請負業者賠償責任保険は施主の家に使えるか|約款の免責を確認

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リフォーム業者に「保険に入っていますか」と聞いて「入っています」と返ってきた。それで安心してはいけません。業者が加入している請負業者賠償責任保険は「他人の財物」を壊したときの保険で、三井住友海上と東京海上日動の2社の文書で確認したかぎり、被保険者(=業者)が所有・使用または管理する財物の損壊は原則として免責と定められています。工事中のあなたの家は、業者の管理下にある財物にあたりうる。だから「入っている/いない」ではなく「どの特約が付いているか」「約款のどの免責に当たらないか」を確認する必要があります。この記事は、免責の構造と4つの保険・許可の棲み分けに絞って解説します。

目次

結論:確認すべきは「入っているか」ではなく「免責に当たらないか」

先に結論を3つ示します。いずれも損害保険会社のパンフレット・重要事項説明書、および国の標準約款で実際に確認できた内容です。

  • 請負業者賠償責任保険は「他人」の身体・財物に対する保険。被保険者が所有・使用または管理する財物の損壊は、免責事由として明記されています(三井住友海上・東京海上日動の両文書で一致)。
  • 工事が終わった後に「仕事の結果」から生じた賠償責任も免責。つまり施工不良そのものは、この保険の守備範囲ではありません。そこはリフォーム瑕疵保険の領域です。
  • 建設業許可・請負業者賠償責任保険・建設工事保険・リフォーム瑕疵保険は、目的も根拠も補償先も全部別物。どれか1つがあれば他も安心、ということはありません。

なお、保険金が出る/出ないの最終判断は、契約内容と事故の個別事情をもとに保険会社・代理店が行います。この記事は「約款やパンフレットにはこう定められている」という事実の整理までで、個別の事案についての結論は示せません。そこは正直にお断りしておきます。

請負業者賠償責任保険は「他人の財物」の保険である

この保険の出発点は、補償対象が「他人」に限られているという点です。ここを押さえると、免責の構造が一気に見通せます。

三井住友海上「請負業者賠償責任保険」パンフレット(2021年10月1日以降保険始期契約用)では、基本の補償が次のように説明されています。「他人の生命や身体を害したり、他人の財物を損壊(滅失、破損、汚損もしくは紛失すること、または盗取されること)した場合に、貴社が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、保険金をお支払いします」。

東京海上日動の賠償責任保険 重要事項説明書も、「他人の身体・生命を害し、または他人の財物を損壊(滅失、破損または汚損)したことについて法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害」と、ほぼ同じ構成で記載しています。

つまりこの保険は、工事に伴って通行人にケガをさせた、隣家の塀を壊したといった「第三者への賠償」を本体の守備範囲としています。ここまでは、保険の売り手側のページでもよく説明されている内容です。問題はこの先です。

核心:「所有、使用または管理する財物」の免責

三井住友海上のパンフレットの「保険金をお支払いしない主な場合」には、③として次の文言が置かれています。

「被保険者が所有、使用または管理する財物の損壊(滅失、破損、汚損もしくは紛失すること、または盗取されること)について、その財物につき正当な権利を有する者に対して負担する損害賠償責任」

東京海上日動の重要事項説明書でも、③として「被保険者が所有、使用または管理する財物の損壊につき、その財物に対し正当な権利(所有権等)を有する者に対して負担する賠償責任」と、ほぼ同一の文言が挙げられていました。異なる会社の2つの文書で同じ趣旨が確認できたので、この免責は業界で共通に近い構成だと考えられます。ただし損害保険会社の約款は会社ごとに異なり、商品改定もあります。他社の約款や、同じ会社の別年度の商品では内容が異なる場合がある点はご承知ください。

ここで施主にとって決定的なのは、工事中の自分の家が「被保険者が使用または管理する財物」に当たりうるということです。足場をかけて養生を張り、鍵を預け、現場を管理しているのは業者です。その状態の建物を、業者自身が傷つけた。このとき③の免責に該当するかどうかが争点になります。

だから「請負業者賠償責任保険に入っています」という一言は、隣家や通行人への備えとしては意味があっても、あなたの家そのものへの備えとしては、それだけでは確認が済んでいないのです。上位の解説ページはほぼすべて保険の売り手側が書いたもので、「工事業者が加入するための保険」という説明に終始しています。施主側から見た免責の穴を説明したページは、調べたかぎり見つかりませんでした。

だから「特約」の名前を聞く必要がある

この③の穴を埋めるために用意されているのが、各社の特約です。三井住友海上のパンフレットには、請負業者賠償責任保険に付帯できる特約として次のものが列挙されていました。

  • 地盤崩壊危険補償特約
  • 工事遅延損害補償特約
  • 支給財物損壊補償特約
  • 借用財物損壊補償特約
  • 管理財物損壊補償特約
  • 精算(直近会計年度末)特約/精算(直近月末)特約

このうち施主が最も気にすべきは管理財物損壊補償特約です。同パンフレットの説明は次のとおりです。「被保険者の管理下にある財物(仕事を遂行するにあたり、現実かつ直接的に作業を行っている財物を含み、目的を問いません。)の損壊(滅失、破損、汚損もしくは紛失すること、または盗取されること)によって、その財物に対して正当な権利を有する者に対して、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、保険金をお支払いします」。

「現実かつ直接的に作業を行っている財物を含み」という部分が重要です。まさに今、塗装している外壁そのものまで射程に入れた書き方になっています。逆に言えば、この特約が付いていない契約では、そこは本体約款の③に戻ってしまいます。

特約の名称は会社・制度によって違います。一般社団法人日本住宅リフォーム産業協会(ジェルコ)の「ジェルコ総合補償制度」(引受:東京海上日動)では「管理下財物損壊担保特約条項」という名称で、「占有・使用している財物/直接作業を加えている財物/借りている財物」の損壊を補償し、免責金額は1事故10万円と記載されていました。ハウスプラス住宅保証の届出・登録事業者向け「HP団体総合Web保険」(引受:東京海上日動)でも同じ「管理下財物損壊担保特約条項」が用意され、支払限度額500万円と明記されています。

つまり、業者が加入している団体制度によってはすでに標準で付いていることもある。だからこそ、聞くべきは「入っていますか」ではなく「管理財物(管理下財物)の特約は付いていますか」なのです。

特約の名称(三井住友海上の表記)対象になる財物外壁塗装・屋根工事でのイメージ
管理財物損壊補償特約被保険者の管理下にある財物。現実かつ直接的に作業を行っている財物を含む足場をかけて施工中の外壁・屋根・窓など、業者が現場管理している施主の家
借用財物損壊補償特約リース・レンタル契約などで他人から借りている財物(自動車を含み、土地やその定着物は含まない)借りた高所作業車や機材を壊した場合
支給財物損壊補償特約被保険者に支給された資材・商品等の財物施主が手配して現場に置いたエアコンや建材を壊した場合
地盤崩壊危険補償特約(名称のみパンフレットに記載)掘削を伴う外構工事などで地盤が崩れた場合
出典:三井住友海上「請負業者賠償責任保険」パンフレット(2021年10月1日以降保険始期契約用)の記載をもとに編集部が整理。特約名称・内容は保険会社や団体制度ごとに異なります

外壁塗装では「㉓養生をしていない塗装」という免責もある

これは外壁塗装を検討している方には見逃せない項目です。三井住友海上のパンフレットの「保険金をお支払いしない主な場合」の㉓には、次の文言がありました。

「塗料(塗料またはその他の塗装用材料)の飛散を防止するための養生等の措置を取らずに行われた塗装(吹付けを含みます。)作業による塗料の飛散または拡散に起因する損害賠償責任。ただし、容器などを落下または転倒させたことにより塗料が飛散または拡散した場合を除きます。」

読み替えると、養生をせずに吹き付けて隣家の車に塗料を飛ばした場合、この約款では免責の対象として書かれているということです。「保険に入っているから隣に飛んでも大丈夫」という説明が、約款レベルでは必ずしも成り立たないわけです。逆に、ペンキ缶を落として飛散した場合はただし書きで除かれています。

この免責条項は、施主が現場で養生の状態を自分の目で見ることに意味があることを裏づけています。保険があるかどうかの話と、養生がきちんとされているかの話は、切り離せません。塗料の飛散や臭いで近隣とこじれたときの考え方は、リフォームの近隣トラブルの対処法の記事でも整理しています。

ほかに、施主の立場から関係しそうな免責として、⑳「被保険者の占有を離れ施設外にある財物に起因する損害賠償責任」、⑫地下工事に伴う地盤変化、⑬地盤軟弱化・土砂流出、⑭地下水増減、㉑じんあい、㉒騒音なども列挙されていました。じんあいと騒音が免責に並んでいるのは、高圧洗浄やケレンを伴う外壁工事では知っておきたい事実です。

もう一つの穴:「仕事の終了後」は免責=施工不良そのものは対象外

請負業者賠償責任保険の2つ目の穴は、時間的な区切りです。

三井住友海上のパンフレットの⑲には、こう書かれています。「仕事の終了(仕事の目的物の引渡しを要する場合は引渡し)または放棄の後に、仕事の結果に起因する損害賠償責任」。これが免責として掲げられています。

同じ趣旨は、東京海上日動が引き受ける前掲の「HP団体総合Web保険」の案内でも明示されていました。同資料には「仕事の終了・引渡しまたは放棄の後にその仕事の結果に起因して発生した事故」は請負業者賠償責任保険では補償対象外であり、だからこそ生産物賠償責任保険(PL保険)をセットにして「工事物件の引渡し後に、施工ミス等によって保険期間中に第三者の身体・生命を害したり財物を損壊したことについて、法律上の賠償責任を負担することにより被る損害を補償します」という構成をとる、と説明されています。

ここから2つのことが分かります。

  • 引き渡し後に発覚した施工不良の補修費そのものは、請負業者賠償責任保険の守備範囲ではない。塗膜が1年で剥がれた、防水が効いていない――こうした「仕事の結果」は、この保険が想定している事故ではありません。
  • 引き渡し後の事故に備えるには、別の保険(PL保険や瑕疵保険)が必要になる。同資料は「通常の生産物賠償責任保険では自社施工部分は補償の対象となりません」としたうえで、この制度では補償範囲を拡大していると説明しています。つまり、PL保険を付けても自社施工部分が自動的に入るとは限らないわけです。

では施工不良はどこで守られるのか。それがリフォーム瑕疵保険です。費用感やメリット・デメリットはリフォーム瑕疵保険の費用とメリットで詳しく扱っています。

【独自】建設業許可・請負業者賠償責任保険・建設工事保険・リフォーム瑕疵保険は全部別物

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい整理です。この4つは、根拠も目的も「誰が受け取るのか」も全部違います。営業担当が「許可もあるし保険も入ってます」とまとめて言うことがありますが、それは4つのうちどれなのかを分けて聞かないと意味がありません。

項目建設業許可請負業者賠償責任保険建設工事保険リフォーム瑕疵保険
これは何か行政の許可(保険ではない)損害保険(賠償責任保険)損害保険(財産保険)住宅瑕疵担保責任保険法人が引き受ける任意保険
守る対象-(営業の資格要件)工事に伴って損害を与えた「他人」の身体・財物工事の目的物そのものの物的損害施工した部分の瑕疵(欠陥)の補修費用等
いつの事故か-主に工事中(仕事終了後の結果起因は免責)工事中工事完了後(部位により1年または5年)
工事中の施主の家の損壊-管理財物の特約がなければ本体約款では免責の対象発注者も被保険者に含められる(AIG損保パンフ)対象外(瑕疵の補修が目的)
施工不良の補修費-対象外(仕事の結果に起因は免責)対象外(不測かつ突発的な事故が対象)これが本来の守備範囲
加入・取得の義務軽微な建設工事のみなら許可不要(建築一式以外は1件500万円未満)義務を定めた法令・標準約款の条項は確認できなかった民間建設工事標準請負契約約款(甲)第22条で受注者に付保を義務づけ(火災保険または建設工事保険)任意(新築の資力確保措置とは別。国交省は「2号保険」と呼称)
事業者登録許可の有効期間は5年不要不要保険法人への事業者登録が必要
業者倒産時---発注者が保険金を直接請求できる仕組みあり
出典:国土交通省「建設業の許可」、中央建設業審議会「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」第22条、三井住友海上「請負業者賠償責任保険」パンフレット、AIG損保「建設工事保険」パンフレット、国土交通省「リフォーム瑕疵保険」、ハウスプラス住宅保証「リフォーム瑕疵保険」パンフレットの記載をもとに編集部が作成

建設業許可は「保険」ではない

国土交通省「建設業の許可」によれば、建設工事は「土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事のほか、27の専門工事の計29の種類に分類」され、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は許可が不要とされています。基準は、建築一式工事なら請負代金1,500万円未満または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事、建築一式工事以外なら請負代金500万円未満です。許可の有効期間は5年で、5年ごとに更新しなければ失効します。

同ページには、賠償責任保険の加入が許可要件に含まれるという記載はありませんでした。一方で福岡県「令和2年10月1日施行の建設業法改正」のページでは、令和2年10月1日より「適切な社会保険に加入していることも新たな許可の要件として追加されるようになりました」と記載されています。つまり許可要件に入った「保険」は社会保険であって、請負業者賠償責任保険ではありません。ここは混同されがちな点です。

許可の有無を自分で調べる手順は建設業許可の調べ方でまとめています。また、一人親方に頼むときに確認すべき保険3点(労災の特別加入・請負業者賠償責任保険・リフォーム瑕疵保険)については外壁塗装を一人親方に頼むときの注意点に譲ります。この記事では、そのうち請負業者賠償責任保険の中身を深掘りする役割を担っています。

建設工事保険は「賠償」ではなく「モノ」の保険

ここも混ざりやすい。AIG損害保険「建設工事保険」パンフレット(2022年10月版・2023年1月1日以降保険始期契約用)によれば、建設工事保険は工事現場における「火災・破裂・爆発をはじめとする不測かつ突発的な事故」によって生じた物的損害を対象とし、建物等の復旧費・残存物取片づけ費用・臨時費用を支払う保険です。対象となる工事は「ビル、工場、住宅などの建物の建築工事(増築・改築・改装・修繕工事を含む)」とされています。

施主にとって大事なのは被保険者の範囲です。同パンフレットでは、契約者は「発注者または受注者(請負業者)などの工事関係者」、被保険者は「工事業者(元請)、発注者、下請業者、専門工事業者などの工事関係者」とされており、発注者(=施主)も被保険者に含められると読めます。賠償責任保険が「他人に与えた損害」を見る保険なのに対し、建設工事保険は「工事の目的物が受けた損害」を見る保険です。性質がまるで違います。

ただし、支払わない主な場合として「保険契約者、被保険者の故意もしくは重大な過失」「戦争、暴動」「地震、津波」「自然消耗や劣化による損害」が挙げられていました。劣化は対象外です。また、解体工事主体・土木工事主体・基礎工事のみ・1工事請負金額10億円超などは対象外とされています。

リフォーム瑕疵保険は「登録事業者」でないと使えない

住宅瑕疵担保責任保険協会のリフォーム瑕疵保険のページでは、加入できるのは「保険法人に予め登録した工事業者」であり、補償対象は「対象工事部分の瑕疵」とされています。国土交通省のリフォーム瑕疵保険のページも、「リフォームかし保険へ加入する事業者は保険法人へ事業者登録することが必要」と明記しています。

ここが請負業者賠償責任保険との決定的な違いです。請負業者賠償責任保険は損保の商品なので、業者が代理店を通じて契約すれば済みます。リフォーム瑕疵保険は、業者が事前に保険法人に登録していないと、あなたがお金を出すと言っても加入できません。そして保険法人による検査基準への適合判断も必要です。

保険期間は部位によって分かれます。ハウスプラス住宅保証(国土交通大臣指定住宅瑕疵担保責任保険法人 第3号)のリフォーム瑕疵保険パンフレットでは、対象改修等工事が完了した日から次のように定められています。

対象部位保険期間補償される内容(パンフレットの表現)
構造耐力上主要な部分5年間基本的な構造耐力性能を満たさないこと
雨水の浸入を防止する部分5年間防水性能を満たさないこと
上記以外の部分1年間対象改修等工事を実施した部分が社会通念上必要とされる性能を満たさないこと
出典:ハウスプラス住宅保証「リフォーム瑕疵保険」パンフレット。保険法人によって商品内容が異なる場合があります

同パンフレットでは、支払限度額は100万円・200万円・300万円・500万円・700万円・1,000万円から選び、縮小てん補割合は80%(ただし被保険者が倒産等の場合は100%)とされています。また「被保険者様となる請負事業者様が倒産等を含め相当の期間を経過してもなお瑕疵担保責任を履行しない場合は、発注者様はその損害について保険金を請求することが可能」と、発注者の直接請求が明記されています。

補償対象外として挙げられていたのは、台風・火災等の自然災害、地盤の瑕疵、対象部分以外の瑕疵、機器自体の不具合、色の選択の誤り、施工不備以外の設計瑕疵、地震による被害などです。「思っていた色と違った」は保険の対象ではない、ということです。

国の資料でも規模感が示されています。国土交通省住宅局「既存住宅状況調査、既存住宅瑕疵保険関係資料」(令和5年9月版)では、リフォーム瑕疵保険の保険金額は「100~2,000万円」、保険期間は「1~10年」、支払対象は「①修繕費用、②調査費用、③仮住居・転居費用等」、事業者倒産時等は「発注者へ100%」のてん補率とされています。保険法人や商品によって幅があることが、この国の資料からも読み取れます。

なお、業者が倒産したときに何が起こるか、保証書はどう扱われるのかはリフォーム業者が倒産したときの保証で詳しく整理しています。

施主が実際に確認する手順:標準契約書「頭書5」の欄に書いてもらう

ここまでの話を、口頭のやり取りで終わらせないための具体策があります。契約書の欄に書かせることです。

一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム工事標準契約書」のガイド(令和2年3月制定、令和4年6月・令和6年6月・令和7年9月改定)を確認したところ、契約書の頭書には次の欄が並んでいます。

  • 1 工事名称
  • 2 工事場所
  • 3 工事期間
  • 4 工事を施工しない日・時間帯
  • 5 保証保険契約の締結その他の措置に関する定めの有無
  • 6 解体工事等に係る石綿使用に関する事前調査
  • 7 請負金額
  • 8 支払方法
  • 9 その他添付書類

この第5欄に記載される保険の種類として、同ガイドには次の3つ+その他が挙げられていました。

  • 建設工事保険
  • 請負業者賠償責任保険
  • 住宅瑕疵担保履行法第19条第2号に基づくリフォーム瑕疵保険
  • その他

この記事で整理した4つのうち3つが、国の指導のもとで作られた業界標準契約書の欄に実在する選択肢として並んでいるわけです。ですから聞き方は、こうなります。

「住宅リフォーム推進協議会の標準契約書だと、頭書5に保証保険契約の欄がありますよね。そこに、御社が入っている保険の種類を書いていただけますか」

これは無理な要求ではありません。業界団体が用意した標準契約書にある欄を埋めてほしい、という依頼にすぎません。ここを渋られたら、それ自体が一つの情報です。なお、条番号については住宅リフォーム推進協議会のガイドの表記をそのまま引いています。国土交通省のページでは同じ保険が「住宅瑕疵担保責任任意保険(2号保険)」と呼ばれており、「2号」の呼称は一致していましたが、第19条という条番号自体を国土交通省のページ上で確認することはできませんでした。

契約書全体でどこを見るべきかは工事請負契約書の見方にまとめています。

保険証券の写しをもらったら見る4点

民間建設工事標準請負契約約款(甲)第22条でも、受注者は保険証券の写しを発注者に提出することとされています。リフォーム工事でも同じ発想で、写しを見せてもらうよう頼む価値があります。見るべきはこの4点です。

  • 保険期間:あなたの工事期間が丸ごと収まっているか。期間切れ・更新前という事故は実際に起こりえます。
  • 特約の欄:「管理財物損壊補償特約」「管理下財物損壊担保特約条項」など、管理財物系の特約名が書かれているか。支払限度額と免責金額(自己負担額)も。
  • 被保険者の範囲:下請業者が含まれているか。実際に足場を組む職人や塗装職人が別会社のことは珍しくありません。
  • 仕事の内容・保険の対象となる仕事:証券に書かれた「仕事」が、あなたの工事(外壁塗装、屋根葺き替え、外構など)を含んでいるか。

リフォーム瑕疵保険については、業者の登録状況を施主が自分で確認できます。住宅瑕疵担保責任保険協会の登録事業者検索では、保険商品の種類・都道府県・市区町村・事業者名・契約している保険法人で検索でき、「保険加入実績(保険証券発行数)を掲載していますので、事業者ごとの利用状況」が確認できるとされています。

同ページには、保険法人として株式会社住宅あんしん保証、住宅保証機構株式会社、ハウスプラス住宅保証株式会社、株式会社日本住宅保証検査機構(JIO)、株式会社ハウスジーメンの5社が挙げられていました。ただし「この検索サイトは保険法人へ登録を行っている事業者を検索することを目的とするもの」であり、業者の評価を示すものではない、という注意書きも添えられています。登録されている=良い業者、ではありません。

加入義務はあるのか:確認できたこと/確認できなかったこと

結論を先に書きます。請負業者賠償責任保険への加入を業者に義務づけた法令や標準約款の条項は、今回の調査では確認できませんでした。一方で、火災保険または建設工事保険については、国の標準約款に付保義務の条文が実在します。この差は大きいので、順に示します。

標準約款で義務づけられているのは火災保険・建設工事保険(第22条)

中央建設業審議会「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」(平成22年7月26日決定)を実際に確認したところ、保険の条文は第22条「損害保険」でした。全47条の約款で、第20条「施工一般の損害」、第21条「不可抗力による損害」に続く位置にあります。本文は次のとおりです。

「受注者は、工事中、工事の出来形部分及び工事現場に搬入した工事材料、建築設備の機器等に火災保険又は建設工事保険を付し、それらの証券の写しを発注者に提出する。設計図書に定められたその他の損害保険についても、同様とする。/2 受注者は、この契約の目的物又は工事材料、建築設備の機器等に前項の規定による保険以外の保険を付したときは、速やかにその旨を発注者に通知する。」

ここで名指しされているのは火災保険と建設工事保険だけです。賠償責任保険は、第1項の「設計図書に定められたその他の損害保険」か、第2項の「前項の規定による保険以外の保険」として扱われる余地はありますが、約款自体が付保を義務づけている保険には挙げられていません。

この条番号については、ネット上に21条・30条5項・31条といった異なる記載が見られます。今回は国土交通省が公開する約款PDFの現物で第22条であることを確認しました。条番号を引用するときは、必ず現物で確かめてください。

また前提として、この約款は民間建設工事用の「標準」約款であり、個々のリフォーム工事契約に自動的に適用されるものではありません。契約書で採用されていなければ、第22条の義務もその契約には働きません。

建設業許可の要件に入ったのは「社会保険」

前述のとおり、令和2年10月1日施行の建設業法改正で許可要件に加わったのは「適切な社会保険への加入」です。国土交通省「建設業の許可」のページにも、賠償責任保険の加入が許可要件であるという記載はありませんでした。

したがって、「建設業許可を持っている」ことは「請負業者賠償責任保険に入っている」ことの保証にはなりません。逆もまた然りで、保険に入っていても許可の有無は別問題です。

2社の文書で一致した点・一致を確認できなかった点

損害保険の約款は会社ごとに違います。1社の文書だけを根拠に「請負業者賠償責任保険はこうだ」と一般化するのは不正確です。そこで今回取得できた2社の文書を比べ、どこまでが共通で、どこからが確認できていないのかを明示します。

確認項目三井住友海上(請負業者賠償責任保険パンフレット)東京海上日動(賠償責任保険 重要事項説明書)判定
補償対象が「他人」の身体・財物明記あり明記あり一致
所有・使用または管理する財物の損壊は免責③に明記③に明記(ほぼ同一文言)一致
仕事の終了・放棄後の結果起因は免責⑲に明記この重要事項説明書では記載を確認できなかった一方のみ確認。ただし東京海上日動引受の団体制度(HP団体総合Web保険)の案内には同趣旨の記載あり
管理財物を補償する特約の存在管理財物損壊補償特約管理下財物損壊担保特約条項(団体制度の案内で確認)名称は異なるが同趣旨の特約が存在
養生なしの塗装に関する免責㉓に明記記載を確認できなかった三井住友海上の文書でのみ確認
出典:三井住友海上「請負業者賠償責任保険」パンフレット、東京海上日動の賠償責任保険 重要事項説明書、ハウスプラス住宅保証「HP団体総合Web保険」(引受:東京海上日動)の各記載を編集部が照合。重要事項説明書は免責の「主な」ものを挙げた要約であり、記載がないことは免責がないことを意味しません

この表の読み方には注意が必要です。重要事項説明書やパンフレットは免責の「主な」ものを挙げた要約で、約款の全文ではありません。記載がないからその免責が存在しない、とは言えません。実際の判断は、その契約に適用される約款と特約の全文、そして事故の個別事情によります。そこは保険会社・代理店に確認するほかありません。

もめたときの相談先

工事中に家を傷つけられた、保険が使えないと言われた――こうした場面では、公的な相談窓口があります。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する「住まいるダイヤル」は、国土交通大臣から指定を受けた住宅専門の相談窓口で、電話番号は03-3556-5147、受付時間は10:00~17:00(土日祝日・年末年始を除く)とされています。

さらに同センターの専門家相談では、弁護士と建築士による相談が「相談時間は1時間、原則無料です」とされています。対象には「住宅リフォーム工事の発注者」が含まれます。ただし係争中の案件や裁判関連の相談は対象外で、利用するにはまず住まいるダイヤルに電話する流れです。

よくある質問

Q. 業者が「請負業者賠償責任保険に入っています」と言えば、工事中に家を傷つけられても安心ですか

それだけでは確認が済んだとは言えません。三井住友海上・東京海上日動の2社の文書で、被保険者が所有・使用または管理する財物の損壊は免責事由として明記されていました。工事中のあなたの家は業者の管理下にあると評価される可能性があり、そうなると本体の約款では対象外の側に入ります。管理財物(管理下財物)を補償する特約が付いているかを、証券の写しで確認してください。ただし最終的に保険金が支払われるかどうかは、契約内容と事故の個別事情をもとに保険会社・代理店が判断します。

Q. 塗装が1年で剥がれました。請負業者賠償責任保険で直してもらえますか

この保険の守備範囲ではない可能性が高いです。三井住友海上のパンフレットでは「仕事の終了(仕事の目的物の引渡しを要する場合は引渡し)または放棄の後に、仕事の結果に起因する損害賠償責任」が免責として挙げられています。東京海上日動引受の「HP団体総合Web保険」の案内にも同趣旨の記載があり、だからこそ生産物賠償責任保険をセットにする構成だと説明されていました。施工不良そのものの補修は、リフォーム瑕疵保険や契約上の契約不適合責任(保証)の領域と整理するのが実態に合っています。

Q. 法律で加入が義務づけられているのではないのですか

請負業者賠償責任保険について、加入を義務づけた法令や標準約款の条項は、今回の調査では確認できませんでした。確認できたのは、中央建設業審議会「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」第22条が受注者に火災保険または建設工事保険の付保と証券写しの提出を求めている、という点までです。しかもこの約款は、契約書で採用されていなければその契約に適用されません。また令和2年10月1日施行の建設業法改正で許可要件に加わったのは「適切な社会保険への加入」であり、賠償責任保険ではありません。

Q. 隣の家の車に塗料が飛びました。業者の保険で対応できますか

隣家の車は「他人の財物」なので本体の補償対象の考え方に乗りますが、免責の確認が必要です。三井住友海上のパンフレットの㉓には「塗料の飛散を防止するための養生等の措置を取らずに行われた塗装(吹付けを含みます。)作業による塗料の飛散または拡散に起因する損害賠償責任」が免責として掲げられており、ただし書きで「容器などを落下または転倒させたことにより塗料が飛散または拡散した場合」は除かれています。養生をしていたかどうかが、約款上の分かれ目になりうるという書き方です。実際の判断は保険会社・代理店に確認してください。

Q. リフォーム瑕疵保険に入ってほしいと頼めば、どの業者でも加入できますか

できません。住宅瑕疵担保責任保険協会のページでは加入できるのは「保険法人に予め登録した工事業者」とされ、国土交通省のページも「リフォームかし保険へ加入する事業者は保険法人へ事業者登録することが必要」と明記しています。さらに保険法人による検査基準への適合判断も必要です。登録していない業者には、施主が費用を負担すると言っても加入できません。登録の有無は住宅瑕疵担保責任保険協会の登録事業者検索で、都道府県・市区町村・事業者名から確認できます。

Q. 建設工事保険があれば、工事中に家が壊れても大丈夫ですか

性質が違う保険なので、別に確認してください。AIG損保の建設工事保険パンフレットでは、対象は工事現場における「火災・破裂・爆発をはじめとする不測かつ突発的な事故」による物的損害で、被保険者には発注者も含められるとされています。つまり賠償責任を見る保険ではなく、工事の目的物が受けた損害を見る保険です。ただし「自然消耗や劣化による損害」や地震・津波は支払わない主な場合に挙げられています。リフォームでこの保険が付けられているかは、標準契約書の頭書5の欄で確認するのが確実です。

まとめ

請負業者賠償責任保険について、施主が押さえるべき点を整理します。

  • この保険は「他人」の身体・財物に対する賠償責任の保険です。三井住友海上・東京海上日動の2社の文書で、被保険者が所有・使用または管理する財物の損壊は免責事由として明記されていました。
  • 工事中のあなたの家は業者の管理下にある財物に当たりうるため、管理財物(管理下財物)の特約が付いているかが実質的な分かれ目になります。特約名は会社や団体制度ごとに異なります。
  • 外壁塗装では、三井住友海上のパンフレットに「養生等の措置を取らずに行われた塗装」の飛散は免責という項目がありました。じんあい・騒音も免責に並んでいます。
  • 仕事の終了・放棄後の結果起因は免責。施工不良そのものの補修はリフォーム瑕疵保険や契約上の保証の領域です。
  • 建設業許可・請負業者賠償責任保険・建設工事保険・リフォーム瑕疵保険は全部別物。許可要件に入ったのは社会保険で、賠償責任保険ではありません。
  • 住宅リフォーム推進協議会の標準契約書には頭書5「保証保険契約の締結その他の措置に関する定めの有無」の欄が実在し、建設工事保険・請負業者賠償責任保険・リフォーム瑕疵保険の3つが選択肢として挙げられています。「この欄に書いてください」が最も具体的な聞き方です。
  • 加入義務については、請負業者賠償責任保険を義務づけた法令・標準約款の条項は確認できませんでした。確認できたのは民間建設工事標準請負契約約款(甲)第22条が火災保険または建設工事保険の付保を求めている点までです。

この記事で引用した免責条項・特約は、取得できた特定の会社の文書に基づくものです。損害保険の内容は会社ごと、商品改定ごとに異なります。また保険金が支払われるかどうかの最終判断は、契約に適用される約款・特約の全文と事故の個別事情をもとに保険会社・代理店が行います。この記事は「約款やパンフレットにはこう定められている」という事実の整理までで、個別の結論は示していません。気になる点は、契約前に業者と代理店の双方に確認することをおすすめします。

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この記事を書いた人

リフォーム編集部のアバター リフォーム編集部 株式会社スゴヨク|編集部

「リフォーム」編集部です。運営は株式会社スゴヨク(福岡市中央区/Webサイト制作・Webマーケティング)。外壁塗装・屋根工事・外構リフォームの費用や業者選びを、国土交通省・国民生活センター・住宅リフォーム推進協議会などの一次情報にあたって解説しています。金額や制度には必ず出典を明記し、確認できなかったことは「未確認」と書く方針です。当サイトは施工を行っておらず、特定の業者への送客を目的としない立場で編集しています。

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