圧洗浄は100〜400円が目安です。金額としては小さい項目ですが、ここを飛ばすと、その上に何を塗っても密着しません。ひび割れを埋めずに塗れば、下地が動いたときに塗膜も一緒に割れます。15年もつはずの塗料が3年で剥がれる原因の多くは、塗料ではなく下地側にあります。
シーリング ─ 塗膜より先に寿命が来る部位
サイディング外壁の目地やサッシまわりのシーリングは、延床30坪で総延長150〜200mが目安です。打ち替え(古いものを撤去して充填し直す)が900〜1,500円/m、増し打ち(上から足す)が500〜1,000円/m。150mで計算すると、打ち替えは13万5,000円〜22万5,000円、増し打ちは7万5,000円〜15万円と、倍近い差になります。
この差額は大きいので、安い見積書ほど増し打ちになっている、あるいはシーリングの行そのものがないことがあります。増し打ちが常に手抜きというわけではなく、サッシまわりなど構造上撤去が難しい箇所では正当な工法です。問題は「どちらを選んだかが見積書に書かれていない」ことです。目地部分が打ち替えなのか増し打ちなのか、必ず明記してもらってください。
3回塗り ─ 回数ではなく塗布量の話
下塗り・中塗り・上塗りの3工程は、単に3回重ねるという意味ではありません。塗料メーカーは製品ごとに「1㎡あたり何kg塗るか」という規定塗布量を定めており、その量を確保するために工程が分かれています。2回で終える、あるいは塗料を規定以上に薄めれば、規定の膜厚に届かず、カタログに書かれた耐用年数は成立しません。
実際、大幅値引きに応じる際の手抜きの手口として「規定量以上に塗料を薄める」「本来3度塗りのところ2度塗りで済ます」「高圧洗浄などの下地調整をいい加減に行う」が挙げられています(出典:小林塗装)。値引きと工程削りは、しばしば同じ話です。
養生 ─ 削っても目には見えないが、事故として返ってくる
養生は100〜400円/㎡。窓・玄関・給湯器・エアコン室外機・植栽・車を塗料から守る工程です。ここを削ると、隣家の車に塗料が飛ぶ、サッシに塗料が付いて開かなくなる、といった形で表面化します。損害賠償や手直しの手間まで含めれば、節約になることはまずありません。
| 削られた項目 | 目安金額(延床30坪) | その後に起きやすいこと |
|---|---|---|
| 足場を簡易なものに替える | 数万円〜10万円程度 | 作業効率と精度が落ちる。塗り残し・塗りムラの温床になる |
| 高圧洗浄・ケレンを省く | 1万〜9万円程度 | 塗膜が密着せず、数年で剥がれ・膨れが出る |
| シーリングを増し打ちに変更 | 6万〜10万円程度 | 既存シーリングの寿命に引きずられ、目地から先に切れる |
| 3回塗りを2回に | 塗料代で数万円 | 規定膜厚に届かず、想定より早く色あせ・チョーキングが出る |
| 養生を簡略化 | 1万〜5万円程度 | 近隣・自家用車への塗料付着、サッシの動作不良 |
「安さ」の正体を見抜く:単価が安いのか、数量が少ないのか、工程が抜けているのか
ここがこの記事の核心です。2社の見積総額が同じ100万円でも、その100万円の意味はまったく違います。安く見える見積書には、次の4通りの理由があり得ます。そして、どれに当たるかは見積書のどこを見ればよいかが決まっています。
| 安さのタイプ | 見積書に現れる場所 | 確かめ方 | 評価 |
|---|---|---|---|
| ①単価が安い | 「単価」の列の数字が他社より低い | 同じ塗料の商品名で他社と単価を並べる。塗料㎡単価の相場幅(シリコン2,000〜3,500円等)と照合する | 検討に値する本物の安さ |
| ②数量が少ない | 「数量」の列(㎡・m)が他社より小さい | 塗装面積が延床30坪で119㎡前後か。シーリングが150〜200mあるか。実測値かどうか聞く | 要確認。実測なら妥当、概算なら追加請求の芽 |
| ③工程が抜けている | 行そのものが存在しない | 下塗り・中塗り・上塗りが3行あるか。高圧洗浄・ケレン・養生・シーリングの行があるか | 危険。安いのではなく、やらないだけ |
| ④「一式」で分からない | 数量欄・単価欄が空欄で「一式」 | 数量と単価を明記した見積書の再発行を依頼する | 判定不能。比較の土俵に乗らない |
この4分類が有効な理由は、①だけが「本物の安さ」で、②③④は安さではないからです。②は将来の追加請求、③は数年後の再工事、④はそもそも比較不能です。総額だけを並べていると、この違いが完全に見えなくなります。
国土交通大臣が指定する相談窓口である住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)も、見積書のセルフチェックとして「数量が正確に積算されているか」「単価はどう調べるか」「記載漏れ等がないか」を挙げています。つまり公的機関の推奨も、総額ではなく数量と単価を見よ、という点で一致しています。
実際に手を動かす手順(10分でできます)
- 手順1:各社の見積書から「塗装面積(㎡)」だけを抜き出して並べる。延床30坪なら119㎡前後が目安。ここが大きくずれている会社があれば、その理由を聞く
- 手順2:「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3行があるかを数える。「外壁塗装 一式」で1行なら④
- 手順3:塗料の欄にメーカー名と商品名が書かれているかを見る。「シリコン塗料」だけでは製品が特定できず、単価の妥当性を検証できない
- 手順4:シーリングが「打ち替え」か「増し打ち」か、総延長が何mかを確認する
- 手順5:諸経費が何%かを見る。「現場管理費のみで5%前後」と「一般管理費まで含んで30%前後」では定義が違うので、何が含まれるかを聞く
この5手順を通すと、「安い会社」は「①単価が安い会社」「③工程を抜いている会社」のどちらかに、たいてい分かれます。分かれた時点で、判断はほとんど終わっています。
相見積もりで適正額を知り、値引き交渉は限界を知って使う
結論から言うと、安くするための最初の一手は値引き交渉ではなく相見積もりです。理由は単純で、適正額を知らないまま交渉しても、水増しされた金額から少し戻してもらうだけになりかねないからです。
相見積もりは失礼な行為ではなく、住まいるダイヤルも見積書は複数社から取り、比較表をつくることを勧めています。依頼のしかたや断り方の文例は外壁塗装の相見積もりのマナーにまとめました。社数は3社程度が扱いやすく、多すぎると比較の手間で判断が雑になります。自分で3社を探すのが難しい場合は、外壁塗装の一括見積もりの仕組みを知ったうえで使うと、業者の集め方を選びやすくなります。
値引きには構造的な限界がある
塗装会社の粗利が仮に30%なら、理論上の値引き限度は30%です。しかし実際には事務所の賃料、車両費、保険料、職人の社会保険料など見積書に現れない経費があるため、現実的な限度は3〜8%程度と説明されています。同じ解説では、建坪30坪・見積100万円前後の工事で「10万円以上の値引きをしてくる業者は注意が必要」としています(出典:小林塗装)。
ここから導かれる読み方は明快です。大幅な値引きが出るということは、(a)元の金額が水増しされていた、(b)どこかの工程を削る前提になっている、(c)赤字覚悟の特殊事情がある、のいずれかです。(c) は稀ですから、多くは (a) か (b) です。
とくに「今日契約してくれれば半額」「モニター価格」といった、その場での即決を促す大幅値引きは注意が必要です。国民生活センターに寄せられた点検商法の相談件数は、2023年度の12,550件から2025年度は19,696件へと増えています(2026年5月31日時点の集計で、件数は未確定)。訪問販売で契約した場合、法定の書面を受け取った日から数えて8日以内であればクーリング・オフができます(出典:国民生活センター、消費者庁 特定商取引法ガイド)。見分け方の詳細は悪徳業者の見分け方にまとめています。
実務的には、金額そのものを値切るより「同じ予算で内容をどう組み替えられるか」を相談するほうが建設的です。たとえば「付帯部の一部を次回に回す」「塗料のグレードを1段下げる」といった調整は、業者側も理由を説明できるため、工程を削らずに総額を下げられる可能性があります。
DIYは「足場」という壁で現実的でなくなる
「自分で塗れば材料費だけで済むのでは」という発想は自然ですが、2階建て以上の戸建てでは現実的とは言えません。理由は塗る技術ではなく、足場です。
前述のとおり、労働安全衛生規則は高さ2メートル以上での作業に作業床の設置を義務づけ、床材のすき間を3センチメートル以下、床材と建地のすき間を12センチメートル未満と数値で規定し、作業前点検まで求めています。ここで正確に押さえておきたいのは、これらの規定は事業者と労働者の関係を規律するものであり、住宅の所有者が自宅で作業する場合に直接適用されるわけではないという点です。つまり法律違反になるという話ではありません。
それでも参考になります。プロが仕事として行う場合には、国がこれだけ細かい仕様を強制しなければならないほど危険な高さの作業だ、という事実が示されているからです。脚立やはしごで2階の壁を塗る作業は、この規定が想定する状況をまさに満たしています。
加えて、費用面でもDIYの優位は思ったほど大きくありません。
- 安全に作業しようとすれば足場のレンタル・組立が必要になり、その足場代(15万〜25万円前後が目安)は業者に頼む場合と大きくは変わりません
- 119㎡を下塗り・中塗り・上塗りで塗ると、実質的な塗り面積は357㎡ぶん。休日だけで進めれば数か月かかり、その間ずっと足場が建ったままになります
- 塗料は缶単位でしか買えず、余りが出ます。刷毛・ローラー・スプレー・養生材・高圧洗浄機も必要です
- 仕上がりに不具合が出ても、施工不良として保証を求める相手がいません。リフォーム瑕疵保険のような制度も、事業者が加入するものなので使えません
現実的な落としどころは、手が届く範囲(1階の一部、門扉、フェンス、物置など)に限ってDIYし、壁面本体はプロに任せるという分け方です。これなら足場のリスクを負わずに、費用を一定程度抑えられます。
生涯コストで考える:1回の安さと30年の安さは違う
最後に、視点を1回の工事から住まいの一生に広げます。外壁塗装で本当に効くのは「1回いくら」ではなく「30年で何回やるか」です。なぜなら、塗り替えのたびに足場代が毎回かかるからです。
延床30坪・塗装面積119㎡のモデルで、塗料グレード別に30年間の回数を数えてみます。工事1回あたりの費用は、足場・洗浄・下地補修・シーリング・3回塗り・養生・諸経費を含めて80万〜120万円程度を仮定します(塗料代の差はこれとは別に加算)。
| 塗料 | 耐用年数 | 塗料代(119㎡) | 30年での塗り替え回数 | 考え方 |
|---|---|---|---|---|
| ウレタン | 7〜10年 | 約19万〜30万円 | 3〜4回 | 1回は安いが、足場代を3〜4回払うことになる |
| シリコン | 10〜15年 | 約24万〜42万円 | 2〜3回 | 費用と持ちのバランスが取りやすく、選ばれることが多い |
| ラジカル | 13〜15年 | 約33万〜42万円 | 2回 | シリコンに近い価格帯で年数を伸ばしやすい |
| フッ素 | 15〜20年 | 約36万〜65万円 | 1〜2回 | 回数を1回減らせれば工事1回分(80万〜120万円)が浮く計算 |
| 無機 | 15〜25年 | 約45万〜71万円 | 1〜2回 | 年数の上限側は実績データが少なく、信頼度は低いとみるべき |
表から読み取れることは2つです。第一に、塗料代の差(十数万〜数十万円)より、工事1回分の差(80万〜120万円)のほうがはるかに大きいということ。第二に、それでも高いグレードが常に正解ではないということです。
後者が重要です。耐用年数はあくまでメーカーの促進耐候性試験などにもとづく期待値で、実際の持ちは日射・海からの距離・降雨・外壁材の状態で前後します。さらに、塗膜が20年もったとしてもシーリングや下地はそれより早く傷むため、「20年間何もしなくてよい」わけではありません。したがって生涯コストの試算は、判断の材料の一つであって、答えそのものではありません。あと何年その家に住むかという前提が変われば、結論も変わります。
よくある質問
Q. 一番効果の大きい「安くする方法」はどれですか?
金額の大きさで言えば、中間マージンを避けること(10〜30%の差が生じ得ると説明されています)と、外壁と屋根の足場を1回にまとめること(足場代15万〜25万円前後の重複を避けられます)の2つが目立ちます。ただし前提として、相見積もりで適正額の幅を把握しておかないと、削れているのかどうか自体が判断できません。順番としては、相見積もり→自社施工かどうかの確認→工事範囲の組み立て、が現実的です。
Q. 3社の見積もりのうち、一番安い会社を選んでよいですか?
総額だけで選ぶのは避けてください。本文の表で示したとおり、安さには「①単価が安い」「②数量が少ない」「③工程が抜けている」「④一式で分からない」の4種類があり、選んでよいのは①だけです。塗装面積の数量(延床30坪なら119㎡前後)、下塗り・中塗り・上塗りの3行、シーリングの延長と工法、この3点を3社で並べれば、どのタイプの安さかはたいてい判別できます。
Q. 「今日決めてくれれば30万円引きます」と言われました。得ですか?
現実的な値引き幅は3〜8%程度という説明があり、100万円前後の工事での30万円引きはこの範囲を大きく超えます。元の金額が水増しされていた可能性、または工程を削る前提になっている可能性を考えるべき場面です。その場で決めず、見積書を持ち帰って他社と比較してください。訪問販売で契約してしまった場合でも、法定書面を受け取った日から8日以内であればクーリング・オフができます。
Q. 足場代無料のキャンペーンはお得ですか?
足場は労働安全衛生規則で仕様まで定められた設備で、材料も人手も実際にかかります。無料になるということは、その分がどこかに含まれているか、簡易な仕様に置き換わっているかのどちらかです。悪質だと決めつける必要はありませんが、確認は必要です。「足場が無料なら、総額から足場代を引いた金額と、他社の足場込み総額を比べてどうか」という比べ方をしてください。総額で並べれば、無料表示に意味がないことがすぐ分かります。
Q. 塗料のグレードを下げれば安くなりますか?
今回の支払額は下がります。延床30坪でフッ素からシリコンに変えれば、塗料代でおよそ12万〜24万円の差が出る計算です。ただし耐用年数も短くなるため、30年単位で見ると塗り替え回数が増え、そのたびに足場代がかかります。判断軸は「あと何年この家に住むか」です。10年以内に建て替えや住み替えを考えているなら下げる合理性がありますし、まだ長く住むなら回数を減らせるグレードのほうが有利になる可能性があります。
Q. 助成金と火災保険は併用できますか?
制度によって扱いが異なるため、一律には言えません。自治体の助成金には「他の補助金との併給を認めない」という条項が置かれていることがあり、火災保険金を受け取った工事費部分を補助対象から除く運用をする自治体もあります。いずれにせよ助成金は着工前の申請が要件になっていることが多いので、契約前にお住まいの市区町村の担当課に、保険金を受け取る予定がある旨まで伝えて確認するのが確実です。
まとめ
外壁塗装を安くする方法は、テクニックの数を集めることではありません。削ってよいものと、削ってはいけないものを分けること。この一点に尽きます。
- 削ってよいもの:中間マージン、不要な付帯工事、過剰なグレードの塗料、足場の重複(外壁と屋根の同時施工)、繁忙期の割高分、使わなかった助成金・火災保険
- 削ってはいけないもの:足場、下地補修・ケレン、シーリング、3回塗り、養生。ここを削ると数年で塗り直しになり、結局高くつきます
- 安さの正体は4種類:①単価が安い/②数量が少ない/③工程が抜けている/④一式で分からない。選んでよいのは①だけです
- 値引きには限界がある:現実的な値引き幅は3〜8%程度という説明があり、大幅値引きは元の金額の水増しか工程削りを疑う場面です
- DIYは足場が壁になる:法令が高さ2メートル以上の作業に作業床を義務づけている事実は、その作業の危険性を示しています
- 生涯コストで見る:塗料代の差より、工事1回分の差のほうが大きい。ただし「あと何年住むか」で結論は変わります
やることは多くありません。相見積もりを3社取り、各社の見積書から「塗装面積の数量」「下塗り・中塗り・上塗りの3行」「シーリングの延長と工法」「塗料のメーカー名と商品名」を抜き出して並べる。それだけで、どの安さが本物でどの安さが先送りかは、かなりの精度で見分けられます。総額を見比べるのをやめて、数量と単価を見比べるところから始めてみてください。
見積もりを取るときに使えるサービス
ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

