外壁と屋根の同時施工は本当に得か|30坪で実際に積算した差額

外壁と屋根の同時施工で足場代が本当に浮くのかを解説する記事のアイキャッチ画像

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外壁と屋根を同時に施工して浮くのは、主に足場代です。延床30坪で15万〜25万円前後、諸経費や養生の重複分まで含めると差額はおおむね20万〜30万円が一つの目安になります。ただしここで大事なのは言い方です。同時施工は「安くなる」のではありません。今回出ていく総額はむしろ増えます。正しくは「屋根を単独でやり直すより、生涯コストで得になりうる」です。この記事では延床30坪の家で外壁のみ・屋根のみ・同時の3パターンを実際に積算し、差額の正体を1円単位まで分解します。

目次

結論:浮くのは足場代。「安くなる」ではなく「得になりうる」

最初に結論を整理します。外壁塗装と屋根工事を同時に行うと、次の3つが1回分にまとまります。

  • 足場の仮設・解体費(延床30坪で15万〜25万円前後)
  • 飛散防止ネット(メッシュシート)(100〜300円/㎡)
  • 建物1棟に対して1回でよい費用(養生の一部、現場管理費、近隣挨拶などの段取り)

逆に、面積に比例する費用はまったく浮きません。高圧洗浄も、塗料代も、職人の塗る手間も、外壁119㎡と屋根60㎡の合計179㎡ぶんがきっちりかかります。同時にやったからといって、塗る面積が減るわけではないからです。

ここを取り違えると判断を誤ります。「同時なら安くなる」と聞いて契約したのに、請求額が外壁単独の見積もりより30万円も高くて驚く──これは業者が嘘をついたのではなく、「1回あたりの支払額」と「工事1件あたりの効率」を混同しているだけです。同時施工で下がるのは後者であって、前者はむしろ上がります。

この記事では、その差がいくらなのかを実際の積算で確かめます。足場そのものの単価構造については外壁塗装の足場代の相場で㎡単価から分解しているので、あわせて読むと理解が早くなります。

【積算】延床30坪で3パターンを実際に計算した

結論から言うと、この記事の前提条件では別々に施工した場合の合計が約148万円(税抜)、同時施工が約123万円(税抜)で、差額は約25万円でした。以下、前提と計算過程を公開します。

積算の前提(面積の三点セット)

  • 延床30坪・2階建て・スレート屋根・築13年
  • 外壁塗装面積 約119㎡(30坪 × 3.3 × 係数1.2)
  • 屋根面積 約60㎡(延床30坪の屋根面積は55〜64㎡が目安。出典:外壁塗装110番
  • 足場の架面積 約220㎡(延床30坪の2階建てで200〜260㎡)
  • シーリング打ち替え総延長 170m、塗料はシリコングレードで統一
  • 諸経費は「現場管理費のみ=5%」で計上(定義が会社ごとに違う項目のため)

単価は当メディアの共通の土台(足場600〜1,500円/㎡、高圧洗浄100〜400円/㎡、シーリング打ち替え900〜1,500円/m、シリコン2,000〜3,500円/㎡など)の中央付近を採用しました。屋根塗装の㎡単価やタスペーサーの相場は外壁塗装の窓口の内訳(タスペーサー500〜800円/㎡、屋根のシリコン2,000〜3,000円/㎡)を参照しています。

3パターン比較表

項目数量 × 単価外壁のみ屋根のみ同時施工
足場仮設・解体220㎡ × 800円176,000176,000176,000
飛散防止ネット220㎡ × 200円44,00044,00044,000
高圧洗浄250円/㎡29,75015,00044,750
養生250円/㎡29,75015,00029,750
ケレン(屋根・棟板金)60㎡ × 350円21,00021,000
タスペーサー60㎡ × 600円36,00036,000
シーリング打ち替え170m × 1,200円204,000204,000
外壁塗装(シリコン3回)119㎡ × 2,500円297,500297,500
屋根塗装(シリコン3回)60㎡ × 2,800円168,000168,000
付帯部塗装(雨樋・破風・軒天ほか)一式150,000150,000
小計931,000475,0001,171,000
諸経費(現場管理費5%)46,55023,75058,550
合計(税抜)977,550498,7501,229,550
合計(税込10%)1,075,305548,6251,352,505
出典:単価は本メディアの共通単価および外壁塗装の窓口・外壁塗装110番の公開データをもとに編集部が積算。金額は円・税抜(最下段のみ税込)。実際の見積もりは建物形状・立地で変動します。

別々に施工した場合の合計は 977,550 + 498,750 = 1,476,300円(税抜・約148万円)。同時施工は 1,229,550円(税抜・約123万円)。差額は 246,750円、約25万円です。

浮いた約25万円の内訳を分解する

浮いた費目金額なぜ浮くのか
足場仮設・解体(1回分)176,000円建物1棟に1回組めば、外壁も屋根も同じ足場から施工できる
飛散防止ネット(1回分)44,000円足場に付随する設備なので、足場と同時に1回分で済む
養生(重複分)15,000円開口部・地面まわりの養生は1棟につき1回にまとまる
諸経費(上記に対する5%)11,750円現場管理の対象額が減るぶん比例して減る
合計246,750円——
出典:上表の積算からの差分。編集部作成。

注目してほしいのは高圧洗浄が1円も浮いていないことです。別々のときは29,750+15,000=44,750円、同時のときも179㎡ぶんで44,750円。まったく同じです。塗料代も塗装手間も同様です。つまり同時施工で浮くのは「面積に関係なく1棟あたりでかかる費用」だけであり、それが今回は約25万円だった、というのが正確な理解です。

「今回の支払額」は約25万円増える

同じ表をもう一度、別の角度から見てください。外壁のみなら97.8万円、同時なら122.9万円。今回の支払いは25.2万円増えます。一方、屋根を後から単独でやると49.9万円かかる。つまりこういう選択です。

  • いま屋根も一緒にやる → 追加 約25万円
  • 数年後に屋根だけやる → 約50万円(うち22万円が足場とネット)

屋根の工事内容がまったく同じでも、タイミングを分けるだけで実質2倍になる。これが同時施工が語られる理由の全部です。なお外壁単独の総額レンジは外壁塗装30坪の費用、屋根単独は屋根塗装の費用相場で塗料グレード別に整理しています。

なお、足場代の相場そのものは情報源によって幅があります。くらしのマーケットは「800〜1,200円/㎡、30坪で13〜20万円程度」、SUUMOリフォームタイムズは「25万〜35万円が目安、同時施工で約25〜30万円の節約」としています。倍近い開きがあるのは、メッシュシート込みか別か、飛散防止だけでなく屋根足場(勾配が急な屋根に組む追加足場)を含むか、といった数え方の違いによるものです。金額だけを見比べても意味がなく、「何㎡ × いくらで、何が含まれているか」で読む必要があります。

足場代以外にも効いてくる3つのメリット

金額に表れにくいものの、実際に住みながら工事を受ける側にとって無視できないメリットが3つあります。

1. 工期が「2回ぶん」にならない

パターン工期の目安足場が建っている期間
外壁のみ7〜10日約1〜1.5週間
外壁+屋根(同時)10〜14日約2週間
外壁 → 後日 屋根(別々)7〜10日 + 5〜7日合計 約3週間(2回に分割)
出典:ヌリカエ(外壁のみ7〜10日、外壁+屋根10〜14日、足場設置1〜2日・解体1日)。天候により延長します。

同時施工でも工期は外壁単独より長くなります。ここを「同時なら早く終わる」と説明する業者がいたら不正確です。正しくは「同時のほうが1回あたりは長いが、2回に分けた合計より短い」です。SUUMOリフォームタイムズも同時施工の工期を「2週間程度」としています。

足場が建っている間は、窓が開けにくい、洗濯物を外に干せない、日中に足音と機械音がする、といった生活上の制約が続きます。これが2回来るか1回で済むかは、実際に暮らす側には金額以上の差です。

2. 近隣への挨拶と気づかいが1回で済む

足場の組み立てには金属音が伴い、高圧洗浄では水しぶきと騒音が出ます。塗料のにおいも周囲に届きます。そのため工事前には両隣と裏の家への挨拶が必要になりますが、これが2年後にもう一度必要になるのは、施主にとって地味に負担です。同時施工なら1回で完結します。

3. 外壁と屋根の色の相性を一度に決められる

これは見落とされがちですが、実務上は大きな利点です。外壁を先に塗り、数年後に屋根を塗ると、屋根の色を「すでにある外壁の色」に合わせるしかなくなります。選択肢が半分になるということです。

同時なら、外壁と屋根の組み合わせをゼロから検討できます。屋根を濃く外壁を淡くする、逆に屋根と外壁のトーンを揃えて重心を上げる、といった設計判断ができるのは同時施工だけです。色の組み合わせは家全体の印象を決める要素なので、決められる幅が広いほうが有利です。

デメリットと「無理に合わせないほうがよい」ケース

結論として、同時施工は万能ではありません。次の2点は必ず自分の状況に当てはめて考えてください。

デメリット1:一度に出ていく金額が大きい

先の積算では、外壁のみ約108万円(税込)に対し、同時は約135万円(税込)でした。27万円の差です。くらしのマーケットも、同時施工のデメリットとしてまず「単体で行う場合と比べて費用は高額になる」ことを挙げています。

手元資金が足りずリフォームローンを組むと、支払利息が発生します。仮に金利年3%で100万円を5年返済すれば利息はおよそ8万円前後になり、足場代で浮いた25万円のうち3分の1が消える計算です。「同時施工で浮く額」は、無理な資金計画をしてまで取りにいく額ではありません。(金利・返済期間は金融機関により異なります。実際の返済額は各社の試算をご確認ください。)

デメリット2:最適な塗り替え時期がずれているなら合わせるべきではない

これが最大の注意点です。屋根がまだ十分に健全なのに、足場代を浮かせたいという理由だけで前倒しで塗るのは、合理的ではありません。

たとえば、屋根の前回塗装から3年しか経っていない家で、外壁だけが傷んでいるとします。ここで屋根も同時に塗れば足場代22万円は浮きますが、本来あと7年使えたはずの屋根塗膜を捨てることになります。屋根塗装の実費は先の積算で約27万円(足場・ネットを除いた屋根の直接工事費)でした。7年ぶんの寿命を捨てて22万円を得るのは、割に合いません。

判断の順序は次のとおりです。

  • まず外壁と屋根それぞれの劣化状況を個別に診断してもらう
  • 両方が「そろそろ」なら同時施工を選ぶ
  • 片方だけが明確に早い(3年以上の差がある)なら、無理に合わせない
  • 差が1〜2年程度なら、同時施工にする価値が十分ある

塗り替えを検討し始める目安そのものは外壁塗装のタイミングで整理しています。

【独自】屋根は外壁より先に傷む。ズレたサイクルを次回以降どうするか

ここからがこの記事の本題です。多くの記事は「同時施工はお得です」で終わりますが、そもそも外壁と屋根は同じペースで傷まないので、一度合わせてもまたズレます。この構造を理解しないまま「毎回一緒にやればいい」と決めると、どこかで無駄が出ます。

なぜ屋根が先に劣化するのか

理由は物理的なもので、業者の営業トークではありません。

  • 日射を受ける角度が違う。屋根はほぼ真上から日光を受けますが、外壁は斜めから受けます。同じ日射でも単位面積あたりのエネルギー量が違います。
  • 表面温度が高い日本塗料工業会の遮熱塗料資料では、真夏の屋根表面温度は遮熱塗料の使用で「最大20℃以上低下する」とされています。裏を返せば、通常の屋根はそれだけ高温にさらされているということです。塗膜は熱で膨張・収縮を繰り返し、これが劣化を早めます。
  • 雨や雪が滞留しやすい。外壁は雨が流れ落ちますが、屋根は勾配次第で水が残り、コケや藻が繁殖しやすい環境になります。
  • 普段見えない。外壁の色あせは日常的に目に入りますが、屋根は地上からほとんど見えません。気づいたときには進行しています。

児玉塗装は「屋根の場合は、外壁よりも直射日光や風雨の影響を受けるため劣化のスピードが早まる」として、外壁は約10年、屋根は約8年で塗装の検討を始めることを推奨しています。SUUMOリフォームタイムズも外壁12〜13年、屋根8〜10年と、屋根のほうが短いサイクルを示しています。数値は情報源で異なりますが、「屋根のほうが短い」という方向性はどの資料も一致しています。

ズレは何年で顕在化するのか(シミュレーション)

外壁シリコン(耐用12年)、屋根シリコン(耐用9年)と仮定し、築13年で同時施工した家がその後どうなるかを追ってみます。

経過戦略A:毎回同時に合わせる戦略B:それぞれの適期でやる戦略C:屋根を長寿命塗料にして合わせる
築13年外壁+屋根 同時(シリコン)外壁+屋根 同時(シリコン)外壁シリコン+屋根フッ素で同時
築22年屋根のみ(足場が再度必要)
築25年外壁+屋根 同時(屋根は3年前倒し)外壁のみ外壁+屋根 同時(屋根は3年余力を残す)
足場を組んだ回数2回3回2回
屋根塗膜の無駄3年ぶん切り捨てなし3年ぶんの余力(次周期に繰り越し)
向いている人手間を最小化したい1回の出費を抑えたい長期の総コストを下げたい
出典:耐用年数はシリコン10〜15年・フッ素15〜20年という一般的なレンジをもとに編集部が試算。実際の耐用年数は施工品質・立地・下地状態で変動します。

この表から読み取れることは明確です。戦略C──屋根だけ1〜2ランク上の塗料を使ってサイクルを外壁に合わせにいく──が、足場の回数を増やさず塗膜の切り捨ても避けられる合理的な解になりやすいということです。

先の積算で屋根塗装(シリコン)は 60㎡ × 2,800円 = 168,000円でした。これをフッ素(4,000円/㎡想定)にすると 240,000円。差額は72,000円です。7.2万円で足場1回分(22万円)を将来的に節約できる可能性があるなら、検討する価値はあります。塗料グレードの選び方はシリコン塗料とフッ素塗料の違いで詳しく比較しています。

ただし注意点があります。フッ素や無機の耐用年数は塗料メーカーの促進試験に基づく数値であり、実際の住宅で20年もったという長期の実測データは多くありません(特に無機は普及からの年数自体が浅く、信頼度が低い点を明記しておきます)。「フッ素だから確実に18年もつ」という前提で計画を組むのは危険です。あくまで「もつ可能性が高い」という確率の話として扱ってください。

次回以降を合わせるための、もう一つの現実的な手

塗料のグレードで調整する以外に、屋根を塗装以外の工法に切り替えてサイクルの問題そのものを終わらせるという選択肢もあります。スレート屋根は塗装を繰り返してもいずれ塗装では持たなくなり、カバー工法や葺き替えに移行する時期が来ます。築25年前後で外壁塗装を迎えるタイミングは、この移行を検討する現実的な節目です。次章で扱います。

屋根がカバー工法・葺き替えでも足場は共通。付帯部も同じ足場でできる

塗装以外の屋根工事でも同時施工の理屈は変わらない

結論として、屋根の工事がカバー工法でも葺き替えでも、必要になる足場は外壁塗装と同じものです。したがって同時施工の有利さは塗装のときより大きくなる場合すらあります。屋根材の搬入や既存屋根の撤去・搬出にも足場と昇降設備が要るからです。

当メディアの屋根カバー工法の費用とデメリットで整理したとおり、カバー工法の内訳のうち足場仮設費は15万〜30万円を占め、これは「外壁と同時施工なら1回分で済む」項目です。テイガクも、屋根工事と外壁塗装は「足場を共通利用できるため、まさに一石二鳥」であり、工事費用の削減と工期短縮が実現できると説明しています。

ただし業者選びには注意が必要です。同記事は、屋根工事を検討するなら「屋根工事が得意であり、屋根工事の実績が豊富な会社を優先するべき」と述べています。塗装専門店に屋根の葺き替えを依頼すると板金業者への外注になることがあり、責任の所在が分かれやすくなります。屋根工事を自社施工できる体制かどうかは、契約前に必ず確認してください。

付帯部が見積もりに入っているか必ず確認する

足場が建っている間にしかできない工事は、屋根だけではありません。雨樋・破風板・軒天・幕板・雨戸・水切りといった付帯部も、同じ足場を使って施工します。ここを外して見積もりを作れば総額は安く見えますが、後から単独でやり直すには再び足場が必要になります。

付帯部単価の目安見落としやすいポイント
雨樋600〜1,500円/m塗装ではなく交換が必要な劣化状態のことがある
軒天1,000〜2,500円/㎡雨漏りのサインが出る部位。塗る前に補修要否の確認を
破風板900〜2,000円/m木製か窯業系かで下地処理の手間が変わる
幕板900〜2,000円/m上端のシーリングが切れていないか
水切り600〜1,000円/m鉄部はケレンの有無で持ちが変わる
換気フード1,500〜3,000円/箇所数量で計上されているか
出典:リフォームの匠美(付帯部は外壁塗装費用全体の15〜30%を占め、2階建て・築15年で約12〜20万円が目安)

同資料は、見積書に「付帯部塗装一式」とだけ書かれている場合「どの部位が何㎡、何m含まれているか不明瞭となりがち」だと指摘しています。国土交通大臣指定の住宅リフォーム紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)も、見積書のセルフチェックとして「工事箇所、数量、仕様や単価」が漏れなく正確に記載されているかを確認するよう求めています(出典:住まいるダイヤル)。一式表記のまま契約すると、後から「その部位は含まれていません」と言われても反論の根拠がありません。

同時施工の見積もりを取るときは、最低限この3つを確認してください。

  • 足場が1式・1回分で計上されているか(外壁用と屋根用で二重計上されていないか)
  • 外壁面積と屋根面積が別々の数量で書かれているか(合算されていると検算できない)
  • 付帯部が部位ごとに数量つきで並んでいるか(一式表記なら内訳を求める)

「同時なら足場代サービス」の値引き営業に注意

結論から言うと、足場は労働安全衛生規則で仕様まで定められた法定の安全設備であり、本当に無料になることはありません。「同時施工なので足場代はサービスします」という説明は、足場代が消えたのではなく、他のどこかに乗っているか、最初から上乗せされた金額から引かれているだけ、と考えるのが妥当です。

労働安全衛生規則は、足場について作業床の幅を40cm以上・床材間のすき間を3cm以下とすること(第563条)、組立て・解体時の措置(第564条・第565条)、作業開始前の点検(第567条)などを具体的に定めています(出典:厚生労働省 滋賀労働局資料)。これらを満たす資材と手間には必ず原価が発生します。

同時施工は「その場で決めさせる」口実に使われやすい

注意が必要なのは、同時施工という正しい理屈が、契約を急がせる材料に転用されやすい点です。典型的な流れはこうです。

  • 「無料で点検します」と訪問し、屋根に上がる
  • 撮影した写真を見せ、屋根の傷みを指摘する
  • 「どうせ足場を組むなら外壁も一緒にやったほうが得ですよ」と提案を拡大する
  • 「今日契約なら足場代をサービス」と当日決断を迫る

国民生活センターのPIO-NETに寄せられた点検商法に関する相談は、2023年度の12,550件から2025年度は19,696件へと増加しています(2026年5月31日時点の集計で、件数は未確定です。出典:国民生活センター)。同時施工が本当に得だとしても、それは今日決めなければ失われる利益ではありません。足場代は来月見積もりを取り直しても同じように1回分にまとまります。

訪問販売で契約した場合、契約書面を受け取った日から数えて8日間はクーリング・オフができます(出典:消費者庁 特定商取引法ガイド)。その場で契約せず、いったん持ち帰って複数社に相見積もりを取るのが最も確実な防御策です。

健全な判断手順はシンプルです。同時施工を検討するなら、複数社から「外壁のみ」「屋根のみ」「同時」の3パターンで見積もりを取り、差額が本当に足場・ネット・養生の重複分で説明できるかを確かめる。説明できない差額が出る見積もりは、どちらかの数字が実態と合っていません。

よくある質問

外壁と屋根を同時にやると、結局いくら安くなりますか

延床30坪の試算では、別々に施工した合計約148万円に対し同時施工は約123万円で、差額は約25万円(税抜)でした。ただしこれは「別々にやった場合と比べた差」です。外壁だけで済ませる場合と比べれば、同時施工は約25万円高くなります。情報源によって節約額の示し方は幅があり、SUUMOリフォームタイムズは約25〜30万円としています。

屋根がまだ新しいのですが、それでも同時にやるべきですか

前回の屋根塗装から3年以上の差がある場合、無理に合わせない方が合理的な場合が多いです。足場代22万円を浮かせるために、まだ何年も使える塗膜を捨てることになるからです。差が1〜2年程度であれば、同時施工にする価値は十分あります。まずは外壁と屋根の劣化状況を別々に診断してもらい、それぞれの適期を確認してください。

屋根だけ先に塗って、外壁は数年後でもいいですか

可能ですし、屋根の傷みが明らかに先行しているなら合理的な選択です。ただしその場合、足場代とネット代(試算では22万円)が2回発生することは織り込んでおいてください。屋根を先にやるなら、そのときに雨樋・破風・軒天といった足場がないとできない付帯部の工事もまとめて済ませておくと、足場1回分を最大限に使えます。

同時施工なら値引き交渉はできますか

工事量が増えるため、業者側に価格を調整する余地が生まれることはあります。ただし値引きの根拠を確認してください。塗り回数を3回から2回に減らす、下地処理を省く、塗料を薄めるといった形で調整されると、耐用年数が落ちて結果的に損をします。金額ではなく「仕様がどう変わったか」を必ず比較してください。値引き後の見積書と値引き前の見積書を、数量・単価・塗り回数の欄まで並べて突き合わせるのが確実です。

外壁と屋根で塗料のグレードを変えても問題ありませんか

問題ありません。むしろ屋根のほうが劣化条件が厳しいため、屋根だけグレードを上げるのは理にかなった選択です。この記事の試算では、屋根をシリコンからフッ素に変更した場合の差額は約7.2万円でした。次回の塗り替え時に外壁とタイミングを揃えられる可能性が高まります。ただし耐用年数はメーカー試験に基づく数値であり、住宅での長期実測データは限られる点にご留意ください。

まとめ:判断基準は「足場代」ではなく「劣化の適期」

この記事の要点を整理します。

  • 同時施工で浮くのは足場代・飛散防止ネット・養生の重複分と、それにかかる諸経費。延床30坪の試算では約25万円(税抜)
  • 高圧洗浄・塗料代・塗装手間は1円も浮かない。面積に比例する費用だから
  • 「安くなる」は誤り。今回の支払額は外壁単独より約25万円増える。正しくは「屋根を後から単独でやるより得になりうる」
  • 工期は外壁単独7〜10日に対し同時は10〜14日。2回に分けた合計より短いのがメリット
  • 屋根は日射角度・表面温度・水はけの条件から外壁より先に劣化する。合わせても次回はまたズレる
  • ズレへの対処として、屋根だけ塗料グレードを上げてサイクルを合わせにいくのが現実的な選択肢の一つ
  • カバー工法・葺き替えでも足場は共通。付帯部も同じ足場でしかできないので見積書に入っているか確認する
  • 「今日決めれば足場代サービス」は判断を急がせる材料。足場代は来月でも同じように1回分にまとまる

最後にもう一度だけ。同時施工を決める理由は「足場代が浮くから」ではありません。「外壁と屋根の両方が、いま手を入れるべき状態だから」です。足場代が浮くのは、その判断が正しかったときについてくるおまけにすぎません。順序を逆にしないことが、後悔しない工事のいちばんの近道です。

そのうえで、複数社の見積もりを「外壁のみ/屋根のみ/同時」の3パターンで並べてみてください。差額が足場・ネット・養生の重複分できれいに説明できる見積書を出してくる会社は、少なくとも積算をごまかしていません。それは、その先の施工品質を推し量るうえでも有力な手がかりになります。

見積もりを取るときに使えるサービス

ここから先は広告を含みます。自分で業者を探す時間が取れない場合は、一括見積もりサービスを使う方法もあります。ただしこれらのサービスは加盟店からの掲載料で運営されているため、紹介されるのは「その仕組みに参加している会社」に限られます。地元の優良な塗装店が含まれていないこともあるため、あくまで候補を集める手段の一つとして使ってください。この記事で挙げたチェック項目は、サービス経由で集めた見積書にもそのまま使えます。

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この記事を書いた人

リフォーム編集部のアバター リフォーム編集部 株式会社スゴヨク|編集部

「リフォーム」編集部です。運営は株式会社スゴヨク(福岡市中央区/Webサイト制作・Webマーケティング)。外壁塗装・屋根工事・外構リフォームの費用や業者選びを、国土交通省・国民生活センター・住宅リフォーム推進協議会などの一次情報にあたって解説しています。金額や制度には必ず出典を明記し、確認できなかったことは「未確認」と書く方針です。当サイトは施工を行っておらず、特定の業者への送客を目的としない立場で編集しています。

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